「プレゼントの山」に麻痺し精神束縛に気づけない【不倫の精算2】
「異常な愛」に気が付かない
B子と彼は仕事の取引先で出会った。そのころ、彼女は夫の浮気が原因で離婚したばかりで軽いうつ状態を患っていて、それを親身になって励ましてくれたのが彼だった。
彼が結婚していることはわかっていたが、弱っていたB子は彼の親切心をはねのけることができなかった。
そして、
「正直、既婚者なら逆に大丈夫って勘違いしていたんだと思う」
一番身近な異性である夫に裏切られたことが、B子の心を大きく傷つけていた。慰謝料から逃げようとする元夫に念書を書かせるため調停まで開き、男の醜さを底まで味わったB子にとって、既婚者でありながら自分のことを気にかけてくれる彼は、とても純粋に見えた。
あぁ、この人はまともなのかな。そう思って気を許したのが間違いだった。
B子の状態が落ち着いても、彼は離れようとはしなかった。仕事が終われば食事に誘い、休日はドライブを提案し、何かとB子を気遣った。そして会えば必ず支払いはすべて彼が済ませた。
雀の涙ほどしか払われなかった慰謝料はすぐに生活費に消えてしまい、彼女は慎ましく生活しながらも彼の誘いを断れずにいた。
このままではいずれ体の関係を持つことになるだろう。そんな予感が色濃く生まれても、彼がプレゼントしてくれる服やアクセサリーは彼女の心のテンションを上げる。たとえ自分の好みとは違っていても、B子はまだ彼の「好意」を信じていた。
自分のことを愛しているから、お金をかけてくれるのだと。
直接お金を渡されるようなことはなかったが、彼はどんどんB子に靴やバッグを買い与えた。そしてそれを身に着けるようお願いした。
請われれば、B子は従うしかない。断って気分を害するのは申し訳ないし、普段と違うスタイルで過ごすのは新鮮で楽しかった。
そうして、気がつけば部屋は彼からもらったものでいっぱいになっていた。
そんな関係が続いたある夜、B子はついに彼にホテルに誘われる。「断るべきだ」と思ったが、これまでもらった贈り物の山を考えると、どうしても拒否できなかった。
結ばれてからは、より一層彼はB子に会いたがるようになった。彼女が女友達との約束があるから、と言うと不機嫌になり、「その服で行くの?」と自分が贈ったものを着ている彼女に指を向ける。
とんでもない嫌味だ、と胸が苦しくなっても、結局B子は彼に逆らえずに友人にドタキャンの連絡をしていた。
彼の異常さに気がついたときは、B子の周りからは少しずつ人が減ってきていた。
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