別れた不倫相手と、職場で再会して…。アラフォー女性の取った行動は(後編)
その不倫相手が、仕事に与える影響は
「その人がメンバーにいることが、あんたの仕事にどう影響するんだい」
と言っても、日向子は黙ったままだった。おそらく、「仕事の人格」という言葉から現実を客観的に考えようと頭を回転させているのだ。
「過去はもう仕方ないよ、変えられないでしょ。それはお互いさまよね、向こうだって知られたら相当まずいリスクがあって、自分の仕事に影響させるほど馬鹿じゃないと信じたいよ」
日向子を励ます意図ではなく、これが客観視した現実だった。いい年をした社会人でしかも結婚している男が、過去の不倫相手が取引先に登場したとして大騒ぎするだろうか。見栄もプライドも人並みにある男ほど、こんな事態に遭遇しても素知らぬ顔で自分のやるべきことに集中するはずだった。
「そうだね……」
日向子の声は小さくなる。動揺して騒いでいるのは自分のほうで、相手がどうかはどこまでも想像でしかない。その状態に、気付いたのかもしれなかった。
「お互いさまだよね」
「うん」
力強くうなずくと、日向子はふうと息を吐いた。過去が今の自分にどう影響しようと、背負うしかないのだ。
「知らん顔して図面出してればいいじゃん」
と言うと、やっと日向子がふふっと笑った。
「うん、あの女がこれを引いたのかってびっくりするかもしれないけど」
事務員と伝えていた自分の「本性」を知られることは、日向子にとって臆する事態ではなかった。これが日向子の本来の姿なのだから。
「結婚している男って、こんなにずるいのかと思う」彼女の本音は 次ページ
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