「一生ひとりだけ」は無理。でも、離婚もしたくない。結婚が合わないと思った僕が、妻と「オープン」を選ぶまで

2026.03.31 LOVE

健太さん(仮名・38歳)は、都内の中堅メーカーに勤める会社員です。埼玉県内の分譲マンションに、奥さまの美咲さん(仮名・36歳)と二人で暮らしています。子どもはいません。結婚8年目を迎えた今も、二人の生活は傍から見れば穏やかに続いています。

ただ、その穏やかさの内側で、健太さんはずっと何かを抱えていました。

取材場所は、都内の喫茶店でした。席に着いてコーヒーを一口飲んでから、健太さんは最初にこう言いました。

「僕、妻のことは好きなんです。いまも。たぶん、ずっと。最初にそれだけ言っておきたくて」

先に言っておかなければ、これから話すことがすべて違って聞こえてしまう——そういう意図だったと思います。にもかかわらず、健太さんは “夫婦でオープンリレーションシップを始めた” というのです。

オープンリレーションシップとは、恋愛や親密さを「結婚=排他」と結びつけない関係を、双方の合意によって運用する関係のあり方です。日本ではまだ馴染みの薄い言葉ですが、一言で言えば「配偶者以外との恋愛を、互いの承認のもとで認める」ということです。

「不倫の言い訳に聞こえるのが、いちばん怖いんです」と健太さんは言いました。

結婚制度のあり方に息苦しさを感じながら、それでも誰にも言えずにいる人は、きっと少なくないと思います。健太さんが今回話してくれたのは、その息苦しさを “なかったこと” にせず、奥さまと向き合い続けた記録です。正解の話ではありません。ただ、こういう夫婦がいる、ということを知ってほしいと思いました。

 

【無子社会を考える #33】

※個人が特定されないよう設定を変えてあります
※写真はイメージです

 

 

「妻が嫌いなわけじゃない。でも、結婚の”仕様”が合わない」

二人が出会ったのは20代後半、共通の友人を介した飲み会だったといいます。付き合って3年後に結婚。周囲からは「ゆっくりだけど、ちゃんとしてるね」と言われていたそうです。

「美咲は、好きな人には全力で向き合う人なんです。僕もそこに惹かれた。だから余計に、言えなかった」

結婚制度に違和感が芽生えたのは、結婚から5年目あたりのことだと健太さんは言います。「子どもをどうするか」という問いが、夫婦のあいだに浮かび始めた頃のことです。将来を具体的に考えようとしたとき、健太さんの中に、ずっと見ないようにしていたものが浮かび上がってきました。

 

ーーー“結婚制度が合わない” って、かなり強い言葉ですよね。最初はどんな感覚でしたか?

「言葉にできないんですよ、最初は。ただ、ずっと “息が詰まる” 感じがあって。愛してるのに、どこかで “契約に縛られてる感” が消えない。自分が不誠実だから?って責めたりもしました。でも責めても消えないから、今度は責めてる自分が怖くなってきて」

健太さんが感じていたのは、”排他性” という前提の重さでした。「この人以外を好きになってはいけない」という暗黙の縛りが、少しずつ呼吸の幅を狭めていきました。ただ、健太さんの語り口に軽さはまったくありません。浮気願望を軽く話すような雰囲気とは真逆で、真面目で、慎重で、言葉を選ぶのに時間をかける人でした。

「妻に不満があるわけじゃないんです。むしろ尊敬してる。一緒にいて楽だし、ちゃんと笑えるし、話もできる。でも、人生を長距離で考えたときに……恋愛感情やときめきまで “一人に固定する” のが、僕にはどうしても無理なんじゃないかって。”無理かも” じゃなくて、”無理” に近い感覚でした」

 

ーーーそれに気づいた瞬間って、何かきっかけがありましたか?

「……職場で、好意を持った人がいたんです。別に何かが起きたわけじゃないですよ。連絡先を交換したわけでも、二人で会ったわけでもない。ただ、その人と話すだけで、久しぶりに自分が “生き物” になった感じがしたんです。生きてる、って感じた。そのとき、怖くなったんですよ。『これ、結婚を続けるほど、僕は嘘をつく人間になる』って」

健太さんはその表現を使ったあと、「うまく言えないんですけどね」と付け加えました。何かをしたかったわけではない。ただ、感じた。その感覚が、健太さんに「このままではいられない」という予感を植えつけました。

「僕、ずっと “良い夫” をやろうとしてたんです。飲み会も早く切り上げて帰る、家事をする、妻の話をちゃんと聞く。それ自体は嫌じゃないし、大事だと思ってます。でも、ある日ふと思ったんです。『これを一生やって、恋愛の部分は全部封印して生きるの?』って。そう思ったら、身体が冷たくなって」

 

ーーー“封印して生きる”って、具体的にはどういうことですか?

「たとえば、誰かのことが少し気になっても、すぐに自分で蓋をするんです。気づかなかったことにする。考えないようにする。それを何年も繰り返してきた。でも、蓋って重ねるほど重くなるじゃないですか。気づいたらもう、自分で持てないくらいになってたんだと思います」

“妻が嫌い” ではない。”家庭が嫌い” でもない。ただ、”結婚=排他” という設計が自分に合わない——その感覚が、少しずつ健太さんを追い詰めていきました。

 

 

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