オペで主治医ががんを取り残し(汗)!そのときかけた言葉とは?~セルフレジリエンスのすすめ②~
前回の記事では、皆さんにもこの先やってくるかもしれない「がん」と「介護」を乗り越えるポイント5つのうちの2つ、
- がんになった自分を責めるな(前進せよ)
- 自分だけで解決しようとするな(エリート街道を行け)
をお伝えしました。
前回記事はコチラ▶50代独身・がんと介護が一気にやってきた(泣)!~セルフレジリエンスのすすめ①~
今回、皆さんにお伝えしたいポイントは、
3.医師はチームメンバー(プロジェクトリーダーは私)
です。
私のがんを治すプロジェクトを成功させる秘訣
これ、どういうことかと言いますと、皆さんにもおなじみの「プロジェクト」の考え方をがん治療に当てはめて考える。すると、とてもわかりやすい。
このことに私自身、再発してから気づいたのです。遅いですね(笑)。
どんな人も、医師は偉い人、尊敬するのが当たり前、と思いますよね。もちろん基本はそうです。
でも、その気持ちが過剰になってしまう患者さんが実に多い。
それだけ医師に期待していることの現れでもありますが、それが自分の心を委縮させ、診察の時に本心を話せなくなる。
何を申し上げたいかというと、医師には必要以上に気を遣って、その結果、意思疎通が不十分になってはいけない。治療は、あくまでも患者である自分が主体で当事者。医師が主体ではありません。
がんと診断されたばかりの患者さんと話すと、「先生が話を聞いてくれない」「私の気持ちをわかってくれない」など、医師への不満を持つ患者さんがとても多い。私も当初はそうでした。
でも、「医師は、私のがんを治すプロジェクトチームのメンバーだ」と考えたら、治療がうまくいき始めました。
そして、プロジェクトを成功させるには、私たち患者の努力も必要なのだということに気がついたのです。
主治医は技術者、数字を使って報告する
ここでいうチームメンバーとは、私の場合は、
- 主治医(外科医)
- 副主治医(腫瘍内科医):薬物療法の専門家。内科医ですから手術はしません。
- 形成外科医:胸にシリコンを入れてくれた外科医です。
- 東洋医学医:副作用対策で付いてもらいました。漢方の専門家です。
- 放射線科医
- 化学療法室の看護師:抗がん治療専門です。
- 薬剤師
- 近所のかかりつけ医:いつでも飛び込める。
このメンバーの中で「主治医」を「技術者」の位置づけにするとわかりやすいのですが、技術者に正確な判断をしてもらうためにはデータが必要です。
私は、血液検査のデータとは別に、気分や体調のアップダウンをメモしておいて伝えていました。主治医はそれで判断しますから、これはやっておくとよい方法です。
たとえば自分の体調を10段階で評価すると、化学療法を受けて、翌日は平気だったけれど、2日目に体が重くなってきてレベル10からいきなり4まで落ちた。7日目にはだいたい6まで上がってきた、とか。
前回の受診から、どんな変化があったかを数字を使って話す。
主治医はそれを聞いて、「それなら許容範囲内」だとか、「長引いていておかしいから薬の量を減らそう」、あるいは「ストップしよう」と判断するわけです。
電子カルテにも入力しますから、私のデータはどんどん蓄積されていきます。
電子カルテはあとからの検索も楽だし、病院内では情報共有もリアルタイムですから、現時点での私の状態がチームメンバーにいきわたります。
近所のかかりつけ医には定期的に報告をして、データをすべて持って行きました。
がん患者が医療者の体調を気遣う?
