最後の最後でコロナに感染してみてわかった「本当に用意しておくべきだったもの」【医師・薬剤師にも聞いた】
こんにちは、オトナサローネ編集部井一です。突然ですが、感染症法上の5類への変更ギリギリのタイミングとなる4月中旬、滑り込みのような時期に新型コロナウイルスに罹患しました。
この3年間、私は結構な数のコロナワクチン接種体験記やコロナ罹患体験記、コロナ対策記事を手掛けてきました。その締めくくりのように、最後の最後に罹患することとなったのも何かのご縁かなと感じます。GW明けにはもう5類となるこの感染症に「最後に罹患してわかったこと」を、新見正則医院・新見正則先生、出雲漢方クリニック・宮本信宏先生、プラス漢方・笹森有起先生の解説とともにお伝えします。
結果的には「ちょっと長く続くインフルエンザのようなもの」だった
まずは経緯の説明です。私はワクチン4回接種済み、最後の接種は9月でした。
一般的な市中感染と少し状況が違うのは、私は4月上旬に成田発着で海外出張に出ていた点。感染経路が海外か国内かは判明していませんが、月曜夕方に成田帰着、翌火曜朝の時点でのどに違和感を覚えました。このため火曜は念のため外に出ず、在宅勤務に変更しました。
水曜の朝7時には咳が強まり、「普通の風邪ではないな」と抗原検査キットで確認したところ、コロナ陽性。とはいえ、この段階では咳以外の症状はなく、普通に仕事を始めようとしました。すると上司がピシャリと「ダメ!休みなさい!命令!」。あとから聞いたところ、上司は夏に罹患した際、かかりはじめに身体を休めず無理をしてしまったせいか、かなり長く後遺症状のせきに悩まされたのだそうでした。
この上司の予期は完全に正解でした。エー大丈夫なのにと思いつつPCの電源を落とした直後、10時ごろから「坂を転げ落ちるように」症状が激化。たった30分で36.4度から38.1度まで熱が急激に上がり、咳が絶え間なく襲うようになりました。喉も激しく痛み、マヌカハニー飴をずっとなめ続けないと呼吸も苦しい状態。すぐに強い頭痛にも見舞われ始めました。
気力を振り絞って「東京都陽性者登録センター」で陽性の登録をしようとするのですが、もう発症してしまっているとダメですね、どうやら私は電話番号を正しく入力できなかったようで、結局は東京都の健康観察システム「My HER-SYS(マイハーシス)」に登録ができないまま終わりました。ただし、食料品やパルスオキシメーター貸し出しの申し込みはうまくいったようで、どちらも3日目に届きました。
まず、用意しておくべき漢方薬は「麻黄湯」「葛根湯」
発熱外来を受診しなくてもよかったの?と思うかもしれませんが、抗原検査キットで陽性者登録ができましたし(5月8日以降は登録も不要になります)、それ以前に「とてもじゃないが起き上がって自分の身体を動かせる状態ではない」。宿泊療養に出かけた人たちは、こんなにひどい身体状態で頑張って移動したんだな、えらいなと感じてしまいました。ここから8日間は家族に移さないように気を付けて自宅内隔離です。
かねてから漢方医でもある新見正則医師、漢方薬剤師の笹森有起先生に「汗が出るまでは『麻黄湯』、汗が出始めたら『柴胡桂枝湯』または『小柴胡湯加桔梗石膏』」と教えていただいており、家には市販の『麻黄湯』のストックがあります。なので、1日目の発熱から『麻黄湯』(3/4量のもの)を服用スタート。2日目、汗は出ないのですが、熱はピークを過ぎた実感があったため『葛根湯』に切り替えました。
この点を記事執筆時点で確認したところ、「定石は汗が出るまで『麻黄湯』、汗が出たあとは柴胡剤です。ただ、汗が出たあとでも、麻黄剤の『葛根湯』でもいいですよ」と新見先生。
「咳」「のどの痛み」も対策を持っておくべき!医師と薬剤師のレコメンドは…
さて、咳・のどの痛みは漢方の得意分野でもあり、選択肢が多彩です。逆に売り場でPOPを見ながらだと選べないくらい。私は『桔梗湯』と『麦門冬湯』を用意していましたが、なぜか咳のスタンダード漢方である『麦門冬湯』を買ったことを忘れており、『桔梗湯』のみで頑張りました。
ツムラのブランドサイトでは『桔梗湯』は「のどが痛み、ときにせきが出る方に」、『麦門冬湯』は「コンコンしたからぜきの方に」。新見正則先生の書籍『フローチャート コロナ後遺症と漢方薬』でもまったく同じく、「のどの痛み」に『桔梗湯』、「乾いた咳」に『麦門冬湯』がファーストチョイスと解説されています。
新型コロナ、あるいはインフルエンザも視野に、のどの強い痛みと激しい咳に襲われる感染症に備えるには、どのような漢方薬を用意しておけばよかったのでしょうか? 先生がたに判断を伺ってみます。
まず、新見先生は…?
