「発達障害の子ども」の多くが悩む「対人関係」。子どもをダメにする、ついやりがちな「親のしかり方」とは?【発達支援コンサルタントの「効果があった方法」】
【具体例②】「ゲームに負けると怒り、パニックになる」場合、親が見せるべき「姿」とは? 「次は勝てるよ」は慎重に
✖ダメにする
「いつまでも泣かない!」
「泣くならもうやらせないよ」
としかり、罰を与える
〇伸ばす!
保護者が一緒にゲームをし、負け方を継続的に見せる。小さな負けを何回も経験させ、気持ちの切り替え方を教える
ゲームで負けると、激しく怒り、パニックになる子どももいます。
ASDの子どもは、負けをなかなか受け入れられない特性があり、大きくなってもそれが続く傾向にあります。
ASDの子どもは、ゲームをすると必ず自分が勝つと予想していたりします。そのため、自分が負けると、予想外の事態と判断してパニックになるのです。
彼らは、自分の予想通りに物事が進んでいくことが大好きです。負けることは、まさに想定外で嫌なのです。負けの受け入れ方がわからず、パニックになる子どもが多くいます。
また、負けてからの気持ちを切り替えるテクニックも知らなかったりします。ゲームで負けても、怒ったり、パニックになったりしないためには、負けることに徐々に慣れることが大切です。
対策としては、大人が負ける姿と、負けてからの気持ちを切り替える姿を何回も子どもに見せることです。家庭で保護者が子どもと一緒にゲームをして、保護者がわざと負け、その姿を子どもに見せましょう。
保護者が、「よし、次はがんばるぞ!」と負けを受け入れて気持ちを切り替える姿を見せるのです。そんな大人の姿を見て、子どもは負け方を学びます。
家庭で3人でゲームをするのなら、子どもが2位になる経験も大切です。これは私の感覚ですが、ゲームを何回か続けていくうちに、「今なら、子どもが負けても大丈夫!」という瞬間が必ずやってきます。
ただ、子どもが負けたときに、「次は勝てるよ」と言うのには慎重になりましょう。ASDの子どもによっては、その言葉によって、「次は絶対に勝てる」という予定が組み込まれてしまうこともあるからです。
声かけをするのなら、「次はがんばろう」「次のゲームも楽しもう」「負けがあるから、勝ちが楽しくなるんだよ」などがよいでしょう。
日本中の学校でよく使われている、「五色百人一首」というカードゲームがあります。これは百人一首の簡易バージョンで、1ゲーム20枚ですぐ終わるので、何回も対戦できます。そのため、子どもが負けを受け入れられることを学ぶのにとても役立ちます。
いったん負けを受け入れることを学ぶと、ほかのゲームで負けても、パニックにならないようになっていくでしょう。
ただし、対人ゲームではなく、コンピュータ・ゲームやオンライン・ゲームでの場合は話が変わります。それらのゲームでは、大人が負け方の見本を見せることがなかなかできません。
子どもがゲームで負けて、不機嫌になっているときは、気分を解消できるものを与えたり、部屋も替えたりして、クールダウンを促しましょう。
★【関連記事】では発達支援コンサルタント・小嶋悠紀さんが語る、遊びをやめられない子どもの「発達障害の特性」と「 遊びへの影響」などを紹介しています。
>>>【関連記事】「発達障害の子ども」をダメにする、親の「10分後にゲーム終わりね!」の声かけ。なぜNG!?「伸ばす」ための接し方とは?【発達支援コンサルタントの「効果があった方法」】
■BOOK:『』小嶋悠紀・著
■著者 小嶋悠紀 (こじま・ゆうき)
発達支援コンサルタント、株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表取締役、特別支援教育総合WEBマガジン「ささエる」編集長。
1982年、長野県生まれ。信州大学教育学部を卒業後、長野県内で小学校の教員を務めながら、特別支援教育の技術などをテーマとする講演を全国で実施。特別支援学級担任・特別支援教育コーディネーターとして、発達理論・科学的知見に基づいた発達支援を10年以上行い、2023年4月より独立。これまで延べ3000人の子どもの支援に関わる。直接的な支援のみならず、教育技術研究所との共同による発達支援製品開発、各都道府県・市町村の教育委員会や生徒へのセミナー・研修・講演会、Web連載、メディア出演などでも活躍。著書に『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ接し方大全』(講談社)『イラストでわかる 特性別 発達障害の子にはこう見えている』(秀和システム)などがある。
スポンサーリンク










