
「無知だとお金がかかるから」自分と息子を守るため、反抗期まっただ中でもやっているコト
身近に困り事や愚痴を言い合える場所があったら
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―――もし、困難な時にあると助かるものやサービスがあれば、教えていただけますか?
同じような状況の母親が集まって気軽に愚痴を言い合える場所が身近にあるといいですね。どんな形でもいいので、「自分だけじゃないんだ」と思える場があると心強いです。発達障害のことを話すのは言いづらく、身近な場所では同じような経験を持つ人に出会えません。話しても理解してもらえないだろうなと思うと言い出せないですよね。
あと、発達障害のお子さんを育てている方の話を聞けると励まされます。パラリンピックや『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』などのテレビ番組をみると、がんばろうと思えます。
それから、未払いの養育費を受け取る権利があることを知らない人が多いので、必要な人に情報が届く仕組みがあれば。私はこれまでほとんど養育費をもらえていませんでした。息子が私立高校に進学したことから経済的な負担が増え、未払い分の養育費を受け取れる権利があると知り、弁護士に相談しました。認知調停と養育費の調停を経て、未払い分の養育費を受け取れることになりました。無知はお金がかかります…。最初に相談した弁護士には「もらえない」と言われましたが、2人目の弁護士は「もらえる」と言ってくれて。弁護士によって考え方が違うので、リフォームの相見積もりのように、無料相談に何ヶ所か行くことをおすすめします。私はこれでいい弁護士さんに出会えました。
◆おわりに
お話を聞いて、Nさん自身がすばらしいロールモデルだと感じました。現在、子育てに悩みを抱えている方々にとっても「いつかはおわるのか…」と救われるかもしれません。当事者の声を反映し、どこでも一人ひとりに合った学びの場を選べる制度やしくみが整うことを願います。世界でDEI*(多様性・公平性・包括性)に対する反発が続く中、学校だけでなく、社会全体が多様な人々や価値観を受け入れる環境であることが重要と感じます。その実現に向けて、自分や他者を大切にし、よい関係を築く基盤となる包括的性教育も重要な役割を担うと考えています。
*Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」の頭文字からなる略称
【参考資料】
- 信濃毎日新聞社編集局 著.ルポ「ふつう」という檻 発達障害から見える日本の実像.岩波書店.2024
- 全日本特別支援教育研究連盟.日本発達障害連盟 編.発達障害白書2025年版.2024
- 「多様な子どもたちが共に学ぶ「インクルーシブ教育」。いま、子どもたちになぜ必要か?」(日本財団ジャーナル, 2024年1月25日付) https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2024/98705/education