口コミ8割で爆売れ中…?「ハンズフリーで使えるドライヤー」乾いてうるおうヒミツとは!【開発秘話#4】

こんにちは、よくいるタイプのアキバ系オタクことオトナサローネ編集部井一です。

 

開発や企画、設計やデザインなど「ものを作った側」の人々に、「なんでコレ作ったの?」とオタクが感涙しながらしつこくお聞きするシリーズ、今回はアデランスの黒いウニョウニョがついてる新ドライヤー「N-LED Sonic KAMIGA」です。

一度見たら二度と忘れられないビジュアル、超充実した機能。ですが、私が感涙したのは「このドライヤーには専用スタンドがついている」というところでした。「…なんでスタンドの話?」って思うでしょ、でもコレすごいんだから。

【開発秘話聞いちゃお!#4】

お話

株式会社アデランス 代表取締役社長 グループCEO 津村佳宏さん

同 ビューティ&ヘルス商品企画開発部 次長 寺岡剛さん

(文中敬称略)

 

髪の長い女性の声から編み出した「乾かし方」のヒミツ

 

 

--私は半年前、20年ぶりにドライヤーを買い替えました。ハンズフリーで使いたくていろいろ調べたのですが、ドライヤー市場にも収納市場にも「ドライヤーを固定して使うためのスタンド」をほぼ見つけられず、驚きました。

 

津村(代表取締役社長)・おっしゃるとおり、スタンド付きのドライヤーはほとんどなかったんです。スタンド、必要でしょう?

 

--カミガのあとを追うようにスタンドつきのドライヤーが登場しました。ほら、出てきたじゃん!やっぱり困っていたのは私だけじゃないじゃん!と思いました。なぜスタンドを作ったんですか?

 

津村・そもそも、このドライヤーは当初から髪の長い女性の意見をとことん調査し、美髪を求めて開発してきました。その背景で、髪が長いとドライヤーを持って乾かそうにも腕が疲れて大変だという声が挙がりました。ならば、ハンズフリーにすればいいのではないかと。

--ビューティモードというヘアケアモードも搭載されています。コロナ禍では時短よりも「同じ時間でより密度の高いケアができる」かが気になります。

 

津村・同様の声をいただきました。ですが、このスタンドは社内では賛否両論でした。

 

たかがスタンドと思うでしょう? でも、いざ作るとなると金型も材料も別途必要で、思ったよりもずいぶんコストがかかります。

 

台だけでなく、カミガは基礎研究、開発、材料すべてに相当なコストをかけたので、予定よりもプライスの高いドライヤーになりました。とはいえ、正直これでも厳しい値付けです。

 

ありがたいことに売れ行きもよいのですが、こだわりの品なので生産に時間がかかり、在庫が追いつくかどうかハラハラしています。

 

--スタンドのおかげで8歳の娘が一人で髪を乾かせるようになりました。一定温度を保ってくれるセンシングドライモードとスタンドは最強の組み合わせだなと思います。

 

津村・お子様にハンズフリーニーズがあったことは発売後の反響で気づきました。

 

センシングドライモードは、髪を傷めにくいように髪表面の温度をドライヤーの距離で温度調節して風を出すモードが搭載されています。

 

カミガ愛用者のお母様からは、「うちの子はもう自分でドライヤーできるんです!」と喜びの声をいただきました。

 

これまで時間をかけてお子様の髪を乾かしておられたご家庭からは、「子どもが自分で乾かすので、家事がすごく楽になりました」という声もいただいています。よかったです、開発者冥利に尽きます。

 

--スタンドのデザインも、ありそうでない、丸みを帯びた形状です。

津村・これは美しさにこだわりました。コードが外から見えないように収納したかったんです。

 

洗面台にドライヤーを出しておくと、出たままのコードの広がりが気になりますよね。まとめて隠したいので、スタンド内側を空洞にして収納できるようにしました。ドライヤーの高さもちょうどよくなるように設計しています。何より、洗面台に置いたとき全体のシルエットがキマるように気を使いました。

 

かなりのパターンで試作して、何度も何度もやりなおして、このスタンドも約2年かけてようやく形になりました。

 

印象的なアタッチメントたちは、単体でも商品として成立する性能

--アタッチメントも一度見たら忘れられません。黒い指のようなタイプはとりわけ特徴的です。この形状には意味がありますね?

