「私、やればできるんだ」一度は挫折したけれど、50歳を過ぎてから人生の宝物を見つけた。新しいコミュニティで仲間と生きがいに出会うまで

2025.01.12 LIFE

絵を描くのが大好きだった私、漫画家デビューしたはいいけれど

大学3年のとき、21歳で少女漫画家としてデビューしました。子どものころから絵を描くのが好きで、人よりも早く自分のやりたいことを職業にして、夢を叶えた私。だけど単発の読み切りを数本描いたくらいで、その後はパッとしなくて、連載を持つには至りませんでした。漫画1本で食べていくのは大変で、今は学習雑誌や企業向けの冊子にイラストを描いたり、漫画家のアシスタントをしたりしています。古代史をテーマにした歴史漫画や少女漫画など、関わる漫画のジャンルもさまざまです。

 

ここ数年、AIの進化によって絵も生成できるようになっています。私は「漫画の描き方が変わるんじゃないか」「仕事がなくなるんじゃないか」と漠然とした不安を持っていました。そんなとき、YouTubeでの配信を行っている某メディアのチャンネル内で、「生成AIをみんなで勉強しよう」というオンラインコミュニティの募集があり、参加してみたのです。

 

コミュニティは参加料無料で、週1回、生成AIを初歩から学ぶオンライン講座が開催されました。主な参加者は20〜30代の若い人が中心。しかも企業でDXを推進しているようなエリートばかり……。私みたいなのが参加していいんだろうかと思って、最初はコソコソとしていました (笑)。

「漫画の作画もAIに取って代わられる」みたいな話がまことしやかにささやかれ始めていたころだったので、参加前はちょっと危機感を感じていたんです。でも実際に学んでみると「今のAI技術では、まだ、こういう絵は描けないんだな」と分かってちょっと安心もしました。

 

勇気を振り絞ってオフ会に参加、新たな扉が開かれた日

そのうち「オフ会をやろうよ」という話になり、勉強会と忘年会に参加することにしました。参加者の多くは40代の男性で、50代の女性となるとかなりの少数。私はもともと内気な性格なので、オフ会に参加するだけでもかなりの勇気が必要でした。

私は人の顔を覚えるのが苦手なので、オンライン講座のときに、誰がどんな発言をしたのか記録しようとみんなの似顔絵を描いていたんです。それを2次会で見せたら「え? とりはらさん、こんな素敵な絵を描けるんだ〜!」って喜んでもらって。似顔絵をきっかけに、みんなに名前を覚えてもらえて、すっかり溶け込むことができました。ずっとZoom越しだった人と実際に会って話せたのも嬉しかったです。

 

その忘年会で、漫画が好きな人たちと意気投合して盛り上がり、コミュニティ内に「漫画のスレッドを作ろう」という話になりました。このとき、生成AIコミュニティはすでに企画主催していた会社の運営から離れ、「IKIGAI lab.(イキガイラボ)」という別名称のコミュニティとして、100人くらいで活動していました。

 

あるとき、コミュニティの元となった某メディアで、エキスパートが選ぶ漫画を紹介する「大人が感動する漫画100」という企画が好評だったと、メンバーがコミュニティ内チャットで情報を流してくれました。それを受けて「IKIGAI lab.」からも新しく企画を出したらメディアに載せてもらえるというので、「やろう、やろう!」と盛り上がりました。

 

話し合いをしているうちに「どうせやるなら、オリジナルの雑誌を作りたい」という意見が挙がり、「じゃあ、コミュニティの活動やイベントを載せよう」「インタビューもやってみよう」と発想がどんどん広がっていきました。制作の核となったメンバーは、言い出しっぺの43歳の薬剤師の男性、育休中で漫画も描いている32歳の男性、このコミュニティのリーダーである32歳の男性、そして私の4人です。「雑誌」といっても印刷をするわけではなく、コミュニティ内で閲覧するWEB上の雑誌です。

 

「過去に挫折したこと」も仲間がいたから乗り越えられた

「コミュニティの雑誌を作ろう」と盛り上がったはいいものの、制作過程で使うAdobeのソフトは難しくて「いつか勉強しなくちゃ」と思いながらも、きちんと使ったことはありませんでした。しかし「この機会に、InDesign(インデザイン)を勉強してみようかな」と考えました。

※InDesign……Adobeが開発・提供しているソフトウェアのひとつ。おもに冊子やカタログなどの複数ページの印刷物のレイアウトやデザインを行う

 

コミュニティ内のクリエイターさんからは「Illustrator(イラストレーター)を使えないと、インデザインは無理かもよ」なんて脅されましたが、YouTubeで初心者向けの動画を見たり、雑誌のデザインを真似たりしながらなんとか使い方を覚えました。イラスト関係は言い出しっぺの薬剤師さんが担当し、ロゴも彼がAIで画像生成して作ってくれたので、私はページデザインだけに集中できたのが本当にありがたかったです。

 

特集記事としてコミュニティのメンバー10人ほどに、「今のあなたの人生に影響を与えたおすすめの漫画について、700〜2000字程度で書いてください」とお願いしたところ、みんな、きちんと書いてくれて……。今更、「デザインができない」なんて言えない状況になりました(笑)。引くに引けないって、こういうことを言うんですね。

 

私はいま、月に2回は漫画家さんの家に3泊くらい泊まり込みでアシスタントの仕事をしに行っています。在宅でのアシスタント業務は月に1、2件。大体1つの仕事につき4〜5日かけて仕上げるイメージです。それから、整骨院の受付のアルバイトを週2回やっています。だから、コミュニティのWEB雑誌を制作できるのは、仕事がないオフの日か、仕事のある日は夜中しかありません。仕事が終わってから作業に取り組み始めると、気がつけば朝の3時、4時。それでもコミュニティのメンバー150人が見てくれるんだと思ったら、「頑張ろう」という気持ちになれました。

 

本記事では、オンラインコミュニティへの参加をきっかけに、コミュニティの雑誌を作ることになったとりはらさんの体験をお届けしました。続く記事では、とりはらさんが仲間と交流するなかで感じた心境の変化についてお届けします。

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