【2025ベストプレイス】憧れの聖地、ニューオーリンズで私が見たものは。ただしジャズではなく「第15回ウルトラクイズの聖地!」(鳴り響くテーマ音楽)
仕事だけでなく、家事に介護に育児に地域にと、それぞれがそれぞれの立場で多忙な日々を送るオトナサローネ執筆陣。彼女ら&彼らが各自の目線で今年「買ってよかったもの&行ってよかった場所」を語る、2025年ベストバイ&ベストプレイスです。
2025年行ってよかった場所として「ニューオリンズ」を挙げてくれたたこやきまことさんは、現役の勤務医さんでありマンガ家さん。オトナサローネでは『人生大逆転・社会人から医学部に!』を連載中。なれるものなんですね、社会人入試からの医師。そして本作がデビュー作です! たこやきさんの記事一覧はこちらから。
ところで、なぜニューオーリンズ? それは元ウルトラクイズガチオタ女子の「聖地」だからです!
こんにちは、たこやきまことと申します。医業の傍ら漫画も描きつつ、たまにバックパッカーになっています。今回、2025年1月に訪問したニューオーリンズの様子をお届けしたいと思います。2025年は私にはまさに漫画家デビューなど激動の1年でしたが、年始は仕事でアメリカの東海岸の某まじめくさった美しい都市におりました。1月に自由時間が得られたので、国内旅行にニューオーリンズに行ってみることにしました。
他にもいろんな都市が候補にあるなか、ニューオーリンズを選んだ理由は、伝説のクイズ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」で観た街の雰囲気が衝撃で、ずっと印象に残っていたからでした。
幼少期、私はウルトラクイズの大ファンで、書籍はもちろん、あらゆるグッズ、関連商品を買い揃え、本とゲームのクイズは全問マスターし、番組復活の署名を集めて日本テレビに提出しておりました。ファンの基本のたしなみとして、毎日ウルトラクイズのビデオを視聴していたため、アメリカの都市には異様に詳しくなっていったのですが、その中でも特に惹かれたのが、ニューオーリンズ(第15回)でした。
ニューオーリンズでは、酒場で「口の中に氷とお酒の材料をぶち込んで頭を振る人間シェイカー」という狂気の罰ゲームが繰り広げられ、挑戦者もキャラが立っている人だったので印象が強かったのですが、導入で紹介されていた街の様子は、子ども達がスニーカーでタップダンスをし、楽器を持つ大人の男たちであふれ、屋外で行われるブラスバンドの演奏、音楽、踊り、お酒により陽気な空気に満ちており、他のチェックポイントとは全く違う華やかな個性を放っていました。
一方、クイズに沿ってジャズの歴史も紹介されていたのですが、悲しいエピソードも多く、陽気さと切なさが両方伝わってきたのも他のチェックポイントと違うところでした。そんなわけで、ニューオーリンズは私には「聖地巡礼」だったのです。
現地バスから見たニューオーリンズの「舞台裏」。アメリカはやっぱり豊かな国なのです
飛行機で到着したら、直ちに我が旅のメインイベントの一つ、「現地のバスに乗る」が発生します。私の旅では、街によっては、ここがいきなり旅のクライマックスになるぐらいの重要ポイントです。
ここでは、「バスを見つけて乗り込む」という楽しいクエストに加えて(今回はすんなりいけた)、「バスから『真の街』を観察する」という真剣勝負のミッションがあります。観光地の常で、観光客向け「テーマパーク」と現地の人々の住むエリア「真の街」は全く別の顔をしており、明確に分かれています。私は、到着時にバスの中からこの『真の街』を眺めるのが、まるでゲームの「画面からは見えているが、入れないゾーンにある宝箱」を見ているようで、大好きなのです。舞台裏やメイキング動画を見せてもらっている特別感があります。
空港バスからみたニューオーリンズは、あまり人は歩いておらず(車社会)、大ぶりな建物がゆったり建っていて、穏やかなアメリカの近代的な中規模な街、といった様子で、むしろ退屈そうでした。ヤシの木が生えててカラっと温かいのも、なんだかのんきです。バスも行き届き、清潔で、人々はのんびりしていました。
「ここに現地の情報がだいぶ出るよな、アメリカってお金持ちの国なんだな」といつも痛感します。世界には、観光地の派手さの裏に労働者だけが貧困を背負っている構造が見えて、つらい気持ちになる街もあります。その点アメリカは、だいたい「あ、なんかみんなだいぶ豊かそう」と思える。これが居心地のよさにつながっているのだと改めて感じました。