「ぼくは前述の通り、汗が出るまで『麻黄湯』、汗が出たら次に柴胡剤である『柴胡桂枝湯』や『小柴胡湯加桔梗石膏』に切り替えます。後者は『小柴胡湯』に去痰・排膿作用の『桔梗』、冷ます作用のある『石膏』を加えたもので、強い咳と痰を伴う感染症にはこちらをチョイスします。さらに熱のピークのあとにも強い咳が続く際の併用に『麻杏甘石湯』を用意しておくといいでしょう」(新見先生)
一方の笹森先生は…?
「漢方専門薬剤師の立場からは、新型コロナも基本的な風邪やインフルエンザと同様の対策と考えていただき、普段自分が飲み慣れていて手応えを感じているものがあればそれでよいと思います。
感染症の初期に使える『麻黄湯』をまず用意、もし見つからない場合は手に入りやすい『葛根湯』でもOKです。どちらもおかしいなと思った時点で早めに飲むことがポイントです。
のどからくる風邪の対策として、OTCで手に入りやすい『銀翹散(ぎんぎょうさん)』も役に立ちます。『銀翹散』は風邪の症状が出はじめた時にすぐさま服用するのがポイント。寒気がある場合は『葛根湯』、のどが痛い場合は『銀翹散』と使い分けるイメージです。ポイントは「水」で服用すること。また、口に含みゆっくりとのどを通すとのどの痛みにも効果的です。
体力の回復という点で『補中益気湯』も備えておけば、病後の回復期に気力体力を補い後遺症の予防も可能になります。『麻黄湯』『葛根湯』が含む麻黄の成分を気にする人もいますが、和漢の場合はそもそもの含有量が少ないので過剰に心配しないで大丈夫です」
(笹森先生)
そしてやっぱり、解熱鎮痛剤は潤沢にストックを持っておくべし
ですが2日め、あまりにも長く深く続く咳に体力を取られすぎて困憊してしまい、「このままでは、あれだけ対策を教わったにもかかわらず後遺症を残してしまう」とロキソニンを使用。結果的にこれが正解で、まず頭痛が軽減、続いて徐々にのどの痛みも取れ、おかげさまで後遺症状を残さず全快しました。
よくよく考えたら別に初日にロキソニンを飲んでもよかったんですよね。ワクチン接種の副反応の際も薬を飲まずに症状のヤマを見ようと頑張ってしまいましたが、この「薬に腰が引ける」のは日本人の悪いクセ。厚労省の解説(こちらから)でも風邪薬、解熱鎮痛剤、咳止めなどの使用は可となっていますので、キリっと効く解熱鎮痛剤は常にストックしておき、要所要所で素早く使うべしと思いました。ただし、解熱鎮痛剤は連用で何かしらの副作用が出る場合が多いため、急性期が過ぎたらあとは漢方で何とかしていくのがきっと正解。
【経過】
0日目 火曜 朝からのどの違和感、若干咳が出たため、終日在宅。念のため家庭内隔離開始
1日目 水曜 朝36.1 昼38.1 夜38.0 10時頃から急激に熱が上がる。頭痛がすごい。「麻黄湯」+「桔梗湯」
2日目 木曜 朝37.7 昼37.6 夜37.1 「葛根湯」+「桔梗湯」 咳と頭痛に耐えられず16時ロキソニンを服用
3日目 金曜 朝36.9 昼37.1 夜37.1 咳とのどの痛みが強いため20時ロキソニン服用 夕方出雲クリニック受診
東京都の配食、パルスオキシメーターが届く 家族の隔離解除
4日目 土曜 朝36.3 昼36.8 夜36.7 前日のロキソニンでのどの痛みがとれ、咳が止まって楽になった
5日目 日曜 朝36.1 昼36.9 夜36.5 ほぼ終息したものの、まだ熱が若干上下し、体内にウイルスがいる感覚がある 出雲クリニックの漢方薬届く
6日目 月曜 朝36.1 昼36.4 夜36.3 咳がやや残ったが熱は下がった。まだだれかに移す感覚がある。希さんからお見舞いが届いて嬉しい
7日目 火曜 朝36.4 昼36.3 夜36.4 軽い咳以外の症状は完全に消えた
8日目 水曜 すべて平熱 療養解除
前編では新型コロナ急性期の経過と、専門家2名の漢方投薬の所見を解説しました。続く後編では呼吸器が専門分野である漢方医師の所見も解説、「ストックしておくならどんな漢方薬か」を検討します。
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