新NISAでみんなが忘れている「意外なこと」とは?元ファンドマネジャーが地道に指摘し続ける「やっておくべきこと」#3
24年年頭にスタートした新NISA制度。「オルカン」「S&P500」という言葉はすでにおなじみとなりました。しかし、「よくわからないなりに何とか始めました」という人だけでなく、「始めないといけないのはわかっているけれどどうしていいのかわからない」という人もまだまだいるでしょう。
「オルカン積んでるから俺はOK」と考えている人に、元ファンドマネジャーの澤田信之さんから「それが危険な場合もある」と確認事項が。さっそくご説明いただきましょう。
【元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」】#3
(この記事は7本シリーズの3本め/1/2/3/4/5/6/7)
手元にあるお金だけなく「時間の経過とともに変わるお金」を把握する必要がある
こんにちは、元機関投資家・ファンドマネジャー、現在は文筆業兼個人投資家の澤田です。今回は「資産運用の5ステップ」の「2.ライフプランとキャッシュフロー表」についてお話しします。
【資産運用の5ステップ】
前回は、 資産増減=収入-支出+(運用資産額×運用利回り) という資産運用の公式から、家計の収支(損益計算書)と現状(バランスシート)の作成を説明しました(こちらから)。以下、損益計算書を簡単にでも作成した、またはどんなものかが脳内にある前提でお話します。
まず、現役世代で収支が赤字の方は、ダブルワークで収入を増やすか、パートナーがいる場合にはパートを止めて正社員になってもらいましょう。何とかの壁、とかいうものはもうすぐなくなります。日本は専業主婦がデフォルトである国ではなくなりました。運用するより労働しましょう。年金世代は収支がプラスになる方の方が少ないのでこのまま読み進めてください。運用できる期間は思ったよりも長いものです。
現役世代で黒字が収入の0-20%の方は少し支出を見直してみましょう。資産運用の公式に数字を入れてみると実感がでますが、運用資産額の多寡が後述のキャッシュフロー表に大きな影響を与えます。運用利回りには複利効果が働きます。黒字が20%以上ある方は、優良家計です。ぜひ続きを読んで、金銭的独立後の精神的解放を達成してください。
現状はいかがだったでしょうか。意外にたくさんある、とか、全部不動産じゃないか、とかいろんな感想があったかと思います。今回はそこに時間の概念を追加します。そのために必要なのがライフプランになります。
だがしかし。来年のこともわからないのに、「ライフプラン」なんて必要なの?
ライフプランとは、その名の通り人生の計画です。小学生のころありましたよね、僕は大きくなったらプロ野球選手になる、私は学校の先生、とか。皆さんは夢が実現しましたか?それとも実現しないから夢、でしたか?
結婚するときに離婚することをプランしているひとはいませんよね。だけど、車やスマホを買う時に残価設定式(数年後に買い替える前提)で購入する方は結構いますよね。マンションを買う時に終の棲家にするか、転売を前提にするかは人それぞれです。つまり、買う、という同じ選択をしているように見えて、人によって選択の目的は異なります。
人の一生はまさに選択の連続です。選択できない親の元に産まれ、生まれ持った身体的特徴を制約に、その後様々な競争に晒されます。多くの場合、学生生活の終了とともに自立をして、そこからは金銭的な制約の下で選択を繰り返していきます。そしてその結果が現在のあなたです。
各個人は選択にくせがあります。リスクを好む人、回避する人、それぞれです。経験から学習する人もいれば、同じ間違いを繰り返す人もいます。
年を取るにつれて選択の幅は狭まっていくことが多いです。選択しているようで、隣接する近似した選択肢しか残されておらず、どちらを選択しても結果に違いはない、という状態もよくあることです。
現代を生きる人は知っておいたほうがいい、我々は「思ったよりも長生きしてしまう」可能性があります
「昔はよかった」とか「若いころは」とか口にするのが中年から老人への曲がり角だ、と言われたりもしますが、最近では抗加齢の研究が進んで、人は100歳まで生きるんだ、その準備が必要だ、と言われるようになってきました。
かくいう私も、以前から「人生80年。40歳でハーフターン、そこからは毎年1 ずつ年齢を減らしていって、0才に戻って死ぬんだ」と考えておりまして、実年齢56歳の現在は 40-16=24歳、大学生の頃のように生きていたい、という思いでいました。
ところが100歳までとなると話は変わります。56歳は先ほどの計算で言うと50-6の44歳、まだまだ人生半分残っています。これを「人生のボーナスがやってきた」と思うか「まだそんなにあるのか、とほほ」と思うかも人それぞれです。
しかしながら資産運用的には大きな違いが生まれます。
定年が延長されつつあるとはいえ、65歳定年を起点として計算すると、80歳までだと年金生活が15年、一方で100歳だと35年になります。年金生活は基本的に資金が持ち出しになりますので、前述の損益計算書がマイナスになります。マイナスの年数が15年と35年、後者がより多くの資金を必要とすることは論を待ちません。
しかしながら一方で、年金生活に入る時点での資金をしっかりと準備しておけば、これは同時に運用できる期間が長くなったとも言えます。次の 「3.アセットアロケーション」でご説明しますが、資産運用のポートフォリオはインフレより高い利回りで運用することを目的とします。運用期間が長いほど許容できるリスクも高くなりますので、結果的に期待リターンも高くなるわけです。そう考えれば金銭的な不安も多少は緩和されるでしょう。
ライフプランを「キャッシュフロー表」へ移してみると「自分ができること」の幅が見える
それではライフプランをキャッシュフロー表に移し替えていきましょう。あなたのライフプランは、数字に置き換えられることで可視化されていきます。
人生の大きな選択はいくつもあって、次第に選択の幅が狭まり、近似した選択肢のみが残されると述べました。しかしながら人生が長くなるとリライフの可能性も出てきます。
一度結婚をしたが離婚した、もう結婚はこりごりだ、という人もいれば、子どもを育て上げたのだからイエから解放されてもう一度パートナーに巡り合いたい、そういう方もいらっしゃると思います。人生が長くなれば時間の制約が緩和されるのですから、あとは金銭制約ですね。
ライフプラン表の目的は、金銭が制約になるかどうかを確認することです。ですから、いつでも好きなときに修正が可能です。
親からの経済的独立の後、金銭的に大きな選択は、「結婚(離婚)、子ども(の数)、不動産の購入、車の有無」あたりでしょうか。運命の出会いや授かり婚、終の棲家にオープンカー、いずれも憧れの対象ですが、できればその可能性も含めてキャッシュフロー表を作ってみたいものです。
キャッシュフロー表は保険会社や信託銀行のHPに掲載されています。ライフプランを考えることは大変、かつ、楽しいものですが、キャッシュフロー表自体は四則演算で簡単にできるものですので、エクセルで自作するのもお勧めです。外部に依頼する場合は金融機関に紐づいていない独立系のFPをお勧めします。
そうそう、時間の制約が緩和された、と述べましたが、それには健康であることが前提です。なるべく早いうちから健康寿命が延伸できるアンチエイジングに取り組むこともお勧めしておきます。とはいえ特別なことも必要なく、適度な運動、バランスのよい食生活、睡眠、ストレスオフ、そして各種検査数値の管理。これらはもはや投資の一部と捉えることができるでしょう。
それでは次回までごきげんよう、ドキドキのない資産運用を祈念しています。
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