「お金にとってのリスクとは何か」元ファンドマネジャー父が娘に教える「およそ負けないで済むリスク回避」とは
大学生のアキさん、高校生のルミさん、2人の娘を持つ個人投資家・文筆家の澤田信之さん。「予測を業としてきた自分にも、彼女たちがこれからどのような時代を生きていくのかまったく判断がつかない」と語る澤田さんが、「生きる視点」を子どもたちに伝えるメッセージ書評です。
【父から娘へ書評#4『最新リスク管理マニュアル』松丸俊彦】前編
失うと取り返せない物とは何か? 一見難しいテーマだけど
アキ、ルミ、暑い日が続くね。外出するときは熱中症に要注意、直射日光をなるべく避けて、水分補給をしてください。僕も日傘を買ったよ。数年前には男性の日傘は考えられなかったけど、今は結構種類も多くて選択肢があります。
2人に今回紹介するのは、元警視庁公安部捜査官 松丸俊彦さんの『最新 リスク管理マニュアル』(リンク)です。松丸さんは警視庁に20年以上勤務し、主に公安外事課にいらした方。ですので、書籍の内容は対外諜報のような分野もカバーしています。
諜報やら外事やらというと若い女性には関係なさそうな気もしますが、目次を見ると、
高額バイト募集から犯罪に巻き込まれる
有名人をおとり広告に使う投資詐欺
日本はスパイ天国
あなたもヘイトクライムのターゲット
などなど、2人が日々の暮らしでうっかり出会ってしまう可能性もあるような事柄も説明されています。最新版というタイトルだけあって、本当につい最近の事件が豊富に取り上げられています。こんな事件が起きてたんだ、と驚くような内容も中には混ざっています。
たとえば、投資詐欺。有名人がAI技術によるディープフェイクで声までコピーされ、あたかもその投資を勧めているかのようにだます話が書かれています。怖いのは、そこから続く個人情報流出の話です。いちどだまされた人は何度もだまされるかもしれない。
僕たちはもう、個人情報をネットに預けずには生きていけないから、それだけさまざまなリスクにさらされています。先般KADOKAWAのランサムウェアの件がありましたが、あれはどこの会社だから起きたという話ではなく、どこでも起き得ます。
「さらされているのだ」ということを理解していれば注意できることがたくさんありますから、こういうことは機会をみてひととおり眺めて、定期的に知識をアップデートしておいてほしいです。興味ある事項の拾い読みなら、2時間もあればインプットできると思います。
こうした内容はネットではなく書籍から、しかも常に最新の書籍から情報を得てください。虚偽の可能性が高いインフルエンサーのネット情報ではなく、第三者が精査した、裏打ちのある新しい情報であることがとても重要だからです。ネットはどのような最新書籍があるかを検索する入口に活用してください。
資産運用の世界では「上がっても下がっても」どっちもリスクです
さて、僕はお金の運用が専門なので、この本に絡めてお金のリスクの話をするね。資産運用の世界では、リスクとは価格変動のことです。そして、それは値段が下がることだけを意味しません。
一般に値段が下がることだけをリスクと考えるのは人間が「損」を嫌うからで、銀行の預金とそれ以外とか、運用するかしないかという単純な二元論に基づいています。
しかし実際には、2人がこれから加入する国民年金や保険は、2人の代わりに国や会社が資産運用し、日本株や債券、外国株や外国債に投資しています。運用の失敗は税金の投入や予定利率の低下で間接的な負担になります。また、マンションを購入するのも投資に近い性質のものです。
つまり、2人はすでに、知らないうちに、資産運用をしているわけです。最近話題になった老後2000万円問題というのは、お金に注意を払っている人たちから見れば当たり前の話を国がついに認めた、っていう現象に過ぎません。皆さん長生きできるようになりましたね、だけど年金だけでは老後生活できません、自分でも運用してください、新NISAも作りますので、というのが日本人の資産運用の現状です。
つづき>>>リスクの「ありかた」は人によって違う。では、自分のリスクってどうすれば確認できるの?
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