40代を前にわが子を諦めた夫婦。二人の愛は変わらない「と思っていたのは俺だけでした」
昨年末、25年ぶり実施の『性機能障害の全国実態調査に関する報告』が発表されました。年齢別EDの有病率はなんと50歳以上で41.7%。また、性交頻度が1カ月に1回未満(1カ月間に1度も性交がない)を「セックスレス」としたところ、全体の70.4%が該当しました。
つまり、日本は少子高齢化と同時に、恐るべきレス社会に突入していたのです。これは人口問題そのものであり、我々は少子化どころか無子化社会を生きていると言えます。
これらの社会課題を男性側の視点で捉え、執筆を続けるライター・山下あつおみ氏が、レスを抱えた夫婦問題についてレポートします。
【無子社会を考える#6】前編
妻が39歳のとき、子どもを「持たない」決断をした。それから2人の距離が開き始めた
「妻とは妊活をやめてから次第にレスになり、今では肉体関係を求めることはなくなっていました」
このように語ってくれたのは東京都在住のシンイチさん(44歳・会社員)さんです。シンイチさんの家庭は共働きの妻(45歳)とのDINKs夫婦。結婚してから13年が経ち、今では完全にレスだといいます。結婚当初はお互いに子供を望んでおり、妊活をしていた時期があったものの、子どもには恵まれなかったそうです。その後、今から6年前に自分たちの意思で子どもを産まない決断をして、2人で人生を歩むことを決めたそうです。
そこから夫婦の関係は少しずつ変化していきました。なぜなら、シンイチさんも妻も仕事に打ち込むようになり、お互い趣味の時間を費やすことが増えたので、それまでのライフスタイルが徐々に変わっていったからです。2人の生活は安定していましたが、いつの間にかセックスレスという新たな課題が生じていました。
「妻は自分の気持ちを表に出すタイプではないので、レス気味でも最初は気にならなかったんです。むしろ仕事が充実しているのかなと思っていました。でも時間が経つにつれて、妻との距離感が変わってきたような気がして。なんでしょうね、言葉では説明できないのですが、2人の距離感が遠くなった、というよりむしろ変わった。それが感覚的にはしっくりきます」
シンイチさんは言葉を選びながら話してくれました。結婚生活において、レスは決して珍しいことではありません。しかし、それが夫婦関係にどのような影響を及ぼすのかは、夫婦それぞれで異なるものです。
シンイチさんたちの場合、夫婦で子どもを産まない選択をしたことで、徐々にお互いの関係性が変わっていったようです。レスになる以前は身体的な親密さが愛情を育む一つの要素でしたが、それがなくなったことに気づいたとき、どこか感情的なつながりも希薄になってしまったことを実感したといいます。
「とはいえ、その時も妻とはまだ愛し合っていると思っていたし、焦っていた訳ではありません。ただ何か人生で大切なものが欠けている感じがしたんです。レスが原因なのか、他に要因があるのか、あるいは両方なのか。その時は自分自身ハッキリと分かりませんでした」
このようにシンイチさんは続けました。つまり、レスは単に身体的な関係だけでなく、夫婦の心のつながりが変化したことによる結果であるとシンイチさんは考えたようです。
共有できるものが減っていったのならば、他の手段で増やせばいい。二人の取り組みは
そこでシンイチさんは、妻との関係を改善するために、自分たちのコミュニケーション方法を見直すことにしました。
「些細なことなんですけどね、夫婦で共有する情報を増やそうと思いました。たとえばカレンダーアプリを共有するとか。仕事の時間、習い事などの趣味の時間、休日、お互いの予定がお互いで分かるようにしたんです」
シンイチさんはお互いの日常を共有することから始め、夫婦の会話を増やすことを心がけたといいます。また、過去の楽しかった思い出を振り返ることで、かつての愛情を思い出し、新たな愛情を育むきっかけを作ろうとしました。
またシンイチさんはある日、過去の写真を見返すことで、妻との思い出を再発見しました。
「久しぶりに昔の写真を見ていると、妻との楽しかった思い出がよみがえってきて。なんだか、もう一度、出会った頃のような新鮮な気持ちを取り戻したいと思うようになりました」
知らず知らずのうちに、お互いが空気のようになりつつある日常を生きていたことに気づいたというシンイチさん。ところが、この後に意外な展開が待っていました。
前編ではシンイチさん夫婦がお互いの距離を再確認し、再出発を切るまでをお話いただきました。続く後編では、その後二人が直面した課題とその乗り越え方を伺います。
つづき>>>ふと手にした妻の携帯に「信じ難いメッセージ」が。地獄に突き落とされた夫の「意外なアクション」とは