まさか、うちの子が「不登校」に! 家でも学校でもない 「子どもの居場所」は作れる⁉
文部科学省の調査によると、不登校の小学生は2023年度でおよそ10万5,000人。社会の多様化について様々なことが模索されている昨今、不登校についても一人ひとりに合わせた対処が必要になっています。
今回は、不登校を選んだ子どもたちと向き合い、新たな居場所づくりに取り組む「みらいゲート秋葉原」のスタッフの皆さんにお話を伺いました。
子どもだけでなく、親も苦しんでいる
不登校者数が過去最大を更新し続けるなか、子どもたちの生きづらさにスポットが当たるのは当然かもしれません。ただ、私たちは親御さんとの交流を通じて、保護者が抱える課題にも日々直面します。そのひとつが「仕事」への影響です。
ある機関の調査では、子どもの不登校をきっかけとして7割の保護者が「仕事に影響が出た」と答え、収入が減った家庭は4割にも上ります。さらに、5人に1人が実際に仕事を辞めています。
在宅に切り替えて仕事を続ける例も増えていますが、それだけですべての問題解決にはつながりません。お子さんと向き合う時間が増える分、仕事に集中できる時間は減り、友人との交流も我慢するようになり、お子さんよりも親御さんがストレスを感じることも多いようです。また、家族間での意見が食い違うこともあるかもしれません。
不登校は本人だけでなく、家族みんなで取り組んでいく課題と言えるでしょう。
不登校の親は仕事を辞めるべき?
子どもが不登校になると、「仕事を辞めて子どもと一緒に過ごした方がいいのでしょうか?」と相談いただく例はたくさんあります。家に一人でいることで「学校での辛いことを思い出してしまうのでは?」と考えるのでしょう。
親が仕事を辞めようと考えるのは、「子どもが心配だから」という想いによるものです。ただ、お子さん自身が仕事を辞めて一緒にいてほしいと望んでいるとは限りません。
実際に不登校の子どもたちの声を聴くと「できれば仕事を辞めないでほしい」という答えが多くを占めます。
不登校になる理由は様々です。ただ、忘れないでほしいのは、目の前の状況は“いま時点の姿”であり、この先も同じ状態が続いていくとは限らないのです。
子どもたちは悩み考え込んでいる親の姿を見て、こう思っているはずです。
「自分のことを思ってくれて嬉しいけれど、仕事に迷惑をかけてごめんなさい」「自分のせいで無理をし過ぎてほしくない」。
親への感謝の気持ちと同時に「自分のせいで」という罪悪感が湧き出てくるのです。
また、本人にとっては家にいることで安定を図り、自分のペースをつかんでいこうと考えている場合もあります。親が仕事を辞めた場合、干渉しすぎることでバランスが崩れたり、家計への心配が別のストレスにつながる可能性もあります。「もっと自分のことを信じてほしかった」と感じる子もいるでしょう。
つまり、「辞める」という選択肢ではなく、まずは仕事を続けながらでも不登校の問題に対応できる方法を考えることが必要なのです。
なお、不登校に対応する機関としては、次のようなところが挙げられます。
- 自治体の相談窓口(各教育委員会、適応指導教室)
- 不登校支援団体
- フリースクール
- クリニック(小児科、児童精神科)やカウンセラー
大切なお子さんを思っての決断だからこそ、柔軟性をもって考え、専門の機関に相談することを忘れないでほしいと思います。
学校ではない「居場所」。ほかの子どもと交流もできる
「居場所は見つけてあげたいけれど、学校というコミュニティに戻らなくなるのではないか」という不安を相談に来る方もいます。
自分が仕事をしているときに、子どもが家に一人でいるのは不安だと思います。そんな時は、家でも学校でもない『第三の居場所(サードプレイス)』を利用しましょう。
家に一人でいるよりは、外に出たほうが気分転換にもなるはずですし、他の子どもたちとの交流を行うことで、その先の人生への心構えもできるはずです。
一般的には、フリースクールや自治体が運営する適応指導教室などが、サードプレイスの代表格といえるでしょう。
