
「だったら離婚すれば?」と失言するKY夫が見落としている、「妻とのすれ違いの根っこ」とは
年の差夫婦の価値観のズレ。「SNSに影響されすぎなんじゃない?」
リョウさんは45歳、奥さまは33歳です。わたしが「世代の違いを感じますか?」と尋ねると、興味深い答えが返ってきました。
「妻はスマホで何でも調べて、『世の中のパパはもっと育児してる』とか『ちゃんと家事分担してる夫婦がほとんど』って言うんですよ。俺からすれば『そういう家庭もあるだろうけど、うちとは条件が違うだろ?』って思う。俺たちの場合は俺が外で稼ぎ、妻は専業主婦で家を守る。それでいいじゃないですか」
夫婦でそれぞれの役割が明確にあると?
「そりゃそうですよ。なのに“令和は違うのよ”とか言って、SNSに影響されまくってるんじゃないかな。結局、自分の友達の旦那と比べて『あなたは遅れてる』とか『昭和の男みたい』とか言いだす。でも俺は昭和生まれだしなあ、実際。まあ、妻いわく“少しずつ時代に合わせてくれないと、こっちがきつい”ってことなんでしょうけど、俺が急に180度変われるわけないし。それに若いパパがみんな育休取ってるかっていえば、そんなことないでしょ。俺なんてこの歳で休んだら職場に居場所がなくなるかもしれないし、上司としてのプライドもある。そもそも大黒柱として稼がなきゃいけないわけで、簡単にはいかないですよ」
たびたび口にする「プライドが傷つくんですよ」という言葉
リョウさんの言葉には、たびたび“プライド”という概念が登場します。家事に対して妻からダメ出しをされると、相当なダメージを受けるようです。
「いや、だってさ、皿洗いとか洗濯物を畳むとか、俺の中では“やってやってる”感があるんですよ。もちろん完璧じゃないかもしれないけど、協力する気持ちはあるわけです。なのに、洗い残しとか畳み方をつつかれたら『お前は何もできないんだな』って言われてるようなもんでしょ? それはさすがにプライド傷つきますよ」
なるほど。ではどうすれば良いと思いますか?
「だったら最初からやらないほうがマシじゃん、ってなる。妻は『指摘してるだけで否定はしてない』って言うけど、俺からすれば“やり直される”こと自体が嫌なんですよ。見てる前で同じ皿を洗い直されたりしたら『お前が洗えばよかっただろ!』って怒鳴りたくなる。そこまで言うなら頼まないでほしいし、俺が少しミスしても『ありがとう、助かるよ』ぐらい言ってくれたら素直に受け止められるのになあ」
リョウさんの語りには、「少しでもやったことは認めてほしい」という切実な思いがにじむ。だが、それと同時に、相手の大変さを理解しようとする姿勢が薄く、自分の傷つきだけに意識が向いているようにも見える。
子どもとは「たまに遊ぶ程度でちょうどいい」
2歳の娘さんに対してはどう向き合っているのか、気になって改めて質問しました。リョウさんは苦笑しながら正直に答えます。
「子どもはかわいいけど、抱っこは重いしオムツ替えは難しい。結局妻の方がうまいし、やってもらったほうがスムーズなんですよ。俺はブロックで遊んであげるくらいでいいかなって」
父親としての関わりに対しても、どこか“人ごと”のような印象が残る。妻の「もっと子どもと向き合ってほしい」という声は届いていないようだった。
インタビューを終えて――すれ違う日常
インタビューが一段落すると、リョウさんは「いやあ、普段言えないことを話せてスッキリした」と笑顔になりました。しかし、その“言えないこと”の大半は、奥様への不満や「俺は悪くない」という自己弁護に近い内容のように感じました。
わたしは、リョウさんの「家事手伝ってる」という主張と、実際に述べられた行動の中身の差を感じつつ、さらに「妻への配慮や想像力の欠如」をひしひしと感じました。とはいえ、リョウさん本人は「悪気はない」と信じているようで、「むしろ俺のほうが被害者だ」と言わんばかりの雰囲気です。
最後に、「今後どんな夫婦生活を送りたいか」についてうかがうと、リョウさんは意外とあっさりした口調で答えました。
「そりゃあ平和に暮らしたいですよ。子どもがもう少し大きくなれば妻も落ち着くんじゃないかな。今は育児のストレスでピリピリしてるから俺に当たるんだと思う。まあ、俺ができる範囲で協力はしてやりますけど、あまり口うるさく言われると気分も悪いし、結局は自分でやったほうが早いんじゃない? って思いますよね。そんなにすべてを俺に任せたいわけじゃないんでしょ? とりあえずケンカが減るように、妻にももうちょっと大らかになってもらいたいですね」
そう言い残して、リョウさんは「帰りにコンビニで何かスイーツでも買っていけば妻の機嫌が直るかも」と笑いながらファミレスを後にしました。一方で、家では奥様が2歳の娘さんを抱えながら夕飯の準備や掃除をしているのかもしれません。リョウさんの意識と、奥様の現実とのギャップは、まだまだ埋まりそうにないようです。
おわりに
リョウさんは終始、「自分なりには家事や育児を手伝っているし、本来はもっと妻に感謝されてもいいはずだ」と強調していらっしゃいました。ですが、その“やり方”や“意識”の中に、現代では通用しない昭和的価値観と、空気の読めなさが色濃くにじんでいるようにも見えます。実際のところ、奥様がどう受け止めているかは直接取材できていないため断言はできませんが、2歳の娘さんを育てる生活で奥様の負担が大きいのは想像に難くありません。それでもリョウさんは「俺ってそんなに悪い?」と首をかしげています。
夫婦の関係に正解はありませんが「俺は悪くない」という思考がすれ違いを深めているとしたら、それを変えられるのは、リョウさん自身だけなのかもしれません。今後、夫婦のすれ違いが解消されるのか、それともさらに深刻化していくのか――今回はその行方が少し気がかりなインタビューとなりました。
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