妻の入院より自分の夕飯が心配!? 48歳「ジコチュウ夫」から息子を守るため、苦渋の決断とは【離婚と親権】

夫が治療を受けさせてくれない!?

生命保険文化センター(2022年)の調べによると、民間のがん保険(がん特約付きの保険を含む)に加入している人は39%。10年前(2013年の37%)より増加していますが、特に40代の女性の加入率は50%。2人に1人はがん保険に加入しているのです。

 

筆者が「保険はどうなっていますか?」と質問すると、莉子さんは独身のときに入った生命保険だけです」と回答します。がん保険はもちろん、医療保険すら加入していませんでした。

 

全日本病院協会の調べによると、(2024年4~6月、急性期の場合)乳がんの治療にかかる医療費の平均ですが、ステージ0なら1回の入院につき67万円ですが、ステージ1は70万円、ステージ2は89万円とがんの進行とともに増加していき、ステージ4の場合は230万円にものぼるのです(2024年4~6月、急性期の場合)。

万が一、莉子さんの検査結果が陽性だった場合、夫に多額の医療費を出してもらわなければなりません。

 

筆者が「旦那さんはどのような性格ですか?」と聞くと莉子さんは大きなため息をつきます。すでに17年も連れ添っており、「ツーカー」で要件が伝わる、いわゆる「空気のような存在」。特に夫はプライドが高く、自分の思い通りでないと気が済まないタイプ。「少しでも反対されると『ふざけるな!』と逆ギレするんです」と莉子さんは振り返ります。

そのため、「がんかもしれない」「検診を受けたい」「治療をしたい」と莉子さんが懇願しても、夫がくだす判断はいつもその逆。「がんじゃない」「検診の必要はない」「治療にいくらかかると思っているんだ」と、ずっと天邪鬼な態度をとってきたのです。

結局、莉子さんは途中で気づく機会は何度もありながら、それをふいにしてしまい、最終的には手遅れになったのです。

 

 

深刻な状況で入院しても、変わらない夫

重度の骨折による入院。それは莉子さんだけでなく、夫にとっても青天の霹靂でした。さすがに緊急事態なので、亭主関白の夫も今回ばかりは親身になってくれる。莉子さんはそう期待していました。

 

アフラック生命保険の調査によると(2022年)、がん告知時の悩みでもっとも多いのは「生死にかんする不安」(34%)。そして「誰かに相談することについて、どのように感じたか」という質問に対して相談したいと思っても誰に相談していいか分からない(31%)、相談したいと思っても上手く話せずに抱え込んだ(30%)と回答しています(パーセントは「当てはまる」「やや当てはまる」の合計)。莉子さんの場合も、夫が「よき相談相手」になってくれれば良かったのですが……。

 

夫が莉子さんを見下すような態度をとったのは昨日今日にはじまったことではありません。今までずっとそうだったので、今日いきなり心を入れ替えるのは難しいでしょう。

「いつ戻ってくるんだ!」「今日のメシはどうするんだよ!」「そもそも俺の服はどこにしまってあるんだ」と、夫は自分の心配をするばかり。莉子さんを心配する素振りは、これっぽっちもなかったそうです。

こんな調子なので、16歳になる息子さんを夫に任せることはできませんでした。一時的に息子さんは莉子さんの実家で暮らすことになったそうです。

 

夫は自己中心的な態度をとり続け、病院に顔を出すことは一度もありませんでした。結局、入院申込書の「保証人」「身元引受人」の欄は母親に頼むしかなく、パジャマ等の入院セットを用意してくれたのも、担当医から病状の説明を受ける際に立ち会ってくれたのも母親でした。莉子さんは「母にはお世話になりっぱなしで…」と言います。

結局、末期がんの告知を受けたのは莉子さんと母親だけ。無関心な夫は「骨折のこと」しか知らないので、骨折が治り次第、帰ってくると信じていました。それなのに1ヵ月が経過し、2ヵ月が経過しても、退院する気配がありません。

業を煮やした夫は「お前、何やっているんだよ!今、どこにいるんだ!?  帰ってこないなら離婚だ、離婚!」と激昂したのです。

莉子さんが筆者に助けを求めてきたのはまさにこのとき。突然、夫から離婚の話が持ち上がったタイミングでした。

 

 

▶関連記事『「早く退院して家事をやれ!」乳がんの妻に、夫が離婚宣告。入院中でも親権をとって離婚するには【行政書士が解説】』では、入院中の莉子さんが離婚手続きをどのようにすすめていったのかについて、行政書士、ファイナンシャルプランナーである露木幸彦さんにお伺いします。

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