40歳を過ぎたら乳がん検診を「毎年受けても良いくらいです」と専門医が言うこれだけの理由【医師に聞く】

「むしろ受けない方が良い検査」って?

例えば、最近問題になった、「線虫でがんが分かる」という検査がありますが、あれは良くない例の一つです。その検査で陽性になっても、実際にがんが見つかる人が非常に少なかったのです。また、陰性だったからと言って、がんがないとも言えない。陽性になればそれに振り回されることになる、むしろ受けない方が良い検査と言えます。

 

また、腫瘍マーカーも検診の項目として測定されることがよくあります。前立腺がん以外のがんでは腫瘍マーカーの有効性は、検診としては全く認められていません。腫瘍マーカーは、感度も高くなく、がんではない人でも上がることが分かっているのです。

 

しかし、検査の結果が陽性であれば、本人は、「がんかもしれない」と思うわけです。そこで病院に行って、本来なら必要なかったようないろんな検査をするわけです。結果、何も見つからないことが多いのですが、本人は、「何もなくてよかった」という気持ちでいられるでしょうか。

 

残念ながら、それで終わらないこともあります。「やはりどこかにがんが隠れているのではないか」、という不安だけ残すことになってしまうこともあります。そのため、エビデンスやデータがある検査を受けるということがすごく大事です。マンモグラフィにおいても、要精査になったけれども、何もなかったということはよくありますが、それでも、きちんとしたデータがない方法に比べるとその頻度は少ないわけです。

 

各分野でデータがあるものとないものがあるので、すべてを詳しく知っておく必要はないと思いますが、検診としてしっかりと確立された検査を受けるという認識だけでも持っておくといいのではないかと考えています。

 

マンモグラフィと超音波検査を比べるのは間違い

まず乳がん検診の大前提はマンモグラフィです。乳がんによる死亡率を下げられることが分かっている検査は、現時点ではこれしかありません。ですから、対策型検診として行われているのはマンモグラフィということになります。

 

次に、よく行われて信用できる検診方法は超音波検査です。マンモグラフィの被曝量も多いわけではないのですが、超音波は被曝もなく、手軽にできるのでよく行われています。これはマンモグラフィに次いで、お勧めできる検査と言えます。

 

マンモグラフィか超音波かと、よく対立構造で話されることが多いのですが、それは間違っていて、あくまでもマンモグラフィを基本として超音波を足すか足さないかという話で考える必要があります。これは、日本で大規模な研究が行われていて、その結果に基づいています。

 

「超音波だけやるというのはどうですか」、とよく聞かれますが、超音波単独の検診のデータは、信用に足るものはほぼないと考えてもらうと良く、いいか悪いかも結論づけることは現状難しいです。

 

しかし、例えばマンモグラフィの対象年齢ではない40歳以下の方でしたら、やらないよりはいいかもしれないということは言えると思いますが、何歳からはじめるべきか、どのぐらいの頻度でやるべきか、に関しては現状では明確な答えがありません。

 

マンモグラフィに超音波を足した場合のメリット、デメリット

現在、分かっていることというのが、マンモグラフィに超音波を足すとどうなるかということです。メリットとデメリットのそれぞれを考える必要があります。メリットは、超音波を足すことによって乳がんが見つかる可能性は、マンモグラフィだけの時に比べておよそ1.5倍増えることです。マンモグラフィでは検出されず、超音波だけでみつかった病変があるということを意味します。これは重要なポイントです。

 

一方、少し難しい話にはなりますが、デメリットもあります。検査が増えることです。検診を受けて要精査だった場合、その結果を持って病院に行くと、プラスアルファで様々な検査をすることになります。超音波で引っかかるということは、乳がんがあるかどうかは別として、何かありそうだということを意味しています。

 

そういう状況で病院に来ると、大抵の場合、細胞診や針生検といった針を刺して細胞を取る検査をすることになります。なぜかというと、画像検査は影絵のようなものなので、私たちが画像だけを眺めても、乳がんらしいか、良性らしいかの予測はたっても、乳がんの診断を確定させることはできません。良性の可能性が非常に高いと考えられる場合は、画像検査だけで終わることもありますが、検診で要精査になっているような場合は、何かしら疑わしいことで引っかかっているので、針を刺して細胞を取る検査まで行うことが多くなります。

 

超音波検査を併用することで、そのような追加の検査を受ける可能性、侵襲のある針を刺すような検査を受ける頻度が1.5倍ほど増えるということが分かっています。この中には、本来は必要なかったかもしれない検査も多く含まれています。

 

しかし、もちろんこれは、検査結果をみて初めてわかるのですが、その結果 、「良性でしたね。良かったですね」ということになったとしても、もしあなたが超音波を受けていなくて、それを見つけていなければ、この検査をする必要すらなかったということにもなります。なかなか自覚しにくいデメリットですが、これが間接的な超音波検査の問題点です。

 

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