今回のような相場の下げはむしろ「お買い物チャンス」。長期AAがあればいつでも心が安らかである理由

市場の乱高下が続きます。もう止まることはないと感じられていた円安が急遽反転し、株価も上下を繰り返すため、「新NISAを慌てて解約した」「だまされた」という声もネットで散見される状態に。

 

「こういう局面でこそ長期的な視野がモノを言います」と個人投資家の澤田さんは断言します。その理由って?

 

前編記事『その新NISA「解約しないで!」ファンドマネジャーがそっと指摘する「いま間違えがちな根本的な部分」って?』に続く後編です。

【元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」】#9後編

 

相場乱高下時にとるべき行動も、長期AAがあればすべて根拠を持てる

今回の乱高下で私がとった戦略は記事の最後でご説明します。

 

私は20代の新卒就職から40代前半までずっと仕事に忙殺されていたため、40代半ばで迎えた子どもの中学受験は育児に参加するラストチャンスでした。キャッシュフロー表を修正してみると何とかなりそうでしたので、ここでサラリーマン生活を終えてそのまま個人投資家になりました。時間的な余裕をすべて子どもの勉強のサポートに充てて育児にフルコミット、それから10年で子どもが手を離れて今に至ります。

 

個人投資家になって以降は、シリーズの#5で記載した【グローバル三分法】に基づいて運用しています(こちらから)。

 

株1/3(日本株約10%、外国株約20%)

債券等1/3(社債10%、外債10%、預金等20%)

不動産1/3(居住用不動産20%、REIT10%)

 

これがここ5年くらいのAAです。以前に比べて外貨建て資産の比率を増やし、資産の増加で居住用不動産の比率が下がりました。メインが資金運用なのでちょっとした工夫をしています。以下でご紹介したいと思います。

 

■日本株

自分の機関投資家キャリアの中では意外にも担当したことのない資産クラスだったので、個人投資家として楽しみを持って最も注力しています。自国ですから企業や文化についての知識も一定はあるので、知的好奇心を満たしてもらえます。現在のところ、個別銘柄投資30銘柄程度と、投資信託を保有しています。

 

投資手法としては、10年で2倍になる銘柄を探して長期保有することにしています。2014年の日経平均は15000円程度、今は40000円ですから、この10年だったら日経平均で指数だけ保有するパッシブ運用で十分だったな、と思ったりもします。

 

ネット証券が手数料を引き下げて、私が利用しているSBI証券ではほぼ日本株の売買にはコストがかからなくなりました。長期で投資をしているとキャピタルゲイン課税もばかにならないので、流動性も考えて投資比率の調整には日経平均やTOPIXの先物を利用することが多いです。

 

■債券(預金)

債券は日本企業の発行した社債を中心にしています。新規発行社債では倒産リスクに注意を払い、過度に利回りを高くするための信用リスクを取らないようにしています。

 

AAとしては金利に対する価格感応度(デュレーション)を管理することが必要なのですが、満期まで5年以内の社債に限定することで、預金より少しでも利回りが高くなればいいかなという観点で銘柄選択しています。個人投資家は新発社債を購入するのが常道ですので、それ用に日系大手証券複数に口座を持っています。

 

クラウドレンディングにも一部投資をして、この資産クラスでの超過リターンを目指していますが、過去5年くらいで見るとデフォルトや詐欺の発生もあり、リスクに応じたリターンは得られていないのが現状です、泣。

 

■外国株式

以前は米国のハイテク株を中心に個別銘柄投資もしていましたが、一部の銘柄に株価上昇が集中しているように思われるため、現在はNY証券取引所に上場しているS&P500連動投信とオルカンから日本を除いたような投資信託を保有しています。外貨資産を持って外国為替で同じ通貨を売る為替ヘッジは行いません。内外金利差がなくなるからです。

 

■外国債券(外貨預金)

外国債券は、日系の発行体のものを中心に、短中期社債のバイアンドホールドにしています。日本の債券も同様ですが、個人投資家には小ロットで債券を売買するインフラがありませんし、あるとしても非常に割高なので、償還まで保有することを前提にしています。

 

コロナ明けくらいまでは金利に魅力を感じなかったので外貨預金代わりにFXの円売りで為替エクスポージャーを取っていました。欧米の金融引き締めで長期金利が歴史的に見て投資対象として見ていい利回り水準にまで上昇したので、2022年にまとめて社債ポートフォリオを構築し積み上げています。

 

外貨預金は、海外送金する機会もままあるため、利便性とコスト、そして預金金利を勘案してソニー銀行を選んでいます。ランクが上がると海外送金手数料が無料になるのが気に入っています。

 

■不動産

居住用不動産は売却する予定がないので時価評価していません。行政から送られてくる固定資産税評価額を用いています。住所と階数を入れるとおよその評価額が分かるサービス(SRE不動産の推定価格閲覧機能)を利用しています。

 

REITはおよそ50%の借り入れをして不動産を保有しているので、リスク量を2倍にしてAAを計算しています。総合型REITと個別資産型REITがあって、主に居住用不動産REITを中心に、アパート投資代わりに保有しています。

 

この7月に私がとった「長期AAに基づくリバランス」、最後の調整内容を公開

以下はおおむねいちどお伝えした内容ですが、ただ円相場をかんがみてドルの売りだけ買い戻しているので、7月31日現在の内容をお伝えします。

 

1・比率が上昇した外国株のリバランス

アセットアロケーションが1%以上ずれたらリバランスすることにしています。保有するETFや投信を売却すると利益が大きく出るため、税負担を考慮して米国株の先物を売り建てしました。また、半導体関連株の割高感が強いと考えて、フィラデルフィア半導体指数に逆連動するETFを購入しました。

 

2・償還を迎えたドル建て社債の扱い

ドル円市場が160円を超えたところで為替介入があり、前述のとおり介入が効きやすいポリシーミックスであると判断して、158円程度でFXでドル売りをしました。米国のイールドカーブ(利回り曲線)は短期から中期にかけて逆イールドで、3~5年の社債利回りは短期金利を下回っています。米ドルはドル預金にして、子どもの海外学費に充てる予定です。

 

というのが7月末の大幅下げが始まる前の状況でしたが、以降はその後の変更点です。今後さらに下がるようでしたら、日本株のロングショートの内、日経平均先物の売りだけを買い戻して、アンダーになっている日本株の比率を中立に戻します。米国ダウ先物の売りとSoxs は持続します。ドル円は介入が効くと考えてドル売りをしましたが、内外金利差が大きい状況は続くため、介入1回分の目標である(と考えられる)10円幅で買い戻ししました。

 

3・JREITの買い増し

他の資産に比べてパフォーマンスが劣後したJREITを追加購入しました。社員のオフィス回帰や新卒社員の採用に向けたオフィスのアップグレードは続くと思いますが、コロナ下で(ホワイトカラーの心の中に)定着した在宅ワークは不可逆だと考えていることから、オフィスリートを除いた他のセクター(住宅、物流、商業施設)のリートに追加投資しました。

 

4・リバランスではないけれど

外国株のリバランスで触れましたが、半導体関連株に行き過ぎ感があると考えておりますので、同銘柄群の影響度合いが強い日経平均先物を売り建てして、投資家から見放されている小型株(東証グロース250採用銘柄)を10銘柄ほど購入するロングショート戦略を組み入れました。

 

 

以上、長くお付き合いいただき、ありがとうございました。今回分にはテクニカルな内容もありますが、ご自分で運用されている方の参考にしていただければと思います。それでは皆さま、ドキドキのない資産運用を祈念しています。

 

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