「もう一度、触れたい」スピリチュアル妻と科学派夫が、お互いの「信じるもの」を交換してたどり着いた“ふたりの新ルール”
「子どもが欲しい」という願いから始まった妊活が、いつしか“心と身体の距離”を生む原因に──。
排卵日セックス、浄化の儀式、ボイドタイム…妻が信じる“目に見えないもの”と、夫が求める“触れ合い”のあいだには、言葉では埋めきれないギャップが横たわっていました。
前編「妊活がうまくいかず、スピリチュアルに走った妻。「あなたの欲が強すぎて波動が乱れる」と、触れることさえ拒まれた夫の絶望」に続く後編です。
※本人が特定されないよう設定を変えてあります
※写真はイメージです
僕が下した選択
悩み抜いた末、タクミさんがある決断を下したのは、連休中のこと。奥さまが“宇宙瞑想リトリート”と称して、沖縄の離島へ五日間のひとり旅に出かけたのです。
残されたタクミさんは、家中にあるクリスタルをすべて集め、ひとつひとつ価格をメモに書き出していきました。合計金額は、50万円を超えていたそうです。
「数字を突きつけられて、ようやく現実が見えてきた。“成功率”と“費用対効果”を比較できるのが科学の強み。でもスピリチュアルは、良くも悪くも“無限ゲーム”なんですよね。言葉は悪いけれど、課金すればするほど、次の課金要素が出てくる構造に見えてしまって」
奥さまが帰宅した夜、タクミさんはスプレッドシートを広げ、治療プランと費用、スピリチュアル支出の上限を一緒にテーブルに並べました。
・医療をもう一度やろう
・スピ支出は月1万円まで
・医療でもスピでも、うまくいった方を受け入れる
・どちらも、結果が出ても恨まない
このリストを見た奥さまの瞳が揺れ、口元が小さく震えました。タクミさんは「私を否定したいの?」と奥さまから責められる覚悟はできていた、といいます。
しかし、奥さまはポロポロと涙を流し、ソファに崩れ落ちました。
「……もう逃げたくない」
その一言が、夫婦関係を静かに、しかし確実に動かし始めた瞬間でした。









