軽い気持ちで観た不朽の名作に問題の描写の数々が!?「アメリカが再びトランプを選んだ」理由にも実はつながっていて

2025.02.08 LIFE

アンヌ遙香です。ふとしたことがきっかけで『風と共に去りぬ』を久しぶりに観てみたら…作品について語る連載の【後編】です。

◀この記事の【前編】「元TBSアラフォーアナが父に『風と共に去りぬ』を好きだった理由を尋ねてみたら、話は思わぬ方向へ」◀◀◀こちらから◀◀◀

 

南北戦争を背景に描かれる問題の描写の数々

本作品は南北戦争が舞台。当時、黒人を奴隷として扱っていた南部の人間と、奴隷解放を大義として団結したリンカーン率いる北部の、アメリカ国民同士の戦争です。

 

作品中には、スカーレットオハラをはじめ南部の白人一家がまるで黒人奴隷たちを家族の一員のように「丁重に」扱い、また奴隷側も、街で偶然昔お世話になったスカーレットに再会すれば「やあ!お嬢様!」と朗らかに駆け寄るような場面があります。「奴隷」と言いながらも親しさを感じさせる表現が目立ちます。

 

父曰く、「クラークゲーブルズのファンだから映画版はよく観ていたけど、自分は原作本を読んでみた。途中で作者であるマーガレットミッチェルが、奴隷性をまるで肯定するかのような書き方をしていたチャプターがあり、そこで読むのをやめてしまった」のだそう。

 

アメリカ南部出身のマーガレットミッチェル。私たち白人は黒人奴隷たちとは仲良くやっていたのよ、と言いたげであったと。「丁重に」扱っていたか否かは問題ではなく、人が人を支配するという構造そのものが言語道断であるわけですが。

 

確かに問題視されていた本作品

近年、ブラックライブズマター運動、要するに黒人差別撤廃運動が盛り上がりを見せる中で、確かに本作品は槍玉に挙げられることがありました。

 

黒人の人々の間違ったステレオタイプともいえる表現や、奴隷性擁護と取れるような描写の数々が問題視され、有料配信リストから一時期削除されたということがアメリカであったのは事実です。

 

先日私が配信で鑑賞した際には、冒頭字幕で以下のようなメッセージが映し出されていました。

——この映画の中では、特定の人種に関して非常に差別的な表現や誤解を与えるような表現があるけれども、当時の時代性を鑑みてそのまま放映する。ただこの差別や偏見と言う問題は、現在でも存在しているものであり、決して許されるものではない。公平かつ、公正な差別のない社会に向けて私たちは歴史を受け入れ理解する必要がある。本作においては、制作当時の背景を尊重し、そのまま放映する——

 

トランプ大統領が支持される背景にも実は…

この作品が歴史的名作であることは変わらないですが、南北戦争前後の南部独特の文化を懐かしむ層、というのは、実はアメリカにまだまだ一定数いるのは事実です。例えば、トランプ大統領の一部熱狂的な支持者たちなどはそれに当たります。

 

本作品の中でも出てくる南部連合の旗。これは現在では、奴隷制度容認や黒人への非道な差別を容認する象徴であるということで、アメリカ各所で禁止され始めています。しかし一方で、「この旗は南部独特の文化そのものへのノスタルジーである」とトランプ氏が使用を擁護した事もありました。

 

今回のアメリカ大統領選では、黒人やヒスパニック系といった所謂有色人種の一部で、民主党政権に愛想をつかした形でトランプ支持に移行した人々も。トランプ政権下で人種の融和が進むのか?と思いきや、トランプ氏は「不法滞在者の大量国外追放」「米国史上最大の国外送還作戦」「2000万人を強制送還」といったフレーズを繰り返しているわけで……。

 

近年、「いわゆる白人たちはもうアメリカのマジョリティーではなくなりつつある」という現状があります。むしろ白人がマイノリティになりかねない世の中になり始めていると伝えるメディアまで。

どんな人種がマジョリティになっていくかはさておき、アメリカはそもそも世界中から移民が集まって出来た大国であったはず。「アメリカンドリーム」なんて言葉はもう通用しないのでしょうが、自分たち以外のものを排除しようという動きは危惧すべきでしょう。

 

さすがに行き過ぎでは!?アメリカの未来はいったい?

それのみならず、トランプ氏からはデンマークに対し、「グリーンランドを買わせろ!買わせないなら高い関税をかける!!」なんて、いつの時代の話かと思わせるような領土拡張発言まで飛び出しています。

 

これにはさすがに行き過ぎたアメリカ中心主義を感じてしまいます。「移民を排除し、領土を広げれば自分たちの生活はもっと良くなるはずだ」という思想のもと突っ走っているようで、アメリカの未来はどうなるのだろうと不安さえ感じます。

 

『風と共に去りぬ』は戦前の名作中の名作でありつつも、現在に至るまで孕んでいるそういった「差別・人権」問題については眼差しを厳しくして観ていくべきです。

 

とはいえ、生命力あふれるスカーレットオハラが、焼け野原と化した故郷の土地で朝焼けを浴びながら「神よ誓います!私は二度と飢えに泣きません!」と力強く、神に「お願い」ではなく、高らかに「宣言」するシーンは胸を打つものがあり、これこそが名作のもつ力だと深く頷くのも事実。

 

ビビアンリーの、片眉をキュッとあげる魅惑の眼差しにうっとりするのもまた事実。みなが観るべき名画であることはずっと変わりません。さまざまな意味合いで濃厚な文化的体験が得られる作品と言えるでしょう。ぜひご覧くださいね。

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