津村・カミガハンドと呼ぶアタッチメントですね。私は働きながら通信教育で、理容師の免許を取得しましたが、カミガハンドは理容師、美容師がハンドマッサージをする時の両手を再現しているんです。しかも人の指より多く、12本で(笑)。

 

スライドさせたり、バウンドさせたり、生え際から引き上げるように使うのもおすすめです。このカミガハンドも抗菌加工、素材、形状、質感、気持ちよさを考えた強度感など、いろいろな葛藤を経て現在の形状に落ち着きました。

 

--ドライヤーなのに、ノズルと、もう一つ、かっさもついているんですね。

津村・このカミガかっさは弾力と形状、長さが違うシリコンピンです。KAMIGAモードというLEDもオンになるモードで、生え際や頭頂部を集中して刺激すると気持ちいいですよ。スカルプエッセンスをつけたあとにオススメです。

 

このかっさはアデランスとシャープ株式会社の共同開発で生まれた、カミガにしかないかっさです。手前味噌になりますが、これだけでも美容機器として発売すれば相当価値のあるアイテムだと自信を持っています。

 

そもそもどうしてアデランスがドライヤーを作ったの?「皮膚の健康」とは

同社 グループB&H戦略統括部 執行役員 田中均さん

--このドライヤーはアデランスにとってシャープ株式会社と共同開発をしたドライヤーの2代目です。そもそも、なぜドライヤーの開発を始めたんですか?

 

津村・アデランスは2018年に創業50周年を迎えた際、改めて「髪の健康には皮膚の健康が重要」だと確認し、トータルウェルネスカンパニーという目標を掲げました。ウィッグのイメージが強い会社ですが、実は北米や欧州、アジアなど世界20の国と地域にも展開する、毛髪事業を中心に美容と健康、医療を推進するメーカー。約7000人の社員で運営しております。

 

--医療分野も研究しているのですね。具体的にはどういう内容なのでしょうか?

津村・例えば、アメリカではボズレーというクリニックを展開して、毛髪再生や植毛技術などの様々な研究を積み上げています。また、国内でも大阪大学、東京大学などと産学共同研究を進め、LEDと頭皮、毛髪環境の関連性を見出しています。LEDは、最近では女性向け美顔器によく応用されていますよね。

 

--ドライヤーそのものの基礎研究もあるのでしょうか?

津村・ドライヤーは2017年にヘルスケア事業の一環としてスタートしました。2016年にはシャープ株式会社がプラズマクラスターを髪や肌に応用する研究結果を第三者機関から発表したタイミングでした。それを聞いて私はすぐにアポを取り、八尾のシャープ株式会社の本社に行きました。

 

寺岡(ビューティ&ヘルス商品企画開発部)・本当にすぐ行きましたね。

 

*プラズマクラスター、Plasmaclusterはシャープ株式会社の登録商標です。

会議を重ねて「いいところ」を爆速で引き出した

同社 B&H商品企画開発部 次長 寺岡剛さん

--全体的に、開発がクイックな印象です。その秘密があるのでしょうか?

津村・シャープ株式会社の技術力とアデランスの基礎研究を合わせた唯一無二のドライヤーを作りたいんだ!と熱く語ったところ、シャープ株式会社もぜひということで、ドライヤーの共同開発プロジェクトが始まりました。アデランスはプロである理美容師向けのBtoBの市場にも強いんです。

寺岡・今でこそテレビ会議は普通になりましたが、我々は2017年から大阪・八尾と東京・新宿をつないで月に3回、4回と会議をしていました。その甲斐あって商品開発は素早く進み、2017年に第1弾を販売できました。それがシャープ株式会社独自技術のプラズマクラスターを搭載した初代ドライヤーです。

 

--初代も宇宙戦艦みたいなシルエットで、一度見たら忘れられません。

左 B&H商品企画開発部 西本愛さん、右 B&H商品企画開発部 森下由野さん。中央に置かれているのが流線型ボディの初代。さらに、よく見ると、手前のスタンドには「NG」の付箋が貼られている。多数ある、ボツになった試作品の1つ。

