吉田兼好『徒然草』から読み解く、本当に有益な「時間の使い方」。毒舌歌人に学ぶ「型にはまらない」自由な人生とは?
出世も修業もがんばらない。自由人としての生き方を極めた吉田兼好
「この世に生まれたからには、こうなりたいという願いはあるもの」
兼好は『徒然草』第1段にこう書いています。「ありたき事は、まことしき文の道、作文・和歌・管絃の道」、さらに有職故実(古来の作法)で人の手本になれたら言うことはないと続きます。
私たちは「願い」というと、お金とか出世とか健康とか、どうしても自分や家族の利益になることを最初に考えがちです。ところが兼好は、文学・芸能、古来からの作法で人の手本になりたいというのです。おそらく70年以上生きたであろう兼好の人生は、世間的な成功者ではないものの、「風変わりな文化人」として周囲からの尊敬を集め続けたものだったろうと想像できます。
世間が決めた常識に合わせるような生き方を、兼好は徹底して嫌いました。
「ここまで人をディスるか!?」というほど、激しい言葉で他人を罵倒している文章も『徒然草』には散見されます。今でいうと、辛口コメントをSNSで発信する文化人でしょうか。こうした文章を書けるのも、常識の外に「居場所」を見つけた兼好ならではといえるでしょう。
その上で兼好は、「世捨て人」であることで、高貴な人物たちとも身分や政治的立場を超えた交流を愉しみました。まさに何ものにも「振り回されない」ことそのものを人生の目標にした、究極の自由人だったのです。
宮仕えを辞めて世捨て人になり、出家をしても仏道修行に振り回されるのを嫌った吉田兼好。
出世も修業もがんばらず、型にはまらない生き方に徹したからこそ、日本三大随筆(ほかに『枕草子』『方丈記』)のひとつである『徒然草』の作者として、後世にまで大きな影響を与えたのです。本人の「ありたき事」が叶い、令和のいまも名が残っていると知ったら、辛口な兼好もニヤリとするかもしれませんね。
『読むとなんだかラクになる がんばらなかった逆偉人伝 日本史編』加来耕三・監修、ねこまき・画 1,540円(10%税込)/主婦の友社
逃げる(桂小五郎)、泣きつく(足利尊氏)、人まかせ(徳川家綱)、スルーする(和泉式部)、世間を気にしない(前田慶次)、投げ出す(上杉謙信)、がまんしない(坂本龍馬)、こだわらない(徳川家康)、嫌われ上等(石田三成)、日常生活を放棄(葛飾北斎)、趣味に生きる(徳川慶喜)、本業やる気なし(足利義政)…など、いろいろなパターンの「がんばらなさ」を発揮した25人を収録。
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