特別支援校ではなく敢えて「私立小学校」を選んた。入学からわずか1週間で自閉スペクトラム症の息子に起きた「劇的変化」とは

「この学校でよかった」と心から思える理由

さらに、卒業後の進路サポートの手厚さも、保護者にとっては大きな安心材料です。

 

「卒業後の就職や進学って、やっぱり心配です。でもこの学校には、先輩たちが開いてくれた企業とのつながりがあり、その子の障害の程度や特性や興味に合わせた就労支援をしてくれます。調理やものづくりなど、実際の職場に結びつくような教育も充実していて……。やっと私たちも、学校に『育てる』ことをお任せして、『地域社会で暮らす』未来に目を向けられるようになりました」。

 

最近では、公立校でも進路指導が充実しているという話も聞くそうですが、「うちの子の場合、今の学校がベストだった」と回想します。そして今では、夫の真太さんも「あの時、検査をして早く手帳がもらえよかったね」と言っているそう。

 

「『人間万事塞翁が馬』って本当だね、と夫も言っていて。あの頃は落ち込んだけど、今は『結果オーライ』だねって」。

 

私立小学校に入ったメリットとデメリット

「今の学校に入学したメリットは、充実したカリキュラムや卒業後の就職率の高さ。デメリットがあるとすれば、我が家の場合は学校まで電車で40分と微妙に遠いので、低学年のうちは送迎が必要だったことです。夫婦ともに運転免許があり在宅勤務可な職種だから可能でしたが、そうでなければスクールバス圏内に引っ越しが必要だったと思います。また、費用の面でも公立より負担は大きいので、共働きを続けたいと思っています。学校の校風も独特なので、ご家庭によって『あう・あわない』は確実にあると思います」。

 

もし5歳で検査を受けていなければ、数年後にはテストの点数をあげる知恵がついてIQが上がり「グレーゾーン」とされて手帳がもらえず、今の学校の障害児枠に応募できなかったかもしれないと、広子さんは振り返ります。

 

「グレーゾーンといっても人ぞれぞれですが、うちの子は“凸凹”を自分でうまく隠せるタイプではなくて、隠せたとしても心身にストレスがかかると思うんです……。ストレスが強いと、不良行為など、行動に歪みも出てくるかもしれませんし。もし診断が遅れて、療育がまったく受けられなかったら、どうなっていたか想像がつきません。だからこそ、私はあの時、あのタイミングで診断名がついて、療育手帳がもらえて、本当に良かったと思っているんです」。

 

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※本作は取材に基づいたストーリーですが、プライバシーの観点から、個人が特定されないよう随時事実内容に脚色を加えています。

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