面談室で先生と向き合った私が「思わず涙を流した」不登校児の親ならではの「言い知れぬ苦しみ」とは

2026.10.15 LIFE

不登校児の親として、体験したことや考えたことをふりかえるこの連載。

今回は、前回に引き続きフリースクールとの関わりについて考えたい。

前編記事『このままフリースクールまで不登校になるのか」やっと通い始めた中1の娘に笑顔はなく』に続く後編です。

 

【仙田学・シングルファーザー小説家の子育てと社会日記】#7後編

「娘さんではなく、環境に要因があったのかもしれません」

家に戻ると、長女の姿は台所になかった。寝室に見に行くと、布団にくるまって大声で泣いていた。そんな様子を見るのは数ヶ月ぶりだったので、わたしは長女の隣に座り、抱きしめた。

 

「行きたくなかったら行かなくていいよ。行きたくなったら行ってもいいし。何しててもパパは〇〇のこと大好きやで」

 

と伝えた。肩を叩いたり、頭をなでたりしているうちに落ち着いてきた。

 

それからさらにひと月ほど経った、11月のなかば頃のこと。仕事を終えて駅に向かって歩いていると電話が鳴った。通っていたフリースクールの、関西にいくつもある教室全体を統括している先生からだった。

 

その頃にはわたし自身もフリースクールに通わせることについて前向きになれずにいたので、とくに何も思わず聞かれるがままに、長女の近況について話した。

 

午前中には起きられる日が増えていることや、教科書やプリントを使ってひとりで勉強をしていることを話すと、先生は、

 

「フリースクールに通えなくなったのは、〇〇ちゃん自身に要因というよりも、環境に要因があったのかもしれないですね」

 

とおっしゃった。

 

不登校の子のなかにもいろいろな状態のグラデーションがあるという。心に負った傷があまりにも深いため1日じゅう布団のなかからでられないというケースから、ゲームをしたりスマホを触ったりすることで気を紛らわせながらもなんとか現実と向きあえているというケース、元気に活動はできるが学校には行かないというケースなど。長女の場合は、ひとりで勉強ができているのならかなり元気な状態だといえる、とのことだった。

 

「もしかしたら、通われていた教室が合わなかったのかもしれないですね。いちど、別の教室にいらしてみてください。教室によって雰囲気がかなり違いますから」

 

わたしは半信半疑ながらも、長女にこの話を伝えてみた。すると「行ってみたい」というので、予約をとって、統括の先生が教室長をされている教室へと伺った。

 

「子どもたちには道のまんなかを歩いてほしい」

面談の担当をしてくださった教室長は、まだ20代にみえる若いかただった。他のスタッフも、通っていた教室と比べて全体的に若い人が多そうだ。なにより教室が広く、ビルの高層階のワンフロア全体がひとつの教室になっているので開放感があった。以前に通っていた教室はこぢんまりとしていて、陽当たりもよくなかった。

 

教室長は長女の目をまっすぐ見つめながら、これからの話をしていった。月に8コマの授業を受けること、科目は数学にすること、などを、長女は教室長と話しながら自分で決めていく。

 

「もしまたしんどくなったら、家まで話聞きにいくしな。家が嫌やったら、カフェでもいいし、公園でもいいし、会いにいくな」

 

と教室長は笑顔で話した。

 

なぜこの人は、こんなに気にかけてくれるんだろうと思った。もちろん仕事だからだろうし、大手の学習塾が経営しているフリースクールなのでマニュアルもあるのだろう。だが仕事だから、だけでは説明がつかないような情熱を感じたのだ。

 

「なぜ先生は、この仕事をされているんですか?」

 

とわたしは聞いた。教室長は、

 

「わたしは、子どもたちに道の真ん中を歩いてほしいんです。学校に行っていないというだけで引け目を感じたり、可能性が狭まったと思ったりしてほしくない。堂々と生きていてほしいんです」

 

と笑顔で答えた。それから少し、ご家庭の事情なども話してくださった。話を聞くうちに、わたしの頬に涙が流れた。つられたのか教室長も涙をこぼしていた。長女の前でティッシュで顔を拭きながら、この人になら、安心して長女のことをお願いできると思った。

 

思いの乗った言葉が、私が抱え続けた漠然とした不安に輪郭を与えてくれた

なぜ教室長の話を聞きながら泣いてしまったのか。たぶん、「子どもたちに道の真ん中を歩いてほしい」という言葉が、わたしが長いあいだ長女に抱いていた名づけようのない感情に、輪郭を与えてくれたのだろう。

 

笑顔でそう言い切れる教室長は、わたしよりももっと長いあいだ、わけのわからない感情に振り回されてきたのかもしれない。そして乗り越えることができたから、わたしにその言葉を伝えてくれた。そう思えるくらい、思いの乗った言葉だった。

 

不登校児の支援に関わる人のなかには、親と同じくらい自分ごととして、子どものことを考えてくれる人もいる。その考えは、大きな安心感を与えてくれた。

 

同じフリースクール内で教室を変わることで「環境要因」を取り除くことができるのかどうか、確信は持てないが賭けてみようとも思えた。

 

教室を変えたことで長女がどう変わっていったのかについては、次回の記事でふりかえりたい。

 

前編>>>『「このままフリースクールまで不登校になるのか」やっと通い始めた中1の娘に笑顔はなく』

 

 

 

■編集部より/10月19日(月)19時~「不登校ラジオ」vol.4インスタライブ!

本連載への高い反響を踏まえ、仙田学さんが「不登校ラジオ」をスタートしました。5回目は10月19日(木)19時~、インスタライブでお届けします。オトナサローネのインスタアカウント@otona_saloneにアクセスしてください。どうぞお気軽にご参加を!

https://www.instagram.com/otona_salone/

スポンサーリンク