「テーマパーク」と「真の街」。こちらが「テーマパーク」

「真の街」
これぞ、ニューオーリーンズ。明るいうちからストリートはお酒と音楽にまみれている!
さて、お宿に荷物を置き、お散歩に出かけます。滞在中は基本的に「テーマパーク」だけを歩きます。
お散歩に出て、まず、街に抱いた印象は、「酒屋が多すぎる」でした。1ブロックに最低1件は酒屋がありました。大阪はたこ焼き屋、香川はうどん屋、ジャイプルは宝石屋の頻度が異常高値だと思います。ニューオーリンズでは酒屋が異常高値でした。また、倒れて平然と放置されている人も頻繁にエンカウントしました。誰も全く構っていませんでした。いろんな国、観光地を旅しましたが、こんなにナチュラルに人が倒れていた街は初めてでした。誰でも救急車を呼べる国ではないのです。私の中で、「ニューオーリンズは酒と倒れている人の街」と決まりました。
バーボン・ストリートという、街に最も相応しい名を冠するメインストリートから繁華街を練り歩きます。バーボン・ストリートは、ウルトラクイズで見た以上のワンダーランドでした。本当に、朝から晩まで街中をバンドがウロウロして、生演奏しまくっていました。
路上にアップライトピアノ、ドラム、木琴、鉄琴を出すのは普通で、ウッドベースやティンパニはだいたい歩いています。日本では見たことがない変な形のクソデカチューバもいっぱいウロウロしていました。
いろんなバンドがいましたが、私がシビれたのはシンバル2, ティンパニ1, ドラム大1,ドラム中1の5人全員打楽器の編成でした。 「どういうことだ」と思っていましたが、彼らは豊かな演奏をして投げ銭を稼ぎまくっていました。「シンバル二人もいらんやろ!」などとわかったようなことを考えていた、自分のしょうもない常識は霧散しました。
また、けっこうな頻度で、子どもがバケツをドラムに見立てて叩いて、投げ銭を稼いでいました。うまかったので、10ドルを入れたら、めちゃくちゃ嬉しそうに”Thank you!”と天使の笑顔でお礼を言ってくれて、ますます浄化されました。汚い大人の私は、この笑顔にもギャラを払うべきかちょっと悩みました。
なお、私だけではなく、わりと多くの人たちがチップを入れており、音楽の神に愛されている土地だと思いました。本当に、大人から子どもまで、生活に音楽が根付いているのです。すごいところへ来てしまった、と感じました。

路上でバンド演奏は普通

そして、バーボン・ストリートはその名に恥じず、通りはバー、酒屋だらけでした。朝からガンガン路上飲酒していますが、これはお酒が基本的に厳しめに管理されているアメリカでは珍しい光景です(路上飲酒は禁止だったり、お酒の購入にIDの提示が求められることも多いです)。
飲み物のお店はいっぱいありましたが、フローズンのお店が多いこと、そのフローズンのマシンがかならずたくさん並んでいることに気づきました。よくよくそのフローズンを見てみると、フローズンは全部お酒でした。ダイリキ、ハリケーンなど、お酒のフローズンを片手にお散歩するのです。
バーももちろん品ぞろえがよく、ビールもバーボンも無限に種類がありました。全米で最初のバー(Lafitte’s Blacksmith Shop Bar) も残っていて、かなり気楽に入れます。

朝から路上飲酒も普通
お昼ごはんに、ガンボを食べに向かいます。ガンボはニューオーリンズの名物料理です。ごはんにおだしのスープがかかっています。店員さんが「ちょっとずつ食べれるのもあるよ~」と教えてくれて、3種盛りを試しました。シーフードが非常においしかったです。
ハリケーンというご当地カクテル(ラム+オレンジ/パイナップルジュース+シロップにさくらんぼがのってます)、いい気分でお散歩を再開します。ニューオーリンズ名物の揚げパンなどを食べ歩きながらお散歩していると、広場では絵を売ってる人、音楽を演奏している人がいっぱいいるそばを、馬が歩いていたりして、本当に素敵な街だな、とこっちもご機嫌になっていきます。

味は全然違う
マルディグラ(謝肉祭)モードの街。ベストな時期に合わせるなら2月ですね
ニューオーリンズでは、1月から3月にマルディグラ(謝肉祭)が行われます。リオのカーニバルと並ぶ大規模なお祭りです。ド派手な山車が街中を練り歩くらしいのですが、私が行ったときはパレードの期間(2月です)ではなく、残念ながら見逃しました。
が、街はやはりお祭りモードでした。ハロウィンもそうですが、アメリカ人はおうちの飾り方に尋常ならざる気合いが入っています。ベランダにおめかししてふんぞり返っている骸骨や幽霊が狂喜乱舞していて、陽気です。夜は仮装してさらにお酒が入った人々がどんちゃん騒ぎをし、マルディグラ名物のおもちゃのネックレスが2階から投げ飛ばされ、街全体が完全に仕上がっていました。

