更年期の「ホルモン補充療法」ってどう進めるの?関節痛の場合は…【医師に聞く】(後編)

「そういえば手の指がこわばる」「関節が痛い」など、手指に違和感を持っていませんか? 実はこの痛み、40代50代の更年期世代に頻発することで、治療が可能なのです。

 

前編記事『更年期の関節の痛みに「ホルモン補充療法」を行う理由は?』に続き、後編です。

小田急線・新百合ヶ丘駅前のリウマチ膠原病内科クリニック、光中央診療所 副院長 上原真琴先生にお話しを伺いました。

 

ホルモン補充療法ははどのように進むのでしょうか?

当院では、更年期関節痛と診断された患者さんで積極的な治療を望む人は、ほぼ100%HRTに移行します。併せて、体調不良や自律神経の乱れに漢方を使用したり、レーザー治療を併用することもあります。

 

治療を始める人の多くは50歳くらいの女性で、手のこわばり、関節痛を主訴としてこられ、SMI更年期指数で50点以上というケースが多い。痛みだけで困ってる人もいれば、痛いうえにホットフラッシュも体調不良もある人もいます。すでに閉経している人もいますし、閉経から1年たってない人もいます。採血上女性ホルモンの数値があてはまれば始めます。

 

初診時にはリウマチの鑑別を行わないとならないため、血液検査とレントゲン、必要に応じて関節エコーをとります。リウマチ膠原病ではなく更年期関節痛と診断できた場合、採血の結果が出る1週間後に結果を説明してHRTの薬を処方します。

 

使用するのは基本的に「経皮剤」。パッチやジェルなど皮膚に当てるもののほうが血中濃度も安定して副作用も少ないため、私はパッチかジェルを使用しています。

 

「メノエイドコンビパッチ」はエストロゲンとプロゲステロンが合剤になっていて利便性が高いのですが、稀にかぶれる人がいるので、その場合は「エストロジェル」を使います。「エストロジェル」はエストロゲン単剤のため、プロゲステロン製剤である「デュファストン」という経口剤を併用します。

 

どのくらいの期間ホルモン補充療法を続けるのでしょう?

HRTを行う期間は5年が目安と言われます。5年以上続けると乳がんリスクが上がるからですが、5年続ける必要はなく、本人の調子がよければいつでもやめることができます。

 

早ければ使用開始1か月で劇的な効果を実感し、じんわり効くタイプだと3か月程かけてじわじわと効いてきます。従って、効果の有無を見るため3か月は続けましょう、また効果があったからといって3か月でやめてしまうとぶり返すため1年は続けたほうがいいですとお伝えします。実際に、よほど副作用で困らない限り、1年以上続ける人がほとんどです。

 

当院でこの治療をスタートしてからまだ3年のため、「みなさんが何年で治療をやめていくか」わかっていませんが、調子がよければ続けていく人が多いのではと思います。HRTには脂質異常症の改善、骨粗しょう症の予防など痛み対策以外のメリットもあるため、ずっと続けたいという場合は続けることもできます。

 

「更年期の関節痛にぜひHRTを検討してください」

HRTを開始し、1か月後にきていただくと、「すごくよくなりました」という人と、「こわばりはよくなりましたがまだちょっと痛いです」という人が出てきます。一般にはじわじわとよくなっていき、3か月後になると「治療前より調子が良い」という声が増えます。

 

これは、毎回診察の前にSMI(更年期指数)をつけていただいているのですが、自分でそれをチェックすることで「こんなによくなっていたんだ」と気づく人が多いためだと考えられます。従って、更年期世代の女性にとって定期的にSMIを記録していくことは重要なのかもしれません。

 

繰り返しますが、まだ更年期関節痛に対する医療的アプローチの方針が決まっておらず、これだけ奏功するHRTを受けられない人が多いことが非常に残念です。

 

更年期世代で、関節の痛みで困ってる人はぜひいちどご来院ください。当院は婦人科ではないため、検診は婦人科に行っていただく必要がありますが、痛みが主訴でなくても受診いただけます。

 

 

お話/光中央診療所 副院長 ・ 湘南リウマチ膠原病内科

上原 真琴先生

 

日本大学医学部卒業。 横浜市立大学附属病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、茅ヶ崎市立病院リウマチ膠原病内科を経て2019年より現職。

https://www.jrlaser-hikarichuo.com/

 

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