津村・流線型が特徴で、イタリアの高級車の流れるようなボディをイメージしています。色はアデランスのコーポレートカラーの赤をメインに、三色で発売しました。初代はプロの理美容師にヒアリングをして意見を多く取り入れたので、一般の人には使いづらい部分もあったかもしれません。その声を反映させたのが2代目のカミガです。

 

--初代にも赤色LEDが搭載されていましたが、カミガではさらに青色LEDが追加され、カラフルになりました。

津村・初代から共通の、アデランスが研究してきた波長630nmの赤色LED、N-LED beam®に加えて、カミガは青色LEDも追加しました。どちらも理容美容のプロに愛用者がいるため、コードはプロでも使いやすいよう2.5mと長めです。

 

早く乾いて美しい髪をキープするため、ドライヤーに必要なことって?

カミガハンドは当初、このようなモックで検討された。よく見るとアタッチメントの取り付け方が完成した製品とは違う。

--社長自ら毎日ツイッターで反響をチェックしているそうですが、商品の評判はいかがですか?

津村・96%が満足したとの評価で、圧倒的に好評です。「早く乾く上に、ボリューム感が出る」という感想もいただいています。理由は2つ、乾かし方とプラズマクラスターです。まず、乾かし方で初代に比べ時短を実現。シャープ株式会社の特許であるドレープフロー技術なのですが、2つの吹出口から風が包み込むように吹いて、髪をドレープ状に巻き込んで中のほうから乾かします。

 

--ドライヤーでの乾かし方が髪そのものの美しさに影響を与えるのですか?

同社 グループCSR広報室 室長 新田香子さん。毛先が真後ろへ飛ばず、横へふわっと広がっているところがわかる。

津村・はい。普通のドライヤーだと風は中央から一直線に肌に当たりますが、ドレープフローでは左右の吹出口から包むように風が出ます。髪が長い女性にはこの仕様がいいと考えています。また、初代から搭載されているプラズマクラスターは更に性能がアップし、カミガでは静電気を約96%低減します。髪のうるおい効果も約8時間キープします。美しい髪のためには静電気を抑えること、うるおいを保つことはとても重要です。さらに、素早く乾かすことが大切です。

--静電気というのがまた意外です。約96%というのがピンとこないのですが、どのくらい静電気を抑えるのでしょう?

寺岡(ビューティ&ヘルス商品企画開発部)・同じ部署の森下と一緒にデモンストレーションをお見せします。

髪に見立てたサンプルをこすって、静電気を発生させます。

これ、特に冬場の髪にはよくある状態ですよね。セーターを脱いだあとに髪がこうなったりします。

この静電気を帯びたサンプルに、カミガからの風を当ててみると……。

スッとこの通り。静電気が低減されました。

--ドライヤーの風で髪がこすれて静電気が起きやすそうなものですが、逆なんですね。プラズマクラスターの効果でしょうか?

寺岡・はい、静電気測定器で具体的に数字を計測するとよりよくわかります。

 

これは静電気を帯電させたエボナイトの棒に、他社のドライヤーの風を当てている際の測定値。25.2という数字が見えますでしょうか。風が当たる前から25.2のまま変化ありません。

同じエボナイトの棒にカミガの風を当てました。最初は上記と同様に25前後でしたが、測定値はみるみる下がり、今回はゼロになりました。

 

--今回はドライヤーのスタンドのお話を伺いたいと依頼を差し上げたのですが、まさか社長が直接開発していたとは。驚きました。

 

津村・私はものづくりには最後まで関わりますし、ロゴやネーミングも私が直接ラフを起こしてデザイナーに渡しています。毎朝お風呂に入るのですが、お風呂ってひらめきますよね。出たらすぐにノートに書き留めます。カミガは「美髪の神様だ」というひらめきです。こうしてコストカットしつつ、スピーディに開発をしているんです。私たち開発者は欲張りで、これもあれもあったほうがいいと盛り込んでしまうのですが(笑)。

 

--50周年から3年経過し、さまざまな分野でアデランスのトータルヘアソリューションが展開されています。

 

津村・アデランスは毛髪の専門集団です。たとえば病気と戦う女性のため、抗がん剤での脱毛をカバーする医療用ウィッグの開発にも力を入れています。また、抗がん剤を使う前に頭皮のスキンケアとして取り入れてもらうローションなども商品化しています。髪の健康は皮膚の健康であり、身体の健康です。これからも開発に邁進していきます。

 

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