ここではフリースクールを取り上げますが、学校のようにきっちり決まった時間割や校則はなく、一緒に好きな趣味の話をしたり、適度に体を動かしたり、自主的に勉強したり、たまにはゲームをしたりと、家や学校では体験できないことができます。対面での利用に抵抗感があるようでしたら、オンライン形態のスクールもあります。
【実例紹介】心地よい集団生活がもたらす効果
学校に行きたくなくなった理由のひとつに「集団やコミュニケーションが苦手」を挙げることも多くあります。小人数であってもフリースクールで同じ境遇の子どもたちと過ごすことは、コミュニケーションを図る練習が自分のペースででき、社会での生きる力にも繋がるはずです。
サードプレイスとしてのフリースクールをうまく活用できれば、同じ境遇の仲間がいることを実感できたり、自分の好きなこと、得意なことが見つけられるかもしれません。
これまでみらいゲート秋葉原にてたくさんの子どもたちを見てきましたが、「今日は楽しかったな」「また○○さんに会いたいな」「何か他のことにもチャレンジしてみよう」「学校にも行ってみようかな」。そんな前向きな気持ちを持てるようになって、学校や社会に出ていく姿は、私たちにとっても何よりの励みになります。
それに伴い、保護者自身の不安や心配事も減少していくはずです。
ここで、実際にフリースクールに通い、自分らしさを取り戻した例をご紹介したいと思います。
【実例1】学校にうまく馴染めず、小3のはじめから不登校になった
専門の支援機関に通う中で、フリースクールを紹介してもらい、見学&体験を経て入会に至りました。
普段は家にこもりがちで、運動もほとんどできていなかったのですが、通っているフリースクールは、子どもに居心地の良さを感じさせてくれると同時に、様々な体験(運動系、伝承遊び、ボードゲーム等々)を通じて根気強く練習を続けてできることが増え、表情も明るく自信に満ちた笑顔が多く見られるようになりました。
今では、月曜~金曜まで学校に通えるようになりましたが、心が疲れた時には学校が終わった15時からでも「フリースクールに行きたい!」と言っています。(小5保護者)
【実例2】小1から行き渋りが始まり、小3の3月から完全に学校に行かなくなった
元々勉強は好きで習い事もやっていたのですが、3年生の頃にはエネルギーが切れてしまい、家に引きこもった状態でした。1時間以上かけてフリースクールに通い始めると、一時期やめていたピアノをもの凄く練習するようになり、フリースクールの友だちや先生たちに聞かせたいと言って楽しそうに練習しています。以前はよく「死にたい」と言ってくることが多かったのですが、今はもうそんなことはありません。ある時遊びに行ったディスに―ランドで「お土産を買いたい!」と言ったのですが、フリースクールの先生向けだったのには驚くと同時にとても嬉しくなりました。(小3保護者)
家族と、社会と、みんなで取り組むことが大切
私たちは、親御さんとの対話の中で、「私たちが伴走者になりますので、一緒に子育てを楽しんでいきませんか?」とお伝えするようにしています。一人で抱え込むことはお子さんにとっても親御さんにとってもつらいものです。
お子さんは親のことをとてもよく見ています。自分が原因で苦しんでいる姿を見たくはないはずです。そのためには保護者自身が生活を楽しんでいることを見せることも大切です。子どもたちはお父さんお母さんが大好きなんです。だからこそ幸せそうな顔が見たいのではないでしょうか。
そして、子どもはちょっとしたきっかけで大きく変わります。どんな場所でもいいので、小さな成功体験の積み重ねが自信につながるはずです。私たちは、初めてお会いしてから日々明るくなっていく子どもたちを活動の中で目の当たりにしています。自分から発信することが増え、表情が豊かになる。入会当時とは別人のように明るくなった子もいます。
些細なことでも気になることがあれば、お気軽にご相談にいらしてください。みらいゲート秋葉原が、お子さんにとっても、親御さんにとっても、思いを打ち明けられる場になればと願っています。
●お話をお伺いしたのは…
みらいゲート秋葉原
https://nursery.cocofump.co.jp/miraigate/
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