最高値を更新する東証、あなたの新NISAは大丈夫?元ファンドマネジャーがそっと指摘する「乗り遅れている人」とは#2
24年年頭にスタートした新NISA制度。「オルカン」「S&P500」という言葉はすでにおなじみとなりました。しかし、「よくわからないなりに何とか始めました」という人だけでなく、「始めないといけないのはわかっているけれどどうしていいのかわからない」という人もまだまだいるでしょう。
「オルカン積んでるから俺はOK」と考えている人に、元ファンドマネジャーの澤田信之さんから「それが危険な場合もある」と確認事項が。さっそくご説明いただきましょう。
【元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」】#2
(この記事は7本シリーズの2本め/1/2/3/4/5/6/7)
算数が苦手でもこれだけは。資産運用には必ず踏まえておくべき「公式」がある
こんにちは、元機関投資家・ファンドマネジャーで、現在は文筆業兼個人投資家の澤田です。前稿では「資産運用の5ステップ」をお伝えしました。いわば「もくじ」にあたる部分のご説明でしたので、今回から5回に分けてそれぞれの内容をお伝えします。
【資産運用の5ステップ】
今回は「1.資産運用の公式 家計の損益計算書とバランスシート」について説明したいと思います。
【資産運用の公式】
資産増減 = 収入 - 支出 +( 運用資産額 × 運用利回り )
一行にまとめるとそっけない感じがしてしまいますが、資産がどれだけ増減するかはこの式を見ると一目瞭然です。税引き後の収入から支出を引いて、運用資産額に運用利回りをかけたものを加えると、その年の資産増減額が決まります。
つまり、資産を増やすには、①収入を増やす ②支出を減らす ③運用資産額を増やす ④運用利回りを上げる、この4択になります。ちなみに「オルカン一択」の方はこのうち④運用利回りを上げる(と期待する)選択肢です。
必ずいちばん最初に向き合ってもらいたい、家計の「損益計算書」
収入を増やすのが難しい時代です。初任給引き上げのニュースがここ2年の春先の話題でしたが、その原資を捻出するために年功賃金カーブはなだらかにされてしまうし、3号被保険者問題で配偶者の賃金も頭打ちです。
企業側は福利厚生などのフリンジベネフィットを抑えていますし、定年延長と同時に役職定年などの制度導入で中堅社員以降の賃金は一世代前に比べて明らかに減少しているのが現実です。働き方改革で労働時間が減少すればQOLは底上げされるかもしれませんが、賃金総額の面ではむしろマイナスです。転職する方も増えましたよね、必ずしも給料は上がらないようですが。
更には社会負担率の上昇(税金と社会保険の合計)が手取りに影響を与えています。財務省の国民負担率統計では、20年前の35%から10年前には40%、令和5年には45%を超えています。手取りの後で払う税金もありますので実感が薄いかもしれませんが、日本人は給料の半分を社会負担する時代が目前にやってきています。
日本人の平均賃金は500万円弱です。大卒で40年働くとして2億円、そして社会負担率50%ともなると一人働きでは到底家族は持てません。生涯未婚率の上昇、賃金の性格差の是正、少子化の加速、いずれも必然としか思えません。そうなると、資産運用の種銭を作るには、支出をうまくコントロールすることが大切になります。
家計の損益計算は「記録ダイエット」に似ている。やればやっただけ痩せる
少し話が変わります。「レコーディングダイエット」をご存知でしょうか。食べたものを書き出して、摂取カロリーを計算するだけで痩せる、という優れものです。最近では「あすけん」など、アプリでできるものも人気ですね。
なぜ痩せるのか。これは人間の心理を利用したもので、例えば「シュークリーム300キロカロリー」とつけると、「これを食べると2時間ウォーキングしなきゃならない」と考えたりするようになります。もともと運動が好きで基礎代謝以上にカロリーを消費する生活習慣があればダイエットする必要はありません。「ダイエットしたい、だけど運動も大変、だったらシュークリームやめとこか」と考えるところがミソで、レコーディングすることで摂取カロリーを減らす効果が期待できるのです。
これは「家計簿をつけるとお金が貯まる」の応用編です。家計簿をつけると、何にお金を使っているか分かります。トイレのタンクにペットボトルを入れる貧乏臭さや、底値表を作ってスーパーを渡り鳥するかつての専業主婦モデルの節約よりも、いくら何に使っているか分かることで無駄な出費を減らすことができます。タバコやラテマネーが代表的ですね、年10万円ですと夫婦2人で20万円、これを30年続ければ600万円貯蓄できますから、なんと巷間で話題になっている「老後2000万円問題」が1400万円にまで減ることになります。
これが家計の損益計算書です。税引き後の収入がいくらか、家計簿をつけることで支出の額が分かり、年間でいくら黒字(または赤字)なのかが分かります。ダブルワークなどで収入が増やせればもちろんよし、支出の項目をまとめて年間いくら使ってよいか考えると、意外に節約にもなります。
家計簿にはそれ以上の効果があります。何にいくら使っているか分かることで、将来に必要なお金がぼんやりながら見えてきます。それが見えるようになると将来の消費額が予想できることで、年間いくら貯蓄や投資に回るかが計算できる、更にそれを積み重ねていくと、将来の運用資産額が推計できるというのがポイントです。これは次回の「2.ライフプランとキャッシュフロー表」で詳しくご説明します。
家計の「バランスシート」を作ってみると、大抵は「意外な発見」がある
次に家計のバランスシートです。
皆さん、自分にざっくり貯金がいくらあるかご存知ですよね。銀行にいくら、手元にいくら、でもカードの支払いが後で来て、などと考えると大体の金額が分かると思います。ここで考えていただきたいのは、広い意味での家計資産です。
・銀行の残高
・証券会社の資産別残高
・会社や個人の確定拠出年金
・持ち家の方は不動産。戸建ての方は固定資産税評価額の2倍が目安、マンションの方は住所を入れるとおよそのマンション価格が分かるサイトがありますのでご利用ください。
・変額保険など投資型の保険に入っているならその解約価額
・親から相続について話があるならばその額
など、思いつく限りすべての資産とその額を並べ、それをすべて合算します。住宅や車のローンがある方は差し引きます。もちろん大体で構いません。いくらになったでしょうか? これが家計の資産です。
資産運用の考え方で重要なのが資産配分で、「3.アセットアロケーション」で詳しく説明します。ここではまず、家計の損益計算書がどうなっていて、家計のバランスシートが資産、負債がそれぞれいくらあって、どの資産にどれだけの比率で純資産が配分されているかを把握してください。
「貯金とマンションとローンしかない」と思っていた方も、実は401Kに1000万円外国株が入っている、とか、新NISAは「オルカン一択」にしているけれども他は全部貯金にしていた、とかいろいろな発見があると思います。
次回はこの損益計算書とバランスシートに時間の概念を加えて、ライフプランとキャッシュフロー表に拡張したいと思います。
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