不倫がバレる?その瞬間、相手のオトコはどういう態度を取る?
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
前編はこちら【不倫の精算#23後編】
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ある日突然、母親がキレた。相手の妻ではなく、自分の母が
「ああもう、言うんじゃなかった!」
先日久しぶりにJさんから連絡をもらい、いつものカフェで待ち合わせしたとき、Jさんはテーブルに頬杖をついてだらしなく背中を丸めていた。
母親から出かけることについて愚痴を言われる日は多くなり、最初は機嫌をとろうとお菓子を買って帰ったりしていたJさんだったが、ストレスに耐えられなくなったそうだ。
「それで、ある日ついに
『いい加減にしてほしい。
私にもプライベートがあるから』
って、はっきり言ったのね。
そうしたら、母が
『じゃあどうして会っている人の話をしないの?
男性と会ってるなら、どうして紹介してくれないの?』
って、すごい剣幕で言うのよ。
ああそう思ってたんだなぁってわかったけど、でもさ、絶対に彼のことは言えないじゃん……」
電話でそう聞いたときは、
「心配するんだろうね、教えてほしいって思うのが親なんだろうね」
とすぐに返すことができた。
だが、彼女が抱える問題は、そこではなかった。
カレの反応で思い知ってしまった。本当にこの関係は「体だけ」だと
Jさんは、母親の干渉を不倫の彼に話したそうだ。
「それこそ、軽い愚痴って感じで言ったのよ。
母親がうるさいの、でも何とか言い訳してるって」
だが、彼の反応はJさんの予想とは正反対だった。
「何かいい手立てというか、違う会い方を考えてくれるかなって思っていたんだけど、違ったのよ。
『そういう面倒なことは持ち込まないでほしい』
って、それが最初の言葉だった。
それから、親の話は気が萎えるからしたくないとか監視されていないかとか、私の気持ちはまったくのスルー。
もう、呆然としちゃって……」
電話の向こうで、Jさんの声はわずかに震えていた。
共感してくれると思っていたのに、自分の話に明らかな嫌悪感を見せる彼に、はじめて“他人”を感じたことがありありと伝わった。
まるで私も、私の母親も、彼にとってはお荷物のよう。
じゃあ、何のために不倫を続けているの?
声にならないJさんの戸惑いに、
「あのさ、そんな人じゃもう、これからもうまくやっていけるとは思えないし……」
と言いかけた。
別れるなら今だ。素直にそう思った。
だが、こちらの言葉が言い終わる前に、Jさんは
「それはイヤよ!」
と叫んだ。
「相手の家庭の事情」を無視する男に、あなたが身も心も捧げる意味って?
電話ではちゃんと話せないからと会う約束をした今日、Jさんは虚ろな目で頬杖をつき、話すのも億劫そうに
「言わなければよかった」
を繰り返していた。
結婚はしなくてもいい、体の弱い母親のため、家族と過ごしたいから実家暮らしのままでいい、その気楽さをとうとうと語っていた以前とは、まるで違う重苦しさだった。
「はっきり言うけどさ」
意を決して、今日伝えるべき言葉を思い出す。
「不倫であっても、相手の家庭の事情を無視する男なんて、正直ろくなもんじゃないと思うよ。
だって、歩み寄る気はないんでしょ?
あなたのお母さんの不安を解消する方法とか、何も考えてくれないでしょ?
そんな男と関係を続けたって、あなただけが板挟みで苦しくなるだけだよ」
また遮るかと思ったが、Jさんは視線を外したままじっとその言葉を聞いていた。
「わかるよ、自分の母親のせいで関係が終わるって思うと納得いかないよ。
でも、私はね、これで相手の男の人間性が見えたっていうか」
「そうよね、そんな男よね」
力をこめたJさんの言葉が響き、息を呑むと同時にこちらを振り返る周りの人の視線を感じた。
不倫ならば「誠意」がなくてもいいのか。私の気持ちはどこへいくのか
「しょせん不倫だもん、鬱陶しいわよね、こんな身内の話。
でも、じゃあこれで終わりねって、何なのよ。私の気持ちはどうなるのよ」
まったくこちらを見ないまま、Jさんの言葉は続く。
「悔しいじゃない」
呪いのような低い声は、寄り添ってくれない彼でも関係の邪魔をする母親でもなく、「身動きの取れない自分」への怒りのように感じた。
彼女はわかっているのだ。
逆の立場なら、おそらく自分も彼と同じ気持ちになるだろうと。
湿っぽい家庭の現実を性の快感に持ち込むのは無粋だと。
関わりたくない、そっちで勝手にやってくれと。
それが不倫なのだと。
一口も飲んでいないアイスティーのグラスを映す彼女の瞳に、やっと光が入った。
「でも」
身を起こし、髪をなでつけて勢いよくマスクを外したJさんは、ストローに手をかける。
「これが、あなたの言う現実なのよね」
これから彼女が乗り越えないといけないものは多い。
不倫の彼との関係が「母親のせいで終わる」痛みと、明るい未来がすでに絶たれた彼への未練と、そしてこれからその事実を背負っていく自分と。
「……」
そのどれも、私には否定する材料はない。いっしょにため息をついた。
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