育休で資格取得した32歳夫。妻からのレス宣告、未読スルー、社内報での告白…それでも夫婦はやり直せた?

2025.06.13 LOVE

沈黙の中で差し出された手

その夜。玄関のドアを開けたタカシさんは、いつもより少しゆっくりと「ただいま」と言いました。キッチンでは妻が、娘の離乳食を温めていました。彼女は振り返らずに、「おかえり」とだけ返します。それでもタカシさんは歩みを止めず、妻の隣に立ち、鍋をかき混ぜる彼女の手にそっと触れました。

「……社内報、読んでくれた?」

「……読んだよ」

 

その声は小さいながらも、かすかに震えていたといいます。

「全部さらけ出したね。私のしんどさも、あなたの後悔も」

 

妻のその言葉に、タカシさんは深く頭を下げ、「ごめん」と一言だけ絞り出しました。言い訳は、しませんでした。ただ鍋を見つめる二人の間に、静かな沈黙だけが流れます。

やがて、娘が「だっこ」と両手を伸ばします。タカシさんがその小さな体をそっと抱き上げた瞬間、湯気の向こうで、妻がほんの少しだけ微笑んだそうです。

 

「レス解除」の夜。スケジュール帳にない約束

週末。娘の寝かしつけを終えたあと、書斎のドアが開け放たれ、教材が床に積まれたままになっているのを、妻が見つけました。

「片付けないの?」

「今夜は、勉強しないって決めたんだ」

 

リビングのソファには、二人分のマグカップと、タカシさんが買ってきた抹茶プリン。PCもスマホも手元にない空間で、二人は“なにもしない”時間を静かに共有します。

やがて妻はそっと手を伸ばし、タカシさんの指を握りました。

「今日だけじゃなくて……これからも、こういう日を作ってくれる?」

「約束する。スケジュール帳には書かないけど、毎週ね」

 

あの“レス宣告”の夜から、長い時間が経ちました。ようやく、二人の夜が戻ってきたのです。

 

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