まさか…不倫相手と夫、わかりきった「正解」を選べない妻の末路は

2021.02.23 LOVE

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

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【不倫の精算#19後編】

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人妻に有利な点なんて一つもない。そう、本当に一つも

Fさんから次に連絡があったとき、彼女は以前とすっかり変わって憔悴していた。

 

「うまくいってないの?」

まずそう尋ねたのは、やめたはずのタバコを吸いたがって外のテラス席を指定された驚きからだった。まだ寒さが強いテーブル席で背中を丸めて座る姿は、いらだちと焦燥と伝えてきた。

 

「違うの」

Fさんはまっさきに取り出したタバコに火を付けると、深く煙を吐き出しながら言った。

「あの人のことはね、まあいいのよ。

違うの、旦那とうまくいってないの」

 

こちらを見ないFさんの瞳に輝きは見当たらない。

 

タバコを2本吸う間に彼女から聞いたのは、外出の頻度が高いと夫に咎められたこと、誰と何処で過ごしているのか執拗に尋ねられたこと、夜中にこっそり話している相手は誰なのか問い詰められたことだった。

 

逃げる男、追う女。本当に最悪の不倫の幕引き

「たぶんね、浮気を疑っているのよ」

灰皿を遠ざけながらFさんはぽつりとつぶやく。

 

クリスマス以降、彼女は以前にも増して彼と過ごす時間を作っていたそうだ。

「会うのはやめようかな」

と言っていたはずなのに、実際は逆に約束を迫り、ホテルのフリータイムを延長してまで彼を引き止め、それまでは滅多になかった深夜の電話も増えていた。

 

「どうして……」

そうなったの、と喉まで出た言葉は、彼女の指先のささくれを目にして止まった。

それは、彼女のストレスを象徴するようにひときわ目立っていた。

なぜ夫に誠実であるという選択肢が浮かばない?

そんな妻の様子を夫が不審に思わないはずはなく、明らかにいる第三者の正体を知りたがって質問攻めにすることが増えたそうだ。

 

「今までも俺に嘘をついて会いに行っていたんじゃないか、って思っているのよね。

確かにそのとおりよ。

でも、旦那と喧嘩してからはあの人とは本当に会っていないの」

 

3本目を指で揺らしながら話すFさんの声に力はなく、「どうしてこうなったのか」に一番戸惑っているのは彼女のように見えた。

 

「……旦那さんとやり直したら?」

そのとき言えるのはこれだけだった。

 

二兎を追うものは何も得ない、わかるでしょ?

不倫相手に執着したところで、夫にバレてしまえばFさんも彼も相当のダメージを受ける。失うものばかりであり、その後で彼と新しく恋愛関係を築くのが想像以上に険しい道であることは、少し考えればわかることだった。

 

「……」

Fさんは指先でもてあそぶタバコを見つめたまま、黙っていた。

すぐにうなずけないのは、抵抗があるからだ。

 

わかっている、今のうちに不倫の彼とは縁を切るのが「正解」なのは知っている、それでも手放したくない。

その葛藤が、不倫の彼へ向ける愛情なのか、それとも険悪な空気となった夫への嫌悪感なのか、Fさん自身がわかりかねているのかもしれなかった。

 

こんな板挟みは長く続かない。

そう思って小さくため息をついた日から数カ月後の今日、ふたたびFさんから「会ってほしい」というLINEが届いた。

 

これが溺れた女の末路。まさかの選択は

「私ね、嘘をついたの」

Fさんの声は落ち着いていた。

 

目をそらさずこちらを見る表情からは緊張が伝わったが、何か大きな決意を抱えていることは、そびやかした肩ときつく組まれた指先でわかった。

 

「……嘘を?」

いつもの店、今日も外のテラス席で、だが彼女の指にタバコはない。

 

「あのね、旦那とは離婚するって」

え、と思わず顔が揺れた。

「か、彼に、あっちの人に、嘘をついたの?

夫と離婚するって?」

「うん。

それしかなくて。

やめられないの!」

 

最後、彼女は一瞬下を向いてきつい口調になった。

 

その選択がどれほど間違っているか、彼にも夫にもどれだけの迷惑をかけるか、そして何よりどれだけ彼女自身を不幸にするか、理解しているのだな、と思った。

「……そう」

言うことはない。

不倫の罪に目をつぶる自分を受け入れたのなら、外野が出る幕はない。

 

彼女の未来がどうなるのか、私には想像がつくけれど

黙ったままのこちらの気持ちが気になるのか、Fさんはそわそわと腕を動かした。

 

「悪いのはわかってる。

でも、何度考えても、別れられなくて」

「うん」

「あの人も、そう言ったら安心してくれたみたいで。

旦那ともちゃんとうまくやれているのよ」

「うん」

「ごめんね、いろいろと聞いてくれていたのに。

怒ってるよね」

「怒ってないよ」

淡々と返しながら、視界に映るFさんの顔に安堵の色が浮かぶのを確認していた。

 

怒ることではない。

その選択の結末は、彼女自身しか受け止める人はいないのが現実であり、外の世界にいる人間がいいか悪いかを決める必要はないのだ。

「その日」が来るまで、彼女は嘘をつき続ける。

結末の先にある未来がどうなるのか、誰にもわからない。

 

 

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