もしかして彼、既婚者かも…確認できない40代独女の孤独【不倫の精算 13】
知りたいけど、知るのが怖い
M子と彼は、数年前に新しくオープンしたボルダリング場で知り合った。最近話題だからと軽い気持ちで行ってみたら想像以上に面白く、何度か通ううちによく一緒になる彼と顔見知りになった。
最初は何とも思っていなかった彼だが、自分より早く始めていてテクニックもあり、年上なのに筋肉のついた体は年に不相応な若さが感じられた。ウェアや小物などいろいろな情報を教えてもらい、一緒に楽しむ時間も刺激的だった。
そして、気がつけばふたりで県外のボルダリング場まで遠征に行く仲になっていた。
「結婚指輪もしていないし、いつも来てるからずっと独身だと思っていたんだけど……」
彼は、自分は会社員で夜や休日などは時間があるから、と言っていた。ボルダリング場で自分以外に仲良くしている女性の気配はなく、終わった後で遅い時間に食事に行っても、テーブルに置いたスマホに通知や着信はない。それがM子に「彼は独身だ」と思わせたが、彼のことを自分以外に知る人がおらず、はっきりと確認できなかった。
M子自身は、彼から結婚について最初に尋ねられていた。バツイチで今は彼氏がいないことを正直に答えたが、そこには触れずに「まだまだ人生長いんだから」と笑ってくれたのが嬉しかった、とM子は語った。
だが、遠征帰りにホテルで結ばれてから、彼の不審な点が目につくようになった。
まず、住んでいる家を教えてくれない。デートはいつも外で、彼がM子の家まで送ってくれるのがパターンだった。「何処に住んでいるの?」と訊いたことがあるが、
「普段は実家にいて、自分の家にはほとんど帰っていないから」
と濁されてしまい、その実家のことすら滅多に口にはしない状態だった。
「こんな年齢だし、今さら彼女ができても家族に紹介なんてしないだろうけど」
と、M子は寂しく思う気持ちを抑えて無理やりに自分を納得させた。スタッフの人たちともすっかり親しくなったボルダリング場では「自分たちが付き合っていることは内緒に」、と彼に口止めされたときも、「余計な関心を引くのが嫌なんだろうな」とだけ考えるようにした。
だが、決定的な違和感は、彼の誕生日を一緒に過ごせないときだった。
M子は当たり前のように、その夜はふたりで過ごすものと思っていた。彼の好きなイタリアンの美味しいお店を予約しようと考えたM子だったが、何時から会えるかを彼に確認したとき、
「ごめん、その日は親戚が来るから」
とデートそのものを断られた。
さすがにそれは……と話を聞いたときはまず彼が既婚者であることを疑った。だがそれでも、M子は彼に結婚の事実を確認できないまま、今日まで交際を続けている。
その理由を訪ねたとき、M子は
「知りたいけど、知るのが怖い。不倫だってわかったらあの人を諦めなくちゃいけないでしょ?」
