受験生をかかえる家庭が不安に思う「ワクチン接種」と「感染症対策」この冬に気をつけるべきこととは?
現在、全国的に「定点当たりの患者報告数」が「流行発生警報」の開始値である定点あたり30を越えています。これから日本の冬は「入試」という「人生で絶対に欠席してはいけない大舞台」を迎えます。
この「普段と違う冬」の心構えを、免疫の専門医である新見正則医院院長・新見正則先生に伺いました。
前編『インフルエンザが大流行中。「この冬の感染症」受験を控える家庭が知っておくべきことは?』に続く後編です。新型コロナワクチン7回目は打つべきなのでしょうか? インフルエンザワクチンは?
――インフルエンザにせよ、新型コロナにせよ、ワクチン接種をどうするか、みなさん本当に迷っています。
インフルエンザワクチンはぼくから言わせると「ダサい」、極めて冴えたワクチンであるジェンナーの種痘から比べれば精彩を欠くワクチンです。かわりに大した悪さもしないので、副作用がよほど強い人以外は打ってもいいでしょう。
でもコロナワクチンはどうでしょうね、本当に副反応が重たいので、あの副作用に見合う防御があるかどうかで個々人が考えたらいいのではと思います。
ぼくは外科、免疫のほか漢方にも精通するトリプルメジャー医で、漢方で身体のバランスをとる方法を会得しています。コロナは自分で実験したかったので、ワクチン接種は3回目までにしました。マスクも公的に必要のある場面以外では使わず、かわりにバランスよく食べ、寝て、ストレスをなくし、免疫力を保つ努力をしています。
本音をいうと、ぼくは自分の免疫を利用しながら上手に感染したいのです。免疫の専門家として目指しているのは「感染したが発症しない」「発症せず感染し続ける」ブースター感染の状態です。免疫力がじゅうぶんであればそうなります。
――この、コロナ後に感染症がはびこる状態を、専門家のみなさんは想定なさっていたのでしょうか?
こうなることもあるだろうとは思っていましたが、必ずこうなるとも思っていない、予想の中の範囲の一つです。推論が間違ってはいなかったのですが、しかし確実にどうなるかはわからなかった。
ですから、どの局面でも政治判断が必要かつ重要なのです。日本はその政治判断の結果、移動の制限を最後まで維持する方針をとりました。あとから言えることは、オミクロン株になった時点で国をオープンにしておけば、経済的打撃はもう少し軽かっただろうということです。そのかわり死者数は極めて低く抑えました。
仮にもう一度コロナのような感染症が世界でパンデミックを起こしたとしても、まったく同じ経緯をたどるかはわかりません。同じようにだんだん弱毒化するか、それとも一気に強毒化するか。だからこそ責任を持った政治判断は毎回とても重要なのです。仮に次回があったとして、再び医師や感染症専門家などの個人に国の進退を任せるのは酷というものです。我々は病気の専門家ではありますが、政治運用の専門家ではありません。
これから受験のご家庭が12月に「しておくべきこと」とは?
――これから受験を迎えるご家庭に、この12月末に行うべき感染症対策はありますか?
いちばん大事なのは、少々休んだって問題ないくらい勉強しておくことです(笑)。でも、お母さま方は気が気ではないですよね。ワクチンを接種する場合、インフルエンザもコロナも1か月後が免疫のピークになりますから、2月上旬の受験であればいま12月の末に打つのはよいでしょう。
また、もしこの12月末に何かに罹患した場合、お子さんを叱ることなく、「いまかかるのがベストタイミングだった」と気持ちを切り替えてください。何しろ実際にかかることがいちばんのワクチンです。
月並みなようですが、免疫力を保つ努力は必須です。受験生本人だけでなく、家族全員で気をつけられるといいですね。早寝早起き、健康的な食事、適度な運動、ストレスオフ。
受験生本人はどうしても勉強に集中して運動に気が回りませんから、この冬休みから、たとえば早起きしてウォーキング1日30分に家族が付き合うなどもいいのではないかと思います。ラジオ体操もいいですね。
――すでにコロナやインフルエンザに感染した経験のある人も、もう一度ワクチンを接種すべきですか?
罹患歴があってもワクチン接種は可ですから、たとえば9月に罹患した人が12月にワクチンを打っても問題はありません。ただ、コロナは実際に罹患したなら最強の免疫を獲得しているので、あの強い副反応を考えたら、ぼくならワクチンは不要と判断します。インフルエンザは別の型もあるので微妙なところで、そもそもワクチンに大した副作用もないので打っておくほうが安心でしょうね。
今年はインフルエンザの流行が早かったため、10月にすぐ接種したまじめな人も多いと思います。ですがインフルエンザもコロナもワクチンの効力は3か月と考えられているので、国立大学後期日程が念頭にある場合はガード期間が足りない可能性もあります。12月末にもう一度追加してもいいかもしれません。
メジャーな感染症、例えば今年もRS、手足口病、アデノイドと、いろいろなものが過去に例のない大流行をしていますが、いずれも自然に収まるんです。コロナも「指数関数的に広まります」と言われましたが実際はそうならず、どの波も自然に収まりました。RSウイルスなんてワクチンもないのに自然に収まるんです。もっといえばスペイン風邪だって、ワクチンもなにもない時代に3年で収まりました。
人類はウイルスと免疫について、まだほぼ何も理解していないのだということを突き付けられる3年でした。私たち専門家はより一層研究を深めていきますが、いっぽうで市民のみなさんも現在の人類にとって感染症とはそのような「まったく感染しないことはできない」隣り合わせの存在なのだと理解して、自分の免疫を高める努力を続け、じょうずに付き合っていってほしいと願います。
■お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』はAmazonで三冠(東洋医学、整形外科、臨床外科)獲得。最新刊は『しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通』。
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