周囲は「がん闘病者に何と声をかけていいか」わからない【大穂その井#11】

52歳で突如としてがんが見つかり、同時に親の介護も担うこととなった大穂その井さん。ご自身の体験を話してくれました。好評の内容を再配信します。

このシリーズの全話リスト

みんなお前を心配している。だから敢えて笑い飛ばすぞ

この雑誌を送ってくれた大物実業家とは、

私のボス平松庚三さん

ホリエモンが逮捕されたライブドア事件のあと、社長に就任した平松庚三さん。

私が最も敬愛する「ボス」です。

 

世界的企業のCEOを経験し、ライブドア後はITベンチャーを立ち上げ、ハーレーを乗り回し、セスナも機関車も運転する。そして今は、Virginの宇宙旅行の出発に向けて準備をしています。

 

世界中に部下を持つスーパーCEO。

ボスは抗がん治療で髪が抜けた私を「タコ坊主のねえちゃん」と呼びました。

「いいか、みんなの前でそう呼ぶぞ」

「みんな、お前を心配してる。だからその頭を笑い飛ばすぞ」と、真剣なまなざしで言いました。

 

これで一気に気が楽になった私は、「タコ坊主」と呼ばれるたびにゲラゲラ笑い、そんな私を見た仲間もゲラゲラ笑ってくれました。

おかげで、オフィスに行くのが楽しかった。

 

ボスと商談に出かける前、

「いいか、クライアントから心配されたら、治療で髪の毛をなくしたけどシャンプーが2滴ですむようになった、と言って笑うんだぞ」

また真剣なまなざしでそう言いました。

 

 

ボスの予想どおり、取引先の皆さんは

「だいじょうぶですか?」と心配そうに声を掛けてきた。

 

 

私はすかさず、

「シャンプーは2滴ですむし、顔を洗うついでに頭も洗えるんです。まつ毛も無いからマスカラも減らないので便利になりました」

そう笑顔で答えました。

 

 

皆さん、「そうなんですか?」とびっくり。

髪の毛が後退しつつある取引先の男性は、「いつかまた生えてくるんだよね? 僕から見たらうらやましいよ」
と言って、笑って下さいました。

 

 

ボスも笑ったけど、私が一番笑った。

→取引先にあとから教えてもらったのですが、「本当は、すごく弱々しくてなんて声をかけていいかわからなかった」そう。

あちゃ(汗)

 

最大の恐怖から自分を救う

こんなふうにして自分の心も周囲の人の心もほぐしていきながら、仕事と抗がん治療の両立ができている、そう思っていたら、翌年、全摘した左胸に局所再発しました。

一番恐れていた再発。

また同じ治療が始まる。

また髪の毛が抜ける。

 

「でも1回経験したから何が起きるかわかる。だから怖くない」

「大丈夫」

そう自分に言い聞かせて、再びがんの摘出手術を受け、また強烈な抗がん治療を受け始めました。

2回目はものの見事にツルツルに。

 

でも、もうみんな「タコ坊主のねえちゃん」と笑ってくれなくなった。

なぜなら「再発=もうおしまい」、って思われちゃったから。

その上、治療で使った薬の副作用がひどくてオフィスに出勤できなくなりました。

仲間と過ごすことができなくなり、ゲラゲラ笑えなくなった。

 

 

そこで思い出したのが、あの雑誌のこと。

あのキャスターみたいに写真を撮ってみよう。

最悪の状態を笑顔で撮って、自分で元気になろう、自分を救おう。

そう思い、カメラマンに撮影してもらいました。

キャスターと同じ、白いシャツにピアス。

完全にマネっこ(笑)

 

 

この写真を、介護前でまだ元気だった両親や、親しい友人に見せたら「いいね」と言ってくれたので、自分の誕生日に恐る恐るfacebookに出してみました。

健康な皆さんはどう思うんだろう?と、恐る恐る。

 

 

つづき>>>がん再発の恐怖を「自分で乗り越える」ための荒療治だったが…

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