「本気の不倫」にハマった妻の愚かすぎる離婚願望【不倫の精算#16】(前)
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか。これからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
【不倫の精算#16前編】
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「夫と離婚するためにどうすればいいのか」と相談されて
36歳になるCさんとは、友人からの紹介で知り合った。
「いいですか?」
と、初対面のカフェでCさんはすぐ“本題”に入りたがり、慌ててペンとメモ帳を取り出そうとしていると
「あの、夫と離婚したいのですが、どうすればいいですか?」
といきなり核心が飛んできた。
顔を上げると、Cさんは口元をかたく結んでこちらをまっすぐに見つめている。
「何かあったのですか?」
と尋ねると
「好きな人ができたんです」
と早口で答える。
それなら夫に正直に打ち明けるのがいいだろう、とまず浮かんだが、そう口にする前に
「でも、それは夫に隠したくて」
強い口調でCさんは続けた。
どうしてですか、という質問はやめ、
「不倫ですか」
と言うとCさんは頷いた。
肩をすくめ身を固くしているCさんは、カジュアルな服装で髪もただブラシで整えただけに見え、特に派手さや自分を高く装う感じはない。
ありていに言えば「普通の30代女性」であり、不倫相手に舞い上がる“キラキラ感”も、嘘をついて夫と別れようとする“ずる賢さ”も、この場に「いつもの姿」で来た様子からは伝わらなかった。
だからこそ、男性との関係はもう当たり前になっているのだな、とボールペンの芯を出しながら改めてCさんの表情をうかがった。
「夫に非はない」状態に焦る既婚妻
「旦那さんのほうに、離婚の原因にできる問題があったりはしませんか」
そう問うと、Cさんは弱々しく首を振る。
「ないんです。
一応、夫婦としては会話もあるし二人でご飯を食べに行くこともあるし、夫が浮気する可能性なんてゼロだし。
あるとすれば、ベッドで過ごすことがもう何年もないことくらいですね……」
ぽつぽつと話す様子を見て、
「レスだけど夫は浮気をしていないと言い切れるんですね?」
と思わず尋ねたが、はっとした表情でこちらの目を見返したCさんは
「だ、だって、いつも時間通りに帰ってくるし、休日はどこにも行かないし。
スマホはいつでもそこらへんに置きっぱなしで、誰かとコソコソ話しているのも見たことがなくて」
と、慌てたようにトーンを上げて答えた。
そう、不倫している側は、自分の配偶者の様子にはいつも鈍感だ。
「いつも通り」が崩れる瞬間を意識しないことが、自分を追い詰める。そんな結果をいくつも見ているが、あえてそれは言わなかった。
Cさんが気になっているのは、このような「夫に非はない状態」でどうやって自分の都合よく離婚するか、その点のみなのだ。
Cさんは落ち着きなく視線を動かしていたが、すぐに
「それで、夫とはどうすれば離婚できますか?」
と強い光を帯びた目でこちらを見た。
「趣味を理解してくれる男性」の登場がもたらす、新しい刺激
Cさんは、小さな会社の総務部に勤務しており、趣味でイラストを描いてはSNSで投稿していた。
小さなコミュニティだったが、そこで反応してくれたのが今の「不倫の彼」であり、同じ街に住んでいることがわかり個人的に連絡を取るようになったそうだ。
「プロフィールに居住地を書いているので、最初から私が近いところに住んでいるのはわかっていたそうです。
それで親近感が湧いて、『イラストも素敵だな』と思ったって言われて、すごくうれしくて。
夫が私の趣味をあまり良く思っていなかったせいもありますけど……」
いわゆる“オタク”のような楽しみに没頭する妻は、夫から見れば気持ちのいいものではなかったのかもしれない。
それで何か言われることはなかったが、Cさんは
「嫌味を言われないように、家事も育児もちゃんとしてきました。
夫はゴミ捨てくらいしか家事はやらないし、手取りはほとんど同じなのに私ばかり不公平じゃないですか。
それで、絵を描くことだけは絶対にやめたくないと思ったんです」
Cさんは、空いた時間のすべてをイラストに費やした。
そんな気持ちで投稿するものに反応してくれる人がいることが、どれだけうれしいかは想像がつく。
「それで、何度もダイレクトメッセージでやり取りをして、会おうって話になったんですね。
私が既婚者っていうのはすぐに話していたし、彼も
『それなら旦那さんに誤解されないように』
って、最初の待ち合わせは土曜日の午後にしてくれたんです」
Cさんは当時を懐かしむように表情を緩めて話す。
「認めてもらえる」幸せが油断を誘う
土曜日は午前中だけの勤務だったCさんは、そのとき夫に
「お昼から友達とお茶をしてくる」
とだけ伝えていた。
夫は特に何も言わなかった。Cさんもまた、「人の多いカフェで話すことにしたし、一時間くらいで終わるだろうと」思っていた。
実際に顔を合わせた彼は
「想像どおりの人で、コミュニティの延長みたいな感じで会話もはずんで、はじめて会った気がしなかった」
そうで、Cさんはすぐに引き込まれた。
一時間くらいで、と思っていたのに、結局三時間まで延び、お礼を言って慌てて帰宅した。別れしなに交換したLINEに彼はすぐに連絡をくれて、Cさんの心は
「こう、自分の趣味を理解して褒めてもくれるって、すごくありがたかったんですよね。
夫に隠れてコソコソしている自分が、彼にとっては『すごい』『才能があって羨ましい』と感じてもらえることが、本当にうれしかった」
と、“はじめて趣味を認められて興奮する刺激”をはっきりと感じていた。
承認欲求が満たされる…二人の運命は動き始める。
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