「オブラートに包みすぎると伝わらない」そう気づいた私が、仕事や生活のなかで“本音”を伝えるようになった理由
日々が飛ぶように過ぎていくなか、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのように横たわる五里霧中ですが、そんななか「ほんのちょっとしたトライ」で自分のあり方を捉えなおすには、「最初の一歩」に何をしてみればいいのでしょうか。体験談をご紹介します。
<<この記事の前編:「怒鳴っている」と通報された日も、涙をこらえた日も。35歳で保育士に復帰した私の“全力の日々”
◾️カオリさん
東京都在住の43歳。45歳の夫、高1と中2の子どもの4人家族。8年前から保育士として勤務。
写真はイメージです
【私を変える小さなトライ#36】後編
ご近所トラブルで、「本音を言った方が伝わる」と気づいた
カオリさんは、どちらかというと物腰の柔らかいタイプ。「自分が嫌だと感じる言い方はしたくない」と、常に相手への気遣いを心がけてきました。これまでの人生でも、ズバッとモノを言ったり、強い主張をすることは避けていたといいます。
「でも、保育の現場では、それだと全然伝わらない。むしろ、こちらが下手に出ると、相手の攻撃力がどんどん高まってしまうこともあって……。 “本音で伝えたほうがいい”って、はじめて気づいたんです」
そのきっかけとなったのは、意外にも“ご近所トラブル”でした。
隣の家で飼われている犬が、毎朝7時ごろから長時間吠え続けていて、カオリさんはずっと「うるさいな……」と感じていたそうです。何度か注意を促したものの、状況は一向に改善されませんでした。
「『朝から鳴いていますね。どういう状況なんですか?』って、やんわりと伝えていたつもりだったんです。でも、どうやら相手は“迷惑がられている”とはまったく思っていなかったみたいなんです」
どれだけ気を遣っても、 “肝心な思い”が伝わらなければ意味がない。そんな現実を突きつけられた瞬間でした。
「オブラートに包みすぎると伝わらない」だから子どもにはちゃんと伝える
あるとき、カオリさんは体調を崩して寝込んでしまい、1週間ほど自宅で静養することに。しかしその間も、隣家の犬は朝から晩までキャンキャンと鳴き続けていました。
「もう限界でした。ずっと我慢していたんですが、そのときばかりは堪忍袋の緒が切れて……。思い切って、ストレートに“困っている”と伝えに行ったんです。そうしたら、ようやく犬の鳴き声が止まりました」
何年も“やんわり”伝えていたつもりだったのに、全く伝わっていなかったという現実。カオリさんは、この経験でようやく「オブラートに包みすぎると、相手に届かないことがある」と実感したといいます。
「子どもに対しても、同じなんです」と、カオリさんは笑います。
たとえば最近では、自分の機嫌が悪いと他の子をすぐに叩いてしまうような園児も増えているそうです。そんななかでも「ちゃんと伝えれば理解できる子は多い」と言います。
「自分の機嫌が悪いからといって、人を傷つけてはいけないよ」ときちんと伝えるようにすると、子どもでも納得することが分かって、根気よく伝えることの大事さを実感しています。
子どもたちが“自立”し、善悪の判断ができるように。保育士として、寄り添い続けたい
「私自身もそうでしたが、最近は“注意できない保育士”が増えていると思います。だから子どもたちも、『何がいけないことなのか』を知らないまま、うやむやになっている気がするんです」
カオリさんは、そんな保育の現場に危機感を抱いています。たしかに、コロナ禍で在宅勤務が進んだことで、保護者のお迎え時間が安定したり、一時保育が減ったりと、保育現場にとってプラスになった面もありました。しかしその反面、「子育てを保育園に任せきりにする家庭が増え、保育園への要求だけがどんどん高くなっている」とも感じているそうです。
保育のやりづらさは近年のクレーマー事情や、家庭での子育てとも密接に関係しています。一部を切り取られて指摘されることを過度に恐れて、職員側も強く言えないムードが醸成されています。
子どもの命を預かり、日々、全力で向き合っているからこそ感じる、保育士という仕事の“やりがい”と“理不尽さ”。
「この仕事が好きなんです。自分にあっていると思うし、子どもの成長に関われるのは嬉しい。でも…… “いつまで続けられるんだろう”って不安になることも正直、あります」
それでも、カオリさんは静かに、そして力強くこう語ってくれました。
「子どもたちが自分で考えて行動できるように、善悪の判断ができるように。そのために、保育士としてきちんと寄り添っていきたいんです。私自身も、 “伝えるべきこと”は、きちんと伝えていきたいと思っています」
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白髪染めをやめた。矯正を始めた。ドライヤーを買い替えた。骨密度検査をした。習字を始めた。寝る前にストレッチを続けている。資格を再取得した。ママ友と温泉旅行に行った。2㎏やせた。子どもとオンライン英会話を続けている。断捨離した。終活してる。離婚を決意した……などなど、どんな小さなことでも大丈夫です!
(編集部より)
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