「騙される快楽」ねえ、どうして既婚男性ばかりを誘うの?
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
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何を考えてるの…?私をどうしたいのかがわからない
だが、彼との不倫はKさんの想像通りにはいかなかった。
「三ヶ月くらいそんな感じで会っていたのですが、そのうち連絡が来なくなって……。
私からLINEしても返信が遅かったり、会おうって言わなくなったり、彼の気持ちがわからなくなりました」
私のカラダが好きって言っていたのに……。
小声でそう続けたKさんからは、久しぶりにおぼれる男性の肉体と、求められる快感への未練が感じられた。
だが、こんなときに動けないのが不倫の現実で、
「彼の家も知らなければ奥さんについてもまったく情報がなかった」
と話す彼女は何もできないまま、気がつけばLINEをブロックされた。
アプリからも彼のプロフィールは消えていた。
「たぶん、アプリでも私をブロックしたんだなっていうのは、今はわかります」
口を歪めて笑っていた当時のKさんは、ショックを紛らわせるためにほかのマッチングアプリを使うようになった。
ショックのあまり不倫を繰り返す?それは言い訳でしょ
実のところ、その日Kさんから持ちかけられた
「マッチングアプリで出会った男性がまた既婚だった」
という相談は、もう4回目ほどじゃないかと思う。
最初の彼に音信不通にされる終わりを体験したにもかかわらず、Kさんはそれからも既婚男性との不倫をやめなかった。
取材でマッチングアプリや不倫についての話を聞かせてもらうたび、
「最初で懲りたのだから、もう既婚男性とはおかしな関係にはならないだろう」
と思っていたこちらの考えはことごとく外れ、彼女は明らかに嘘をついていると思われる男性ともやり取りを続けていた。
「また騙された」
「やっぱり男を見る目がない」
と言い訳のように繰り返すが、“あえて嘘つき男を探しているのではないか”と思うほどには、彼女は不倫相手を探す既婚男性の術中に簡単にはまりすぎていた。
「知っていれば寝ません」
ときっぱり言い切っていたのははじめだけで、そのうちに
「だってもう、不倫だし」
「仕方ないですよね」
と“寝たあとで”既婚と知ったと話す。
そうなると、
「本当にまともな独身男性と出会いたいのであれば、不倫もマッチングアプリもやめるしかない」
という言葉しかこちらは返せない。
だが、目の前に座るKさんからは、
「独身の男性と幸せな交際がしたくて」
という一番はじめに聞いたせりふは、もう出ないのだった。
どうして彼女はマッチングアプリで“嘘つき男”を探すのか?
いつ会っても、きちんとメイクされた顔によそ行きのファッション、手に持つバッグも人の目を意識して選んだとわかるようなセンスの良さを感じさせるKさん。
口角を上げた柔らかな表情で話す彼女が、「本気で探せばきっと関心を持ってくれる独身男性はいる」と思わせる彼女が、どうしてマッチングアプリを使った不倫を続けるのか。
「もう、アプリそのものをやめたらどうですか?」
また嘘をつかれた、と言われてやっと返したこの言葉に、彼女は
「でも、出会う場がなくなります」
とすぐに答えた。
あなたがそこで見つけるのは不倫相手を探す既婚男性ばかりでしょう、という返事を飲み込んで、
「あなたが出会いたいのはどんな男性なんですか?」
と尋ねた。
「そうですね……。
約束をきちんと守ってくれる、大人の男性がいいです。
あと、私が家業を手伝っていることを馬鹿にしない人」
Kさんは、まっすぐにこちらの目を見て答える。
「独身ですよね?」
間髪入れずにそう返したとき、Kさんの瞳が一瞬ぶれるのがわかったが、
「そうです、もちろん」
と答える声には力が入っていた。
あえて“嘘つき男”にアプリで引っかかるのは、彼女が「騙された側」なら安心だと思っているからだ。
一度嫌な思いをすれば、不倫は不毛な関係だと気がつけば、繰り返す気にはならないはず。
それでも既婚男性を遠ざけないのは、最初の彼のような人との出会いを待っているからだと、あの高揚感を捨てられていないからだと、彼女の動揺を見て確信した。
不倫でムダにするもの
その日、Kさんからは
「マッチングアプリでまた既婚者に騙された」
という話を聞いていたが、最初の彼との破たんを経験してからの彼女は、独身男性との出会い方やマッチングアプリで既婚男性を避ける方法など、本来の目的に戻る話はしなくなっていた。
それこそが、不倫の快楽とスリルにおぼれている証拠であり、何度「騙された側」を演じようと、不倫で抱え込むリスクは積み重なるばかりであり、彼女を幸せには決してしない。
「不倫なんて、バレたときに大問題になるし、時間のムダなんですよ」
視線を外してそう言うと、彼女も同じように目を下げてテーブルに置かれたカップに指をかけた。
「まともな出会いって、難しいですね……」
誰にともなくつぶやかれた彼女の言葉は、その現実をいまだ理解していないことがわかるような、空っぽの響きがあった。
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