コロナ後遺症に悩む人に「この処方」が福音となるポジティブな理由とは
コロナ罹患後、数か月たっても倦怠感が残り、体調が本調子に戻らない。そればかりか、頭にもやがかかったようなブレインフォグの状態が続く、咳が取れない、起き上がるのがしんどいなど、症状の終わりが見えない。そんな「コロナ後遺症」の訴えが増えているそうです。
「コロナ後遺症は確定診断が難しく、治療法も見出しにくいため、医師も手探りの状態です」。そう語る新見正則医院・新見正則先生と、漢方治療に詳しい+kampo(プラス漢方)の代表薬剤師・笹森有起先生にお話しを伺いました。
前編『コロナ後遺症、医師が警鐘を鳴らす「長い倦怠感」。感染した覚えがなくても「あり得る」理由とは』に続く後編です。
治療法が確立されない中、漢方への注目が集まっています
――コロナ後遺症には現在どのような治療法があるのでしょうか?
保険治療では「Bスポット療法」という、上咽頭へ塩化亜鉛などを塗布・擦過する方法しかありません。ただ、Bスポット療法もどういう方なら効果が出るのか条件が確定しておらず、やってみないと効くかどうかがわかりません。そんな中、ぼくは漢方エキス製剤での治療に手ごたえを感じています。もともと「モダン・カンポウ」という西洋医のためのフローチャートで判定していく漢方エキス製剤治療のメソッドを確立しているので、コロナ後遺症への漢方治療の普及を始めています。
10月13日には緊急で『フローチャートコロナ後遺症漢方薬 あなたも今日から診療できる!』(3,190円/新興医学出版社)(アマゾンはこちらから)という書籍を出版します。タイトル通りに医師向けの書籍ですが、一般読者の方でも自分の症状に合わせて理解できる内容にしてありますから、ご自分で当てはまる症状を探して、薬局店頭で売られているOTC漢方薬のうち「満量処方」とあるものを買い求めてもいいと思います。
――決定的な治療法がない中、先生は治療をどのように進めているのでしょうか?
病状が悪くなっていく原因の一つにどうやら不安感がありそうです。あまりに辛いので本人がいろいろネットを検索するのですが、ALSなどの怖い病気を見つけてしまい、「先生、私死ぬんでしょうか」と恐怖感を持ってしまう。このため、現在のところコロナ後遺症で死んだ人はいないよ、唯一あるのが心を病んで自死してしまった人だけだよ、だからまずは心を健やかに保とうね、いずれ治るから大丈夫だよと励ましつつ、漢方を処方しています。
――具体的に漢方の処方はどのくらいのバリエから選べるのでしょうか?
まず、中心的な処方が2つ。コロナ病後、気力がない人には補中益気湯。気力をアップする漢方です。ぼくのイチオシは加味帰脾湯で、補中益気湯のココロに効くバージョン。このほか、筋力の低下があるならば人参栄養湯、微熱が続く場合は柴胡桂枝湯、のどの痛みもあるならば葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏。うつっぽく、気持ちが昂る場合は、抑肝散化陳皮半夏。味覚障害なら麦門冬湯、嗅覚障害なら当帰芍薬散。月経不順ならば当帰芍薬散、月経不順かつ体力がない場合は当帰建中湯。脱毛なら柴胡加竜骨牡蛎湯という具合です。
漢方は選択肢がたくさんあるので、1か月投与してみて奏功しなければ次へと切り替えていけます。専門外来にかかっても、現状では検査で異常が出ないならば結局は家でゆっくり身体を休めてくださいねという話になってしまいますから、副作用の出にくい漢方での治療は理にかなっています。
――そもそも、コロナ後遺症かなと思った場合、どの診療科へ向かえばいいのでしょう?呼吸器?耳鼻科?内科?
