40歳を過ぎたら乳がん検診を「毎年受けても良いくらいです」と専門医が言うこれだけの理由【医師に聞く】

検査結果が与える精神的負荷も見逃せない

単純に針を刺すと痛いからデメリットということではありません。要精査という通知をもらうと、「私は乳がんかもしれない」とすごいショックを受けて病院を受診されることが多いです。中には、検診要精査の結果を「私は乳がんなんだ!」と確定診断のように受け取って来院される方もいます。それだけ、要精査の通知は衝撃的な出来事です。

 

病院では細胞診や針生検の検査をしますが、場合によっては検査をするまでに、数日・数週間かかることもあります。さらに、結果が当日出ることはなく、結果が出るまでに少なくとも1週間2週間はかかるため、「私はがんかもしれない」という精神的負荷が、数週間近く続くことになります。

 

ですから、たくさん検査をしてたくさん拾い上げることができたらいいかというと、なかなかそういうわけでもありません。どんな検査もそうですが、感度も特異度も100%で、見つけたものは全て黒という検査は存在しません。

 

特に画像検査の場合、100%がんではないと言い切ることは不可能です。たくさん拾い上げようとすると、(結果論ですが)どうしても余分な、本来拾わなくてよかった人たちも拾い上げて、さらに追加の検査が必要になるという医学の限界、ジレンマがあります。

 

メリットとデメリットをよく考えて

現状、乳がん検診はマンモグラフィだけにするのか、マンモグラフィと超音波を両方やるべきなのかとなった時には、どちらがいいとは一概には言えなくて、私は両方ともメリットとデメリットがあることを説明しています。

 

マンモグラフィだけでも死亡率が下がると分かっていますのでそれだけでいいという考え方もありますし、「検査が増えたとしても見つかる確率が高い方がいい、マンモグラフィと超音波をします」という人もいます。

 

その辺は、個人の考え次第なので、絶対こちらがいいというのはなかなか言いにくいところです。

 

「過剰診断」というジレンマ

感覚的には、がんが見つかる確率が高いのなら亡くなる方も減るのではないかと、普通の方は思うと思います。しかし、そうとは限らず、それがまたもうひとつのデメリットの話につながります。これはマンモグラフィ、超音波ともに該当しうるのですが、「過剰診断」という概念があります。

 

例えば、生前にがんと診断がついていない方が寿命を全うして、亡くなった方がいるとします。その方を解剖して調べると一定の確率でがんが体の中から見つかります。

 

しかし、その方はがんで亡くなったわけではありません。がんは進行してはじめて、身体の機能に支障をきたし、命に関わる病期です。亡くなるまで自分が潜在的にがん患者であると知らずに寿命を全うしたのですが、もしそれを見つけるための検診を受けていたら、将来命に関わらないかもしれないがんを見つけて治療していた可能性もあります。

 

私たちも、診断がついた時点では、命に関わるか関わらないかを予測することは容易ではありません。中には、がんの診断がついても、進行することは稀で、治療が不要ながんもあるのではないか?という研究も行われていますが、まだ結論がでていません。

 

現状としては、誰にも分からないので、がんの診断がついた以上は、将来これが命を脅かす可能性があるかもしれないと考え、治療を勧めることになります。

 

将来への不安 次ページ

スポンサーリンク

この記事は

スポンサーリンク

スポンサーリンク