心構え

プリザベーションホールの殺傷能力がありすぎるジャズマン、ありがとう(?)
そんなハイな街のど真ん中で、プリザベーションホールのライブがあります。プリザベーションホールとは、ニューオーリンズの歴史あるジャズホールです。ホールは小さく、演奏者と座席はめちゃくちゃ近いです。演奏も建物も素敵で、演奏者を眺めていたら、いっぱいしゃべる愛想のいい演奏者の後ろで、クラリネットのおじさんの奏者がムスっとしているのが見えました。「仕事がだるくて早く帰りたいのかな、職人気質の気難しい人なのかな、ふふ」ぐらいに思っていたら、演奏中目が合い、バチィっ!とウインクして微笑まれました。すさまじい色気の一撃で、私はなすすべなく即死でありました。ありがとうございました。

殺人現場
私たちは思ったよりも心身傷つきながら生きている。「意識的にリフレッシュせねばならぬ」、そう気づけた
……こんな非日常の嵐の中で、私のニューオーリンズ滞在は終わりました。本当に楽しかったです。私が体験したことは、お祭り期間の特別モードだったのかもしれません。ですので、ぜひ機会があれば2月を狙っていってみてくださいね。
2025年は、世間でも個人的にも良くも悪くもいろんなことがあった年でしたが、年始に豪快な楽しい思い出をキメられたのはたいへん良かったです。
旅は最初にクライマックス、メインイベントを持ってきて早めに満足を確保すると、全体が成功する気がします。仮に後のイベントが失敗しても、「まあ、最初がよかったしな」と許せるからです。同様に、年始にものすごく楽しい思い出を作るのは、わりと1年の残りの心の持ちように効くということを学びました。私の2025年は3月からだいたい最悪でしたが、「まあ、1月ニューオーリンズ楽しかったしな」と、年始の派手な思い出で日々の不愉快をチャラにしながら乗り越えることができました。
そして、旅に出ると、毎回リフレッシュ効果が予想以上に高くて、日々の生活の積み重ねで、自覚以上に心身が傷ついて疲れているのがわかります。ですので、自分が思っている以上に多めに、リフレッシュや休息は取り入れる必要があるのだと考えています。非日常が精神にもたらす栄養効果はかなり高いと感じています。
でも、誰もがニューオーリンズに気軽にはこれませんし、お金と時間をかけた派手な体験だからといって、リフレッシュ効果を最大限引き出せるとは限りません。そもそも旅にリフレッシュ効果があるかも、人、状況によると思います。
私の友人は、ご両親に温泉旅行をプレゼントしましたが、お母さんは、出先では家以上にお父さんのお世話をせねばならず、「全然楽しくなかった」とのことでした。この話を私の母にしたら、「そりゃあそうだろう」と深く共感していました。なお、私の母は父が亡くなってから、女の親戚、友達たちとしょっちゅう温泉旅行やおでかけに飛び回ってめちゃくちゃ楽しそうにしてます。朝4時までおしゃべりして女子会をしているそうです。父の生前は「時間がない」などと言って旅行になんか一切行きたがらなかったし、行っても家が気がかりで楽しめないと申しておりました。ですので、ベストプレイスは、当たり前ですが、人、そして状況で変わると思います。
おうちで特別なアイテムや好物を整えてネットフリックスで映画を見るのも、買ったばっかりの本を気持ちいいカフェで読むのも、平日にめちゃくちゃいっぱい寝ちゃうのも、習い事を始めるのも、いい非日常だと私は考えています。降りたことがない駅で降りるのも、小さな大冒険です。コツは、「未知」あるいは「懐かしい」の要素を入れて、ちょっと「思い切ってやる必要がある」ことだと思います。
例えば、「昔住んでいたが、しばらく行っていない町やお店」などは、わりといいベストプレイスになって、楽しいと思います。ままならないことが多い日常生活に、そういう身近なベストプレイスから非日常を得て、積極的に取り入れて精神を大切にケアすることが、重要な自分のメンテナンスになると私は思っています。
皆様が、それぞれの最高のベストプレイスが一刻も早く開拓できるよう、心から願っています。それでは、またまた。









