「夫は借金だらけ。養育費どころじゃないけど、離婚したい」41歳の妻が、無一文の夫から1000万円を一括で回収できた奇跡【行政書士が「財産分与」を解説】
今回の相談者・長屋朋子(41歳、会社員、年収350万円)は結婚8年目。長年、夫の「女遊び」に悩まされていました。今まで何度も「やめてください」と頼んだのですが、夫は何人(の女性)をおとせるか。ゲーム感覚だ」と言い、やめる気配がありません。しかも、夫の年収は550万円。不倫のデートや食事、ホテル代が足りず、借金を重ね、返済不能になると家族に知られるという繰り返し。
◀(前編)関連記事『「離婚したくても、1円も取れない!?」出会い系アプリで遊び放題の夫。児童手当や学資保険…総額500万円を使いこみ、借金まみれの夫』
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は相談時)>
夫:長屋亮平(42歳)会社員(年収550万円)
妻:長屋朋子(41歳)会社員(年収350万円)
長女:長屋朋矢(6歳)亮平と朋子との子
夫の父:長屋治夫(64歳で逝去)
夫の母:長屋陽子(66歳)年金生活
夫の父の前妻:板倉雅子(66歳で逝去)
夫の異母兄:板倉幹也(48歳で逝去)
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #18後編】
離婚したら財産だけでなく、借金も折半!?
朋子さんが夫の借金を肩代わりしたのですが、返済の原資は夫婦の貯金、子どもの手当、そして実家からの援助…しかも子どもの学資保険を勝手に解約されたことで、ついに堪忍袋の緒が切れ、離婚を考え始めたのですが、いかんせん夫にはお金がありません。過去の立替分や子どもの養育費を考えると、なかなか踏み切れずにいました。そんななか、思いがけぬ出来事が発生したのです。
朋子さんは「知らない地名の市役所から主人宛に手紙が届いたんです」と驚きを隠せません。封筒は開封済で、夫の机の上にむき出しで置かれているのを発見。差出人は今まで住んだこともなく、縁もゆかりもない市町村。不審に思った朋子さんは勝手に見るのはいけないと思いつつ、ついつい中身を取り出したのです。そこに書かれていたのは朋子さんの知らない夫の秘密でした。
夫の父親は再婚、母親は初婚ですが、父親には前妻との間に子どもがおり、それは夫にとって異母兄でした。前妻が亡くなったのは2年前。前妻は生命保険に加入しており、異母兄が受取人だったのですが、異母兄は3ヵ月前、まだ48歳の若さで逝去。後で分かったことですが、死因は自死だったようです。
警察庁によると令和7年の自殺者数は19,097人(そのうち男性は67%。13,117人)。令和6年は20,320人(そのうち男性は68%。13,801人)だったので減少傾向です。
異母兄は保険金を請求していなかったのですが、受取人が保険金を受け取る前に亡くなった場合、法定相続人(法律で定められた相続人)が受け取ることができます。保険金の金額は2,000万円。夫にとっては大金です。
市役所の担当者によると異母兄には妻子はおらず、いわゆる「おひとり様」だったようです。2021年度の生涯未婚率は、男性で約23.4%、女性で約14.1%。内閣府の「少子化社会対策白書」では、2040年には男性29.5%、女性18.7%になると予測されています。
父親はもちろん、父方、母方の祖父母も亡くなっており、法定相続人は異母弟…つまり、夫だけです(民法900条)。そこで筆者は「相続するかどうかは旦那さん次第ですよ。もし旦那さんが相続を放棄すると保険金は国庫に帰属しますが(民法959条)そのためには市役所が家庭裁判所に対して相続財産清算人の選任の申立をしなければなりません(民法952条)」と解説しました。どうするのかを決めて欲しい。手紙にはそう書かれていました。
夫に2000万円の保険金が舞い込むことに。今、離婚するとどうなる?
