夫のしたことが全て裏目に出て、息子は「ひきこもり」に。なのに「親権」を主張するなんて!【行政書士に聞きました】

夫婦は離婚に向けて話し合いをすることに

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そして夫婦が今後について話し合う場をもうけたのです。筆者は前もって「息子さんのため、夫婦が離婚するしかないと訴えましょう」とアドバイスしました。なぜなら、夫は「俺のせいかよ!」と大声を出し、絵里奈さんが「他に誰がいるのよ!」と大声で返し、家庭内ではたびたび “ 火山が噴火 ” していたからです。息子さんが「いつ口喧嘩が始まるか」と怯えながら生活するのは可哀そうです。

 

そのことを踏まえた上で絵里奈さんは「飛朗斗のことを第一に考えて、出した結論なの。分かって!」と切り出しました。夫は「もう俺に気持ちがないってことか!」と的外れな言い方で反発。絵里奈さんは「とっくの昔に気持ちなんて切れています。飛朗斗のために夫婦をやってきただけ!」と応戦します。そうすると夫は「お前のことなんて、こっちから願い下げだよ!」と切り捨てた上で、「それなら飛朗斗は俺が引き取って育てるからな」と言い出したのです。

 

そこで絵里奈さんは「それじゃ、飛朗斗のために何かしようって考えているの?」と尋ねました。学習塾や家庭教師、英会話教室、そして全寮制の小学校。今まで夫がやったことはことごとく裏目に出ています。絵里奈さんは夫のやり方では上手くいかないと思っているのですが、夫は「いや、いろいろ」とはぐらかし、「お前はどうなんだ!」と逆ギレしたのです。

 

絵里奈さんは「県がやっている教育センターを頼るつもり。専門のカウンセリングとかやっているみたいだし」と答えます。今度は逆に絵里奈さんが「飛朗斗がちゃんと眠れていないって知っているの?」と尋ねると、夫は首を横に振ります。「そんなことも知らないんじゃ…小児の診療内科に連れていって薬を出してもらおうと思うの。一時的にはしょうがないじゃないかって」と畳みかけます。息子さんを立ち直らせるため、心の底から真剣に考え、具体的なプランを持っているのは絵里奈さんの方でした。

 

このように息子さんには、成長や教育の遅れ、情緒の不安定、人格形成の歪みが生じているのは明らかですが、全寮制の小学校に転校させたことで拍車がかかってしまいました。そこで筆者は事前に「良心の呵責に訴えるのはいかがですか?」と提案しました。

 

 

子どもを渡さないという夫。用意した作戦は?

そこで絵里奈さんは「こうなったのは誰のせいなのよ!」と問い詰めたのですが、夫は「ああ、俺のせいだよ。でも今さら振り返っても仕方がないだろ?!前向きに考えようよ」と返してきたのです。我が子のことなのに、まるで他人事のように軽口を叩くので、絵里奈さんは「良心の呵責はないの?!悪いと思っているのなら、もう飛朗斗には関わらないで!」と叱責したのです。

 

筆者は「旦那さんが息子さんのことにこだわるのは、奥さんの言いなりになりたくないからではないでしょうか?」と指摘。結局のところ、夫はどこまで行っても子どもより自分のことが優先なのです。絵里奈さんはそのことを踏まえた上で、「飛朗斗を育てるのがどれだけ大変か分かっているでしょ?!毎日、クタクタだし、自分の時間なんてほとんどないわ。いつも心配で神経をすり減らされるのに?」と投げかけたのです。

 

逆にいえば、夫が自分1人で再出発すれば、時間的にも体力的にも、そして精神的にも。今まで以上に余裕が生まれるのです。最終的に夫は「好きにすればいいだろ!」と投げやりな感じで息子さんのことをあきらめたのです。そして夫が絵里奈さんに毎月5万円の養育費を支払うことで離婚が成立したのです。

 

厚生労働省の統計(2022年、人口動態統計)によると、夫婦が離婚する場合、子どもが1人のとき、母親が親権を持つ割合は全体(4.5万人)の92%(4万人)。残りの8%は親権を持つことが叶わず、父親に子どもを連れていかれ、母親と引き離されているのだから、油断は禁物です。また交渉の上、父親を説得し、母親が親権を持ち、離婚後も子どもと一緒に暮らせるだけでは十分ではありません。母親が子どもを引き取った場合、父親から一度でも養育費を受け取ったケースは42%しかいません。(厚生労働省の2021年、全国ひとり親世帯等調査)

 

母子家庭の半分は養育費なしで子どもを育てているのが実情です。2012年以降、離婚届には「養育費の取り決めの有無」をチェックする欄が新設されました。同統計によると母子家庭のうち、「取り決めをしている」のは26%、「まだ決めていない」のは6%に対して、「チェックしていない」、「チェックしたか不明」は63%にのぼります。そのため、親権の獲得で安心せず、離婚時にきちんと養育費の条件(月額、期間、一時金など)を取り決めることが極めて重要です。

 

 

 

<出典>

厚生労働省の2023年、人口動態統計
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411874

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450011&tstat=000001028897&cycle=7&year=20230&month=0&tclass1=000001053058&tclass2=000001053061&tclass3=000001053070&toukei_kind=6&result_back=1&tclass4val=0

児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
https://www.mext.go.jp/content/20241031-mxt_jidou02-100002753_1_2.pdf

厚生労働所の2022年、人口動態統計
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411869

全国ひとり親世帯等調査
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf

 

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