「共働きでも小学校受験はできる」ものの、周囲との経済格差はものすごい。ただし「いつ受験に向き合うか」の設計ができる
まったくの鉄のカーテンというわけでもないが、そのカーテンの内側が本当に内側なのかはわからない
夫婦ともに地方出身で縁故もないため、「最も早くて小学校受験」だと判断した美雪さん。大手幼児教室に入塾しましたが、費用や時間的な負担も重くのしかかりました。
「幼稚園受験という選択肢も頭をよぎりましたが、いわゆる伝統校の付属は、まだまだ“ご縁故”が重視される世界だと聞きます。小学校受験ですら、そうかもしれません。家庭や縁故といった長い歴史の中で自然に築かれている“つながり”を持たない者は、自力で人工的にルートを切り開いて、ノウハウを探し出していくしかありません。そこで、大手の幼児教室に入塾したのですが……」。
美雪さんの前に立ちはだかったのは、費用の壁でした。
「私もれいなさん同様、お教室に行ってみたら私だけがオフィスカジュアル、周囲が全員びしっとネイビーという洗礼は受けました(笑)。みなさんバッグや靴も高級ブランドではあろうけれどぱっと見ではわからない落ち着いたアイテムですし、お子さんの受け答えから透けて見える日常の暮らしぶりも、保育園からきている私から見ればちょっとレベルが違います」。
たとえば、面接訓練で週末に行った場所を子どもたちが発表するその言葉を聞いていても「違い」を痛感したそう。
「那須のお家、と表現するお子さんがいらっしゃいました。普段住むご自宅のほか、葉山かどこかにももうひとつお家があるんですね。もしかすると箱根あたりにもあるかもしれません。習いごとのお話しをする発表でも、乗馬やサーフィン、お能、将棋、落語など、それ習えるの?!と驚くようなものが挙がります。共働きの収入でギリギリな我が家は肩身の狭い世界に入ってしまったなと感じました」。
そもそもお教室の費用の時点で「これはギリギリだな」と感じるレベルだったと美雪さん。
「それまで我が家が利用していた幼児向けの大手通信教育とは、トータルではゼロが二つ違うイメージです。私の稼ぎはもちろん、貯えもどんどんお教室に注ぎ込まれていきます。よく、準備の費用はベンツ1台分と言われるそうですが、あとから周囲に聞くと『うちはその半分よ~』というお家から『余裕で買える!』というお家までありました。我が家はAクラスのもっとも安価なものに届かないくらいの額で、あながちホラでもないのだなと思いました」。
塾の月謝だけでなく、受験絵画と呼ばれる絵を描く際にテーマとなるような二十四節気に応じたイベントへの参加、毎週のように行われる模試、ひいてはお教室に通う衣類にもお金がかかります。入試では園服のようなポロシャツと紺の半ズボンを着用するのが暗黙の了解ですが、入試本番に着慣れているように、早い時点から「本番服」でお教室に通うことが推奨されるからです。
「情報力や総合的な受験対策においては、信頼できる教室でしたが、その一方で仕事と受験準備の二足のわらじは本当に大変。仕事でも受験でもスケジュール管理に追われる日々です。夫婦ともに正社員として働いていても、どうしても母親に負担が集中しがち。父親のとんちんかんな対応に腹が立った日も、面接指導があれば笑顔で夫を立てて円満な態度をとらなくてはいけない。最後はストレスで耳が聞こえなくなりました。知り合ったママたちの中には、夏以降ずっと謎の湿疹に苦しんだ人や、首が動かなくなった人、最後に声が出なくなった人、果ては涙が止まらなくなって面接を失敗したという人までいました」。
ちなみにまで、美雪さんの周囲に関しては、偶然なのかもしれませんが美雪さんのような「お受験初代」の人たちの合格校に共通項目があったといいます。
「東京には皇居を中心にぐるりと囲む環状〇号線という道路があります。内堀通りが環状1号線、外苑東通りが3号、明治通りが5号に相当します。私の周囲の初代組は誰一人として環状6号、山手通りの内側に入れず(笑)、みんな環七から外の学校に決まりました。友人たちとは『お堀の内側に入るには3代かかりそうだね』と話しました」。
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