朋子さんが筆者の事務所へ相談しに来たのは突然、空から大金が振ってきたタイミングでした。朋子さんは「どうしたらいいでしょうか?」と尋ねるので、筆者は「まだ時間は残っています」と答えました。保険金の時効は請求できるときから3年です(保険法95条)。夫が保険金を受け取るにはおおよそ1年以内に請求しなければなりません。今度は筆者が「旦那さんは異母兄のことを知っているのでしょうか?」と聞くと、朋子さんは首を横に振ります。
「主人はその人のことを知らないと思います。お父さんは口数が少ないタイプですし、お母さんものんびり屋なので、どこまで聞いているのやら…」とつぶやきますが、どうやら異母兄は一度も会ったことがない、話したこともない、顔を見たこともない相手のようです。それなのに「主人はもらう気まんまんみたいです。あいつはハイエナなので金に目がくらんでいますから!」と朋子さんは怒り心頭。さらに朋子さんは「この保険ってお母さんが何かあってもお兄さんが困らないように入っていたんですよね。それを主人がもらっちゃうって…どうなんでしょうか?」と続けます。
まず筆者は正論を説明しました。「財産分与の対象は結婚している間に築いた財産です。しかし、相続した財産は対象外です(民法762条)。本来なら奥さんが今回の件に口を出すのはおかしいです」と。
しかし、筆者は「ものは考えようです」と前置きした上で、「奥さんの私利私欲のためではありません。あくまで旦那さんが浪費した分の穴埋め、そして何の罪もないお子さんの養育費です。大事なのは旦那さんにお金があるかどうかです。そして幸運にもお金が手に入りそうなのです。いくら必要ですか?」と質問しました。
そうすると朋子さんは「今まで立て替えた借金は500万くらいです。それから朋矢の養育費も500万あれば」と本音を言います。最後に筆者は「結局のところ、旦那さんが受け取らないと国に持っていかれるお金です。それなら離婚するために使ってもバチが当たらないのでは?」と背中を押しました。
離婚を切り出すと「どっちでもいい」という夫
朋子さんはそれらのことを踏まえた上で修羅場に挑みました。帰宅した夫に向かって「今まで見て見ぬふりをしてきたけれど、もう無理!あなたは朋矢の父親にふさわしくないわ!もう離婚するしかないって思っているの!!」と切り出したのです。
そうすると夫は相変わらず無気力な感じで「正直なところ、別にどっちでもいいよ。お前に何と言われようと遊ぶのをやめるつもりはないし、そうやってネチネチ言われるくらいなら離婚したっていい」と返したのです。朋子さんが思いがけず、最初の難関と思われていた「離婚の同意」を突破したのですが、まだ終わりではありません。
これまで散々、苦しめられ、傷つけられ、悩まされ続けたのだから、タダで離婚するわけにはいきません。そこで「この前、見っちゃったんだけど…」と前置きした上で、「やっぱり知らない人からお金をもらうってどうなのかなぁって」と様子をうかがったのです。そうすると夫は「まぁ俺にも運が回ってきたってことだろ?ありがたく受け取っておくよ」と辞退する気は毛頭ない様子です。
そこで朋子さんは「それじゃぁ」という感じで「今まであんたの借金、何回肩代わりしたと思っているの?500万よ、500万!」とまくし立てると、夫は「実は…それ以外に600万(の借金)があるんだ」とカミングアウトしたのです。そこで朋子さんは「毎月、養育費を振り込んで欲しいなんて言わない。だから今、500万だけ払って!」と頼み込むと、夫は「いいよ。それでも俺に400万、残るんだから」と二つ返事で承諾。夫にとって遊ぶ金は多ければ多いほどいいはず。朋子さんに1,000万円を渡さなければ、夫の手元には1,400万円が残ります。400万円と1,400万円なら後者の方がいいでしょう。
しかし、夫は目先のことをしか考えない性格です。「1,400万円を何年かけて使おうか」という長期的に物事を考えるという発想がありません。例えば、カードローンを限度額まで利用しているのなら、相続財産で完済すれば、「またカードローンを使えるようになる」と場当たり的にしか考えないのです。朋子さんにとっては夫の視野があまりにも狭いことに助けられました。こうして朋子さんが息子さんの親権を持つこととし、役所に離婚届を提出し、8年間の結婚生活にピリオドを打ったのです。
離婚の財産分与に当てはまらない「特有財産」がもらえる方法
息子さんから父親を奪いたくない一心で夫の尻ぬぐいを続けた朋子さん。それでも最終的に離婚は避けられなかったのですが、借金の尻ぬぐいした分を取り戻すことができたのは不幸中の幸いでした。
離婚に伴う財産分与は夫と妻の財産を合計し、それを按分するのが原則です。法務省が公表している司法統計(2024年)によると必ずしも男女平等ではありません。具体的にいうと妻が夫に財産を渡すケースは全体(財産分与の取り決めがあったのは8,258件)の14%(1,084件)しかありません。全体の86%は夫が妻に財産を渡しているのですが、朋子さんの場合、夫は無一文です。
離婚時、財産分与の対象になるのは共有財産ですが、一方で対象にならないのを「特有財産」といいます(民法762条)。具体的には贈与や相続によって得た財産ですが、そもそも財産分与の根拠は内助の功です。例えば、朋子さんが家事や育児を引き受けることで夫は働き、収入を得て、貯金を作ることができた。だから夫の貯金は夫婦の共有であり、離婚時、妻は自分の取り分を請求できるという理屈です。
今回の場合、夫は朋子さんと結婚していてもいなくても、異母兄の財産が転がり込んでいたでしょう。そのため、2,000万円の保険金を相続するにあたり、朋子さんは何の貢献もしていません。
しかし、夫は散財を繰り返し、借金を積み重ね、夫婦の貯金、子どもの手当、両親からの援助で返済せざるを得なくなりました。夫婦が離婚するなら、夫はその補償をしなければなりませんが、どこから補償するのかは夫次第です。借金まみれの夫自身に補償する資力はないのだから、「相続した財産を分けてください」ではなく「立て替え分を補償してください」という言い方なら、夫を説得できる余地は十分にあるでしょう。
<出典>
厚生労働省の人口動態統計(2024年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/dl/03_h1.pdf
厚生労働省の人口動態統計(2014年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei14/dl/03_h1.pdf
法務省が公表している司法統計(2024年)
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12787.pdf
一般社団法人・日本家族計画協会家族計画研究センターの調査(2017年)
https://www.jfpa.or.jp/pdf/sexservey2020/JexSexSurvey_p12.pdf
ソニー生命の「子どもの教育資金に関する調査(2025)」
https://www.sonylife.co.jp/company/news/2024/nr_250313.html
警察庁の自殺者数
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html
内閣府の「少子化社会対策白書」(2021年)
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12772297/www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/index.html
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