「勝手にトイレ入るな!」と連れ子をいじめる偏愛夫(38歳・公務員)。再婚→また離婚…夫の「仕事上の弱み」を把握すれば、実子の親権も養育費も得られる!?

11月28日、法務省は来年4月から導入される「法定養育費」の詳細を発表しました。ここでは子どもの母親が親権を持っている前提で説明します。法定養育費とは父親との間(大半の場合は夫婦なので前夫)に養育費の取り決めがなくても、父親の財産を差し押さえて養育費を取り立てることができる制度のことです。

 

具体的には父親が会社員の場合、会社が父親(従業員)に給料を支払う前に、会社が直接、母親の口座に養育費を振り込んでくれます。残った分は父親の口座に振り込まれますが、いわゆる給料の天引きが可能。しかも一度、手続を踏めば最終回(例えば、子どもが成人するまで)自動的に天引きされてくるので非常に便利です(民事執行法151条)。

 

統計上(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)。養育費の取り決めをしたのは全体の46%、約束を書面化したのは35%、強制執行が可能な書面に残したのは28%です。強制執行というのは元夫が約束した養育費を支払わなかった場合、元夫の財産を差し押さえることができるという意味です。

 

しかし、強制執行が可能な書面がなくても、法定養育費の範囲なら強制執行(差押)できるようになったのです。なお、今回、法定養育費は子ども一人あたり毎月2万円と決まりました。

 

このような法改正が行われたのは現状、養育費を回収する難易度が高いことの裏返しです。上記の統計によると母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%しかいません。一方、一度も受け取ったことがないのは57%に達していますが、半分以上の父親は養育費を支払ったことがないことを意味します。

 

 

「払えそうだったら払う」前夫から振り込まれない養育費

今回、取り上げる相談者は塩屋奈々さん(36歳、専業主婦)。彼女は二度目の離婚をするかどうかで悩んでいました。離婚はたった一度でも大変です。なぜなら、結婚するときは永遠の愛を誓ったのに、なんらかの理由で最後まで添い遂げることができなかったのですから。そんな経験を経て、二度目の結婚に踏み切るには勇気がいるでしょう。

 

実際のところ、結婚する夫婦の4組に1組は再婚です。厚生労働省の人口動態統計によると2023年の婚姻数は47万組。そのうち12万組はどちらか(もしくは両方)に離婚歴があるので全体の25%を占めています。

 

奈々さんは前夫と授かり婚をしたのですが、前夫は育児をそっちのけで「パパ活」に夢中。子どもと一緒にディズニーランドを楽しんでいる最中も、スマホにはひっきりなしにパパ活アプリの通知が届くのです。

奈々さんは「娘との約束より、パパ活で知り合った女性とのデートを優先するんです!」と怒り心頭。平日の帰りは午前様。休日もほとんど家におらず…最終的には子どものための学資保険を無断で解約したのですが、それをパパ活のデート代に充てていたことが発覚。さすがの奈々さんも堪忍袋の緒が切れ、三行半をつきつけ、わずか3年で離婚に至ったのです。

 

未成年の子どもがいる場合、どちらが親権を持つのかを決めなければ離婚は成立しません(民法819条)。今回の場合、前夫は子どものことが眼中になかったので、消去法で奈々さんが親権者に。そして親権者は非親権者に対して子どもの養育費を請求うることができます。(民法766条)

 

筆者は「養育費はどうしたんですか?」と尋ねると、奈々さんはため息をつきます。もちろん、奈々さんは前夫に請求したのですが、「ないものはない!」の一点張り。「払えそうだったら払う」という捨て台詞を残り、姿を消してしまったのです。

 

上記の統計によると母子家庭のうち、養育費を受け取っていない理由として相手に支払う意思がないと思った(15%)、相手に支払う能力がないと思った(14%)以上に相手と関わりたくない(34%)が最多です。しかし、養育費を払わないのは前夫が悪いのに、泣きを見るのは前夫ではなく前妻だなんて不条理です。

 

 

浮気されないだろう、とバツイチが再婚に踏み切ると…

そして離婚から3年後。知り合ったのが現夫でした。前夫は人気俳優似の長身イケメン。奈々さんは結婚相手にモテるタイプを選んだことを後悔していました。そのため、現夫はブレイク前の芸人にいそうな地味なルックス。奈々さんは「タイプじゃないけれど、イケメンじゃない普通の彼を選んだんです」と振り返ります。

 

現夫の職業は水道局の職員。地方公務員なので収入が安定しているし、奈々さんがリードしなければ会話が成り立たないほど口数が少ない性格。これなら前夫のように別の女性に目がくらむ心配はない。奈々さんはそう期待していました。実際のところ、現夫は奈々さんの連れ子を我が子のように可愛がってくれ、週末には一緒に食事をしたり、買い物をしたり、映画を見に行ったりと充実した時間を過ごしていたのです。

 

しかし、現夫との間に子ども(実子)が産まれてから、そんな平和な生活の風向きが変わってしまったのです。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、奈々さんは「夫の態度がまるっきり変わってしまったんです!」と嘆きます。何があったのでしょうか?

 

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦や子どもの年齢、1回目、2回目の離婚原因、子どもに対する現夫の偏愛癖、親権や養育費が決まるまでの経緯などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

 

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は離婚時)>

現夫:塩屋勇気(38歳)地方公務員(年収650万円)
妻:塩屋奈々(36歳)専業主婦  ☆今回の相談者
長女:塩屋奈緒(9歳)奈々と幹人との子
長男:塩屋勇也(3歳)奈々と勇気との子
前夫:川田幹人(41歳)とび職(年収500万円)

【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #16】

 

 

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