梅宮アンナという女性ががん治療「標準医療」に託した思い。闘病連載を担当した編集者が振り返る「人生でいちばん長かった気がする1年」

梅宮アンナは今から約2年前の2024年8月13日、オトナサローネの記事で自身の「小葉がん」り患を世界に初公表した。抗がん剤の投与2回目の前日、脱毛が始まったタイミングだった。

 

「私、がんになったの」。電話で突然告げられた衝撃の事実、何と答えたか覚えていない

8月の公表に先立つ7月末、医療エディターでもある私は、新宿ルミネ2でエレベーターを待つ間に梅宮から電話を受けた。

 

「イノイチさん、私、がんになったの」

 

そのような切り出しだったと思うが、あまりの衝撃に詳細はよく覚えていない。このとき私は「だいじょうぶ、いまがんは治るから」と返したことだけは覚えている。後日梅宮の闘病連載で「だいじょうぶという言葉は言ってほしくない」とストレートに意思を伝えられ、本当に申し訳なかったと深く反省したことを思い出す。以下、連載記事を引用しながら振り返りたい。

 

もしかしたら私もこれまで同じ思いを誰かにさせてきたのかもしれませんが、「だいじょうぶだよ!」という言葉からもとんでもないプレッシャーを受け取ってしまいました。笑顔でありがとうと返事はするけれど、じつは毎回毎回つらかった。毎日こんなに考えて、こんなに動いて、だいじょうぶかどうかを調べれば調べるほど「だいじょうぶ」なんてことは絶対ないという事実がどんどんわかっていくのに、これ以上その事実を直視しながらがんばれないのです。がんと診断されてはじめてわかった心の動きです。

【独占告白】梅宮アンナからメッセージ「私、7月31日に乳がん治療を始めました」

 

「お騒がせタレント」の印象があるだろうが、接してみると相当違う

実は私は、多くの女性誌エディターたちが親しみを持って「アンナちゃん」と語り掛けるほどには、彼女との付き合いは長くない。オトナサローネで連載を持っていただく4年前までは「JJで世の中を変えたトップモデル。かつてお騒がせ芸能人だった時代もあるが、それも含めて時代を動かした人」という、これを読むあなたと大して違わない認識を持っていた。

 

しかし、実際に接してみるとこれがまた、ちょっとくらいは正解だけど、だいぶ人物像が違う。

 

まず、頭の回転がとても速い。お医者様のお孫さんだと後から聞いて納得した。どのような場でも自分がどうふるまうことが場の要求にかなうのか、常に最適解を考えながら発言している。正しいものは誰がなんと言おうと正しいし、間違ったことは大嫌い。派手な芸能人に見えるが、基本的にお酒は飲まない。夜は早寝で朝も早く起きる。仙人みたい。あとは、トップモデルでありながらお食事がちょっと偏食気味で、ジャンクな食べ物が大好き。

 

そんな彼女がなぜオトナサローネで闘病連載を持ってくれたかというと、「きちんと医師の確認をとった内容を配信したい。これから自分が受ける標準治療について、患者さんはもちろんのこと、日本のあらゆる医療関係者の皆様に安心して読んでいただける、科学的に正しい内容を届けたいのだ」、この思いに尽きた。

 

いま、私は自分の人生でたぶんいちばん、「人のためになる自分の体験」を伝えたい思いがあります。人を助ける力があるのに助けないのはダメだよ、って。日々体の痛みと闘っていますが、人と話していると痛みが軽くなるのは大きい。だから仕事をすること、みんなに闘病が公開されることは私の助けです。見返り求めていなくて、誰かのために何かできる自分が気持ちいいんです。たぶん、結果はあとからついてきて、次につながっていくのだと思う。相手が病気ですから、打算的に「こう動こう」なんて計算はできません。

【独占告白】梅宮アンナ乳がん治療「過去のどれだけの贅沢よりも、この医療を受けられることが信じがたい幸運」(後)

 

いろいろと噂はされるだろうが、彼女は本当に標準治療を受けてきました

治療を選択する際、梅宮はまったく何の迷いも見せず標準治療を選んだ。というか、私が話を聞いたときにはすでに全部を自分の意思で決めていた。「先生が、私の治療、フルコースでいきますって」。

 

治療にはかつて父・辰夫さんが通った東京・築地の国立がん研究センター中央病院を選んだ。初診時から主治医の指導をきっちりと守り「標準治療の外のものは、サプリメントはもとより、その他健康食品類も一切口にしない」ストイックな治療をいまでも続けている。

 

ただし、実のところは一度だけ自費療法を受けている。これを正直に主治医に報告したというくだりが連載にはある。

 

梅宮・1クール400万の自費療法を『抗がん剤がラクになるからやりなさい』と言われて話を聞きに行きました。でも、私は標準治療と両方を受けるのがイヤで。あっちもこっちも得体の知れないものを入れると、混ぜるな危険の事態が起きると感じました。自費療法の先生には『命が大事じゃないのか、これをやったら助かるのに』と言われましたが、私は標準治療でダメならそれでいい、覚悟はできていると答えました。

「2人に1人はがんにかかる。自分もかも、と思う人は何をいますべきですか?」【梅宮アンナ×押川勝太郎医師#1】

 

梅宮・私はもともと包み隠さない性格なので、自分の思ったことは全部口にしてしまいます。自費療法を1回は受けた話を包み隠さず正直に主治医に話しました。そのとき、驚くことに褒められたんです。そんなの受けて!と怒られるのではなくて、『普通の人は隠すのですが梅宮さんはちゃんと言ってくれました』と。

日本でのがん治療は安心して「標準治療」を選んでいいと言うけれど、その理由は?【梅宮アンナ×押川勝太郎医師#2】

 

彼女のもとには、彼女を案じた人々からたくさんのサプリやらなにやらが毎日送られてきた。が、それらを飲んではいない。その気持ちも連載では語っている。「ご厚意なのに、本当に申し訳ないのだけれども」と断りを入れて、

 

たとえばサプリメントが抗がん剤と喧嘩しない保証がないんです。私は早く治療を進めたいから抗がん剤を投与してほしかったけれど、投与は血液検査の結果で可否が決まります。投与当日、今日受けられるのかなと、あんなに緊迫する空気は他にありません。余計なものを体内に入れてしまうと、この検査数値が変わる可能性もあります。阻害の働きを持つものを素人には判断できないから、よかれと思って飲んだもののせいで治療が無意味になる可能性がある。この心の声は無視したくないのです。私は一刻も早く治療を前に進めたかった、1週間2週間遅れたらその分だけがんが進行するでしょうから。

どんな病気でも「自分で考えて自分で答えを出す」ことがとっても大事なのだと思います

 

梅宮が受けてきたがん治療は「ご厚意を断り切れなかった」と聞くその1回だけの自費療法を除けば、日本の保険加入者が保険内で受けることができる治療であり、「セレブ特別コース」「標準ではない特別な治療」ではない。インスタを見守っていた人ならばわかると思うが、抗がん剤の副作用に苦しみ、肺炎にかかり、術後の痛みとリンパ浮腫に苦しみ、とどめのように放射線治療で苦しむという「フルコース」を、時にインスタライブで泣きながら乗り越えてきた。

 

つづく>>>「梅宮アンナはがんで商売している」と言いたくなる人に、闘病に伴走した医療エディターがそっとお伝えしたい2つの「反省」

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