イケメン上司と、秘密の場所で…。不倫に飛び込んだ女性の末路は【エリート銀行員たちの不倫事情】前編
銀行特有のバレンタイン事情。反撃開始へ
銀行では新入行員が、店に届いた郵便物の仕訳をします。
そして、それらを宛先の人のデスクまで持っていくのです。
「銀行に届く郵便物は外部郵便だけではありません。銀行の本部や他の部署からやってくる、内部郵便(通称・行内メール)もあります」
当時、新入行員だった和枝さんも、その仕事を任されていました。
「バレンタインの日には多くのチョコが、行内メールで行き交います。茶封筒に入れられていて、中が何なのか見ることはできませんが、それが書類でないことくらい分かります」
あの日は既婚者の次長に、女性の名前の差出人から何個も分厚い封筒が届いていました。
かすかに嬉しそうな顔をする次長を見て「大人って汚いな」と思っていました。
夕方の仕分けの時間、彼女は同期からある茶封筒を渡されました。
彼女は見覚えのない差出人の名前に、眉をひそめます。
「人違いじゃない?」と同期に言うと「分からないけど、苗字が同じだから」と、困惑した顔で返されました。
「新入行員にとって、郵便物の仕訳は嫌な業務のうちの1つなんです。他にも雑用がたくさんあるので。同期の『早くこの封筒を手放したい』という気持ちが伝わってきて、とりあえず受け取りました。」
開けてみると、それはバレンタインのチョコでした。送り先は、他店の亮さん(仮名・現在は45歳)です。何かの間違いだろう。そう思い、電話帳で彼の内線番号を調べて、内線をかけました。
「あー、ごめんね!」と、電話口で彼は心から謝ってくれました。電話帳で見た印象と同じ、真面目で誠実そうな、それでいて爽やかな声をしています。
「俺が送ろうとしてた人は、結婚して違う苗字になっちゃったみたいだ。前の苗字が君と同じだったんだよ」
和枝さんは、心が苦しくなりました。相手は結婚して、苗字が変わったことも知らされていないのに、バレンタインを送るなんて……。電話からは彼の「もうそれ、捨てちゃっていいよ」という声が聞こえてきます。気がつくと和枝さんは、こう口に出していました。
「これ、私が食べてもいいですか?必ずお礼はします」
彼は驚いたのか、少し沈黙しました。そして言いました。
「良いけど、なんだか悪いな。ご飯でも行く?」
「それはちょっと。彼氏がいるので」
その「彼氏」が、現在の夫でした。後に美容機器メーカーで働き、身だしなみにうるさい割に心の気遣いができず、セックスレスとなる夫です。
過去のあの日。ホワイトデーの当日、和枝さんはお礼にと亮さんに行内メールを送りました。
しかし、宛先不明で戻ってきました。彼は海外赴任の辞令が出て、アメリカへ行ってしまっていたのです。
「あれから、18年が経ちますが、今でも思うんですよね。もしあそこで彼の誘いに乗っていたら、私も今頃は海外にいたのかな。こんな生活してなかったのかなって」
ハイセンスなパジャマに袖を通す夫を見ながら、彼女はあることを決意しました。そうして、夫に渡そうとしていたチョコを、通勤用のカバンに詰めたのです。
翌朝、バレンタイン当日。彼女は出勤するや否や、電話帳で亮さんの名前を叩きました。彼はアメリカから帰ってきて、都内の大店で次長として働いているようでした。
和枝さんは、行内メールにチョコを詰めて、朝一番の便で送りました。都内の店なら当日に送っても、夕方には届きます。
そして18時過ぎ。バレンタイン当日だからか、オフィスに人はまばらです。
彼女は亮さんからの連絡を待っていましたが、残念なことにその気配はありませんでした。
しかし18時半を過ぎて帰ろうとした時…。一通のメールが届きました。
それは彼からでした。
▶18年越しのバレンタイン。そして急展開