まず、お近くにコロナ後遺症外来があるかどうかを調べてください。自治体が対応医院のリストを作成している場合もあります。まだ模索中の分野なので、治療に意欲的な先生をきちんと探してから行かないと、つれない対応でたらいまわしにされてしまいます。医師の側もどうしていいのか対処法がわからないので、親切にしてあげたくても方法がないのです。
コロナ後遺症を診る先生が近くにいない場合、ブレインフォグや倦怠感は精神科や心療内科、神経科の得意領域です。お近くのクリニックに電話をかけて、コロナ後遺症の倦怠感を診察していますか?と聞いてみてください。なお、ブレインフォグの状態ですぐ疲れてしまう、ちょっとうつっぽい方には、ぼくは加味帰脾湯がイチ押しです。ゆっくりと1年くらいかけて元気が出てくるイメージで飲んでください。
オンラインの遠隔診療に対応する保険診療の漢方医院もあります。たとえばぼくは出雲漢方クリニックという漢方専門医院をオススメしています。全国どこからでも、自宅から保険でオンライン診療を受けられますし、処方も宅配してもらえて、びっくりするくらいに便利です。
オンライン漢方薬局の立場からのコロナ後遺症も「手ごたえあり」
――+kampo(プラス漢方)の笹森先生に伺います。+kampo(プラス漢方)は薬剤師と相談しながらOTC漢方薬を月額料金(何を飲んでも8000円)で受け取るサブスクサービスですが、コロナ後遺症の患者さんは増えていますか?
もともと更年期世代の女性のお客様が多いのですが、やはりこの第7波以降はコロナ後遺症と推察できるケースが急増しています。+kampo(プラス漢方)は薬剤師が毎週問診を行い、そのときの体調に応じた漢方薬をお送りするサービスなので、どのような体調不良が出ているのかがリアルタイムでわかるのですが、「コロナに罹患、自宅療養期間が終わったけれど何だか調子が悪いんです。治りきっていないか、再感染しているんじゃないかと思うんです」というような声がぐんと増えました。
――コロナ後遺症の症状が見られる場合、どのような漢方をセレクトしていますか?
倦怠感を訴える方には元気を補うための漢方、補中益気湯。また、嗅覚障害を訴える方には当帰芍薬散をお勧めしています。
50歳、未閉経で軽い更年期症状を持つ女性の例をご紹介しましょう。もともとの主訴が疲れやすさと重だるさで、病院に通うほどには強い症状もないため、加味逍遙散をお送りしていましたが、7月末にコロナに感染。病後の8月8日に相談の上で加味逍遙散から補中益気湯へ切り替えました。
8月18日の時点ではまだ倦怠感がありましたが、25日には軽くなったというお返事をいただきました。その後新しいユーザーさんをご紹介くださっていますから、手ごたえをお感じなのだと思います。プラス漢方では1か月だけ、2か月だけというような切り替え方ができますので、調子が戻ったら元の加味逍遙散に戻します。
他にも、「コロナ後遺症は情報がなく、どこを受診すればいいかがわからなくて困っていたが、毎週の問診の中で漢方で対処できることがわかってよかった」という声をいただきました。
Long COVID(コロナ罹患後症状)やPost COVIDなど予期せぬ挙動をとる感染が報告されています。特にPost COVIDは一度は回復したあと、数か月後にまた症状が出ることがあります。患者さんたちもいま自分がどのような状態なのかがわからないまま、この症状はよくなっていくのか、ずっとこのままなのかと不安な気持ちをずっと持ち続けています。
漢方は大きな副作用もないため、リスクを負うことなく試すことができます。不安がある場合は大きな心の支えになると感じる例でした。
pluskampo株式会社 代表薬剤師 笹森有起先生
青森県出身。東北医科薬科大学を卒業し薬剤師免許を取得。調剤薬局での勤務を6年経験。薬剤師として働く中で漢方薬に出会い、自身の自然治癒力を最大限に引き出し、結果として症状が緩和する漢方薬の効果や考え方、哲学に感銘を受け、フリーランス薬剤師を経て起業。
■+kampo(プラス漢方)+kampoブランドサイト:https://www.pluskampo.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/pluskampo/
Twitter:https://twitter.com/pluskampo
■「+kampo」について
お客様の健康のお悩みに寄り添いながら、
新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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