出会い系の既婚者でもいいから、自分を求めてほしかった【不倫の精算 11】

2018.01.28 LOVE

「求められたい」という飢餓感

K子が出会い系のアプリを使うようになったのは一年前。最初に打ち明けられたときは、まず「え、出会い系なんてやるの?」という驚きが強かった。

不細工ではないが凡庸ともいえる顔つきに、中肉中背の外見。一緒にいても常に背中を丸めてスマホをいじっていることが多く、自分の振る舞いもあまり気にかけることのないK子は、どこか田舎くさい倦怠感を覚えさせる女性だった。

最後に男性と付き合った話を聞いたのはいつだったのか思い出せないほど、K子は恋愛から遠ざかっていた。いつも会社と家の往復で、自宅では両親と過ごすより部屋にこもって小説を読む時間のほうが長いという彼女が出会い系なんて、すぐには信じられないのが実感だったのだ。

「最初は怖かったけどね、いざ会ってみたら優しい人ばかりだよ」

さらに驚いたのは、男性のプロフィールなどを見るだけでなく実際に会い、ホテルまで行ったことだった。行動力に感嘆したのではない。屈託のない笑顔でそんなことを言うことこそ、K子の世間知らずを象徴していた。

「やめときなよ、相手は結婚してるんでしょ? トラブルに巻き込まれても知らないよ」

何度もそう言ったが、K子は知り合った既婚男性と会い続けていた。

当初はK子も警戒してすぐに会うようなことは避けていたが、ある日メッセージのやり取りをしていた男性から「どうしても会いたい」と言われ、つい心が動いた。普段、男性と知り合うきっかけはほとんどなく、「会いたい」などと言葉をかけられることは、K子にとってほぼ「奇跡に近いこと」だったのだ。

「でね、会ってみたらすごく話が合って、またすぐ会いたいなぁって……」

相手が既婚者だという事実が、そのときはK子を安心させていた。奥さんがいる人なら、おかしなことにはならないだろう。どうせ会うだけだし。こんな油断が、彼女を不倫の道へと進ませた。

結局、会うたびに「可愛いね」「仕事、大変なんだね」など耳に心地よい言葉をかけられ続けたK子は、最初の男性とホテルに行くことになる。一度踏み外してしまえば、あとは転がり落ちるだけだった。

「結婚してる男の人なんてさぁ、どうせやることだけが目的なんだし、こっちも割り切っていればいいわけよ」

得意げな顔で、K子はそううそぶいた。最初の男性は二度ほどホテルに行っただけで関係は終わったが、すぐに次の既婚男性と知り合ったK子は、それからは「最短距離で」肉体関係を持つようになっていった。

「懲りないねぇ」。最初の男性と連絡がつかなくなったとき、「体目当てだったのかな」とやっと事実に気づいたK子は落ち込んでいた。だからもう出会い系なんてやらないだろうと思っていたが、実際は反対だった。

いつしか、K子の口から「ラクちんだし」「簡単だし」という言葉が多くなり、やっと気がついた。

彼女は、既婚者でもいいから、自分を求めてくれる人が欲しかったのだ。

最初に口説かれた快感が、K子のオンナとしての欲を思い出させていた。いつも男性に見向きもされない生活を送る中で、ここで出会う人は自分を女性として扱ってくれる。それが既婚男性と肉体関係を持つ理由だった。

「お互いわかってて会うんだし」と繰り返すK子の、笑顔の奥にある飢餓感が見えるようだった。

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