「私が貯めた1000万、夫になんて分けたくない!」42歳の妻が、浪費家の夫と離婚。損をしないために知っておきたいこと【共働き夫婦の財産分与】
結婚している間に築いた財産は、夫名義でも夫のもの、妻名義でも妻のものではなく、夫婦の共有…それが法律(民法762条)のルールです。しかも、夫婦が離婚するとき、相手の財産を「渡してください!」と言うことが認められています(民法768条)。そう聞いてもピンとこないでしょうが、それもそのはず。
法務省が公表している「財産分与を中心とした離婚に関する実態についての調査・分析業務報告書(令和3年)」によると、財産を請求しなかった理由として一番多いのは「制度を知らなかった(14%)」です。
なぜでしょうか? この条文はもともと「妻が専業主婦」という前提で作られているからです。専業主婦には収入がないため、結婚生活を続けていれば良いですが、いざ夫婦関係がおかしくなったら大変です。もし、「夫名義の財産は夫のもの」という法律だとしたら、妻は離婚するとき、無一文で放り出され、最悪の場合、路頭に迷ってしまうでしょう。だからこそ、夫の財産の半分を請求することができます。
なぜなら、妻は夫婦の財産のうち、半分の権利を持っているからです。妻は家庭内で家事や育児を一手に引き受け、そのおかげで夫は家庭外で仕事を続け、安定した収入を得る…いわゆる内助の功がその理由です。これを離婚の財産分与といいます。
前述の統計によると離婚する際、夫婦の財産を2分の1ずつ分け合ったケースは全体の15%、2分の1以外の割合で分け合ったケースも15%。もっとも多かったのは「割合を意識せず、双方が必要な財産を取り合った(24%)」です。
時代は昭和から平成、そして令和と移り変わっています。令和の時代において専業主婦(458世帯)は共働き(1,177世帯)の半分しかいないので「男は外で働き、妻は家を守るべき」なんて時代遅れです。さらに働く女性は10年間で10%以上(340万人)も増加し、現役世代(25~44歳)の就業率はほぼ同数(女性78% 男性83%)です。(令和4年、男女共同参画白書)
このように男女間の「性差」がなくなるジェンダーレスが進んでいる昨今で、「夫の財産の半分は妻のもの」という考えそのものが時代錯誤なのです。しかし、法律の条文は相変わらず、現代の事情を反映していません。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、今回の相談者・福原心菜さん(42歳。結婚6年目。仮名)は「財産分与」で悩む女性の一人。なぜなら、夫はより8歳も年上で稼ぎが多く、節約して貯金を作ったからです。
法律の通りに「財産分与」をすると、妻の貯金のうち、夫は半分の権利を持っているので、逆に夫へ貯金を渡さなければなりません。キャリアの女性は離婚するとき、「もらう側」から「渡す側」になる可能性があるのです。節約家の妻が損をし、浪費家の夫が得をするのはいかがものでしょうか。
前述の統計によると離婚時、財産分与をめぐって夫婦間で争いになった夫婦は全体の11%。一方、争いにならずに離婚した夫婦は88%です。頑張って働き、努力して貯めた貯金を失わずに離婚するには、どうしたら良いのでしょうか?
なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢や金銭感覚の違い、離婚の経緯、財産分与の条件などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。
☆今回の相談者
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:福原英一(34歳)→会社員(年収500万円。貯金不明)
妻:福原心菜(42歳)→会社員(年収600万円。貯金1,100万円)
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 ♯3】前編
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