ロシア人「テレビはウクライナが悪いと言い続けている」恐るべき洗脳の正体
私はツイッターを経由して「アニメ・ゲーム好きが大好きなロシア人・ウクライナ人の一群」との接点を持っています。超親日家と言える彼らからは、ある点で一般的なロシア・ウクライナ人よりも客観的に自国を見る傾向を感じます。
このうちロシア人からは常日頃から「どうにもならない政局への諦め」「世代交代が進まない無力感」「そもそもの国に対する期待の低さ」などを受け取り続けてきました。
引き続き、モスクワ在住のロシア人男性から、続く日々とこの侵攻への思いを聞きました。
*この記事は可能な限り迅速に現状をお伝えするため、専門家による査読を経ていません。また、特定の思想や立場に対する意見、表現が公平ではない可能性もあります。趣旨ご理解の上お読みください。
ロシアが世界から弾かれるにつれ、愛国プロパガンダが激化した
――改めて、簡単に自己紹介をお願いします。
モスクワに住む30代独身男性プログラマー、現在はリモートワーク中です。日本のアニメやゲーム、音楽が大好きで、仲間たちと何度も日本を旅行しています。秋葉原でアニソン専門のクラブに行ったり、気志團のフェスに参加したり、大阪で食い倒れもしました。もとは黒海に近いロシア南部の出身です。
――いまモスクワはどんな感じですか? 食料はあるの?
銀行やATMはいまは正常に動いてます。バックアップシステムが作動したみたい。食料の不足もないね。なぜかというと、みんなコロナが始まったときのように食料や必需品を買いだめしているからです。
かわりにテレビのプロパガンダが頭おかしいレベルになりました。もうね、本気で北朝鮮みたいに聞こえる。
――プロパガンダ? どんな?
愛国プロパガンダ。ウクライナ侵攻が始まった当初は「ウクライナが先に攻撃してきた」「我々はNATOの核の脅威からロシアを守らなければならない」でした。
ぼくの母は最初これを信じてましたが、ぼくの必死の説得でいまは信じていません。ですが、テレビしか情報源のない60代以上の層は引き続きテレビを完全に信じています。
ここ数日はもっと悪化していて、「ウクライナをナチスから解放しろ」「アメリカは我々を爆撃するつもりだった。空爆の予防は必要だった」って言ってます。
ぼくのようにロシアから逃げ出そうとする人も急増しているため、「こうした裏切り者の売国奴たちが二度とロシアの土を踏めないようにしなければならない」なんて意見も流れてきます。
ロシア人はこのプロパガンダから「逃れられない」。周到に仕掛けられた罠とは
――ロシア全国民で見ると、どのくらいの割合がこのプロパガンダを信じてるんでしょう?
難しい問題です。いまは戦争反対と口にしただけで懲役5年があり得るので、みんな何を思っているのかを口外しません。万が一のことがあるから家族にも話さないかもしれない。
ぼくの体感ですが、30~40%のロシア人はプーチンを完全に信じています。いっぽう、同数くらいの、30~40%はプーチンを憎んでいる、または信じていない。残りの人たちは、面倒ごとに巻き込まれないよう敢えて意見を持たないようにしている。こんな感じでしょうか。
――西側から見ると、プーチンを信じるというマインドが不思議です。
これは仕方ない部分もある。なぜなら、プーチンは長い年月をかけて自分に対抗する意見をブロックしたからです。多くのロシア人は情報源がテレビしかないうえ、ネットにつながることができても野党はじめ反政権の意見は削除されています。エコーチャンバー状態の愛国メッセージしか受け取れないんです。
かろうじてTV-Rain(ドチシ、2010年設立)やEcho of Moscow(ラジオ局)などの独立系メディアもありましたが、どちらも3月1日までにバンされました。
――とはいえ、大抵のロシア人には親戚なり友人なりにウクライナ人がいるんですよね?
そう。少なくとも友人はいます。なので、プロパガンダを信じている人たちって、内心では現実と向き合うことを恐れているんじゃないかな。うすうす、本当は俺たちが悪いんじゃないか、これは本当は侵略なんじゃないかと感じていて、いわば認知不協和を起こしている。
WW2後、ロシアのスタンスは「戦争は悪である。我々は二度とあのような過ちを起こさない」でした。なのでプーチンはこの侵攻を、特別作戦 special operation、平和維持活動 peacemaker operation と呼んでいます。絶対に戦争とは言わないんです。
つづく>>>ごく一般的なロシア市民が思う「この戦争を終わらせる方法」とは…それはほぼ無理ゲーに近い
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