もうひとつ大事なのはコミュニケーション。
主治医や他のチームメンバーと信頼関係を築く=「仲良くなる」ために、忙しい皆さんの体調を気遣うことから始めました。
本来なら患者である私が気遣われるのが普通ですが、あえて治療に関わるメンバーを気遣う。
「先生こそお疲れさまです」「風邪がはやってるけれど体調は大丈夫?」など。
プライベートに立ち入った質問はしませんが、そんな言葉をかけているうちに、あちらからも話してくれるようになります。
「私じゃなくて子供が熱を出しちゃったんだよね」とか。たとえ短い時間でも、そうやって個人的なことを話したり聞いたりすることで絆が深まっていきました。
それに、「自分はこうなっているんだけど、他の患者さんはどうなんですか?」とよく聞きました。
そうすれば それぞれのメンバーが他の患者さんとどう接しているのかわかりますし、参考になることを教えてもらえます。
再発が判明し、主治医が落ち込む
さてここで、私と主治医とのエピソードをお話しします。
初発のがん治療がひととおり終わり、経過観察になってすぐに、切り取ったはずの左胸の奥に違和感がありました。そう、再発に自分で気づいたのですが、その検査の時、主治医の部下が「あっ! これ、取り残しだ!」と言ったのです。
オペで主治医ががんを取り残した、という意味ですね。これには、まだ元気だった父も仕事仲間もひどく怒りました。
「その医者のミスだ!」「すぐに病院を変えたほうがいい!」と。
その気持ちはよくわかりましたが、私は主治医を変えませんでした。彼のひどく落ち込んだ姿を見たからです。
彼は、医者がかかりたい名医に選ばれるほどの、名医中の名医ですが、その彼が、私の再発検査の結果を見て、みるみる目を真っ赤にして険しい顔になり「オオホさん、すみません」と謝った。
私はそんな主治医の姿を見て「先生を救わなきゃ。私しか救えない!」と瞬間的に決意したのです(笑)
今まで見たこともない、打ちひしがれた姿。
「私は先生を見捨てない」「先生に対する信頼はこうなっても揺るがない」そんな決心を見せるために、その週に開催された主治医の乳がんセミナーに出席して最前列に座り、「先生、がんばって下さい!」と声をかけ、誰よりも大きな拍手をしました。
でも先生が私を見る表情は硬く 「オオホさん、これから最善の治療を皆で考えます」と何度も言われました。
もう以前のように笑いながら話すことは無理なのかもしれない、と思うほど険しかった。
再発がんを取り除くオペが終わった時、付き添ってくれた友人に切除したがんを見せて「今度は確実に取りました」と報告したそうです。
セカンドオピニオンを求めて…
退院してからまた化学療法が始まり、その間ずっとニコニコ対応している私を見て、主治医がようやく笑ってくれるようになりました。
正直、時間がかかった。
そこまできて私は初めて、別の病院の医師に第2の意見(セカンドオピニオン)を求めました。
その医師の見立ては、「主治医の治療方針がベストだ」ということ。そう告げられた時、なぜか泣けて泣けて仕方がありませんでした。
この一連の出来事は、看護師や薬剤師など、他のチームメンバーにも伝えました。
皆さんあの名医が患者に頭を下げたことに感動していましたし、セカンドオピニオンの結果にも満足してくれました。
結果的に、チームの結束力が高まったわけですね(笑)
これは私のケースですが、どうしても主治医との関係がうまくいかない、とことん相性が悪いということもあります。これもまず他のメンバーに相談してみること。
場合によってはメンバーを入れ替える勇気も必要です。あくまでも自分が主体者ですから。
また主治医の診断や治療に不安がある時には、遠慮せずにセカンドオピニオンを利用して下さい。私は自分の治療に確信を持つために行きました(笑)
セカンドオピニオン(がん情報サービス)https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/second_opinion.html
オトナサローネの読者の皆さん、もしもの時のために、
私のがんを治すプロジェクトでは「医師はチームメンバー、プロジェクトリーダーは私」
このことばを覚えておいて下さい。
次の話▶がん、介護、そして避けられない「お金の問題」。~セルフレジリエンスのすすめ③~(9/1配信予定)
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