「結婚」ではない「女ふたり暮らし」だからこそ! こんなにも幸せな理由とは? それぞれの両親との関係は「まるでお婿さん」!?
女性ふたりが「ルームメイト」ではなく、「人生のパートナー」として一緒に暮らすって、どういうこと!? 韓国発ベストセラーエッセイ『女ふたり、暮らしています。』の著者、キム・ハナさんとファン・ソヌさんは、お金を出し合ってマンションを購入し、同居生活を送っています。
この珍しいライフスタイル、周囲にはどのように受け取られているのでしょう? 特に、お互いの両親との関係は?
キム・ハナさんは「もしこれが結婚という関係で、義理の両親だったらこうはいかなかっただろう」と語っています。同じふたり暮らしでも、「結婚」と「気が合う女友達との同居」で、お互いの両親との関係が大きく異なる理由とは?
「こういう暮らし方もいいな」と思わずほっこりする生活を、今回はふたりの著書からのぞいてみたいと思います。
※この記事は『増補新版 女ふたり、暮らしています。』キム・ハナ/ファン・ソヌ 著(
ファン・ソヌのお母さんと、「私」の関係は?「大根の若菜のキムチ」事件
いつかファン・ソヌがお母さんに電話をかけた時、私が隣で「お母さん! 大根の若菜のキムチがとてもおいしかったです!」と叫んだことがあった。ファン・ソヌは慌ててスマホを押さえ、私に「しーっ!」とジェスチャーをしてみせた。
「どうして?」と声を出さずに聞くと、ファン・ソヌはもう一度私に向かって静かにしてという合図を送ったが、すでにお母さんに聞こえてしまっていたのか、同居人は「あ……ハナが隣で大根の若菜のキムチがおいしかったって言ってる。うん。それはうれしいよ。いや、ちょっとだけ。ほんとにちょっとだけ送ってくれればいいから。お母さん、ほんとにちょっとだけね!」と言って電話を切った。
「うちのお母さんは気前がよすぎて……おいしいって言おうものなら、大変なことになるんだから」
同居人の言葉に、うむ、そうなのかと思ったけれど、翌朝、ほんとにお母さんから「大根の若菜のキムチ、送ったよ」というメッセージが届いた。
家に届いた大きな発泡スチロールの箱を開けた私はその時ようやく、ファン・ソヌがどうして「しーっ!」というジェスチャーをしたのか理解した。
一個師団を食べさせられるほどの大根の若菜のキムチと各種おかず、食材、ミスッカル〔もち米、麦、ゴマ、豆などを蒸したり炒めたりしてから粉にした韓国の伝統的な健康食〕などがぎっしり入っていて、わが家の冷蔵庫はあっという間にいっぱいになった。
自分の娘でもないのに、隣にいた私のひとことでこんなに真心込めて大量の食べ物を送ってくれるなんて本当にありがたく、お母さんのすばらしい料理の腕前に目を丸くして驚いた(でも、ほんとにファン・ソヌの言うとおり、とても食べきれる量ではなかった)。
「私」の父と、ファン・ソヌの関係は?「何だか……お婿さんみたいだね」
海雲台区の松亭(ソンジョン)海水浴場のすぐ前にうちの父の小さな書斎があって、私たちはよくそこに遊びに行くのだが、鍵を受け取り、タオルや日用品などを実家から借りてくるついでに、兄夫婦や子供たちまで家族全員が集まって食事をすることがときどきある。
父は、家族がそろった食事の場となると晩酌が長くなり、決まって家族はそれをとがめる。ところが、ファン・ソヌは父が勧める酒をぐいぐい飲み、また父にも上手に勧めるので、父はファン・ソヌをとても気に入るようになった。
印象がよくて、気さくで、ほんとにいい人だと何度も褒め、この間、釜山で講演があって私ひとりで行った時は、「どうしてソヌは来ないんだ」と残念がった。父は、ファン・ソヌを自分の飲み友達と思っているらしかった。
それをファン・ソヌに伝えると「私、何だか……お婿さんみたいだね」と言ってけらけら笑った。娘の友達だからといって肉を焼いてもらい、それを食べ、父と乾杯しながら冗談を言っていれば褒められる。そのうえ、肉もお酒も両親のおごりだ。
結婚ではない「ふたり暮らし」だからこその、お互いの親との関係性に「幸せ」を感じる理由
考えれば考えるほど、互いの家族にとって私たちは蜜のような甘い存在だった。私たちがそれぞれ結婚していたら、義父母たちとの食事の場はこんなに気楽なものではなかっただろう。婿はもてなされるけれど、嫁はむしろ、義父母をもてなさなければならない雰囲気だ。
しかも、私たちの位置づけは婿よりも気楽だった。「娘と一緒に暮らす友達」には互いの両親に対する義務はなく、好意を受け取るだけの関係だ。
私がファン・ソヌのお母さんが送ってくれた大根の若菜のキムチをおいしく食べたからといって、親孝行のための旅行を計画したり、家の家電製品を買い替えてあげるべきかと悩む必要はない。「お母さんにおいしかったと伝えて!」と言えば済む。
私たちは互いの両親が好きだ。久しぶりに会うとうれしく、好意にただ感謝するばかりだ。それはきっと、私たちには友達の両親に何かをしてあげなければならないという義務がないからであり、親孝行は要求されてするものではないからだ。
少し前に母と連絡を取り合う中で、母の眼鏡のつるが壊れたことを知った。今、同居人が勤めている会社は、おしゃれな眼鏡ブランドの「ジェントルモンスター」なのだが、その会社は社員に一定数の眼鏡を無料で提供していて、同居人は自分の割り当てのうちの一つを私の母へのプレゼントに使ってくれた。
モデルを選んでもらおうと母にホームページのリンクを送ると、思った以上に高価だと知った母は、こんなものをもらってもいいのだろうかとずいぶんためらっていた。どうせタダなんだからと説得するとようやく眼鏡を選び、それを受け取ると、とてもありがたがって “証拠写真”を送ってきた。
もし、娘の友達ではなく嫁が眼鏡を贈ったとしたら、そこまでためらったり、ありがたがったりはしなかったかもしれない。嫁がそうするのは当然の領域に含まれ、娘の友達がするのは全面的に好意の領域に入るからだ。
好意。これが「本来の気持ち」ではないだろうか。慣習と家族関係と責任と義務で踏みにじられてしまう以前の、好きな友達を産んで育ててくれた両親に抱く親しみの情。自分の子供と一緒に暮らす友達によくしてあげたいと思う親の気持ち。
この国のすべての嫁、婿、義父母たちの本来の気持ちもこれと同じはずだ。そして、それが歪曲されることなく、本来の気持ちを保ったまま、大根の若菜のキムチと肉をむしゃむしゃいただいている私たちはやはり、幸せだと思う。
★【関連記事】では、キム・ハナさんが思う「ふたり暮らしをしてみてよかったこと」を紹介しています。
>>>女+女のふたり暮らし。「ルームメイト」ではなく「人生のパートナー」だからこそ、生活してみて「よかったこと」とは?
■BOOK:『増補新版 女ふたり、暮らしています。』キム・ハナ/ファン・ソヌ 著
■著者:
キム・ハナ(写真向かって右)
性別・生まれた年:女・1976年
釜山・海雲台出身。19歳の時からソウルに住み、多種多様な住居形態を経験してきた。2016年12月にファン・ソヌと一緒に暮らしはじめ、以前にはなかった安定感と混乱を同時に迎え入れた。最近は、読んで、書いて、聞いて、話すことを生業としている。著書に『話すことを話す』『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』(ともに清水知佐子訳、CEメディアハウス刊)ほか、『金色の鐘音』(未邦訳)、母であるイ・オクソンとの共著に『ビクトリー・ノート』(未邦訳)などがある。
ファン・ソヌ(写真向かって左)
性別・生まれた年:女・1977年
釜山・広安里出身。18歳の時ソウルに上京。麻浦区でひとり暮らしを続けてきたが、2016年12月からキム・ハナと猫4 匹と一緒に暮らしている。20年にわたって雑誌を作り、そのうちの大半はファッション雑誌『W Korea』のエディターを務めた。著書に『とにかく、リコーダー』『愛していると言う勇気』『カッコいいと思ったら、みんなお姉さん』、共著に『最善を尽くしたら死んでしまう』(いずれも未邦訳)など。
2人の共著に『クィーンズランドシスターロード:女ふたり、旅しています。』がある。また、共同作業でポッドキャスト「女ふたり、トークしています。」を毎週制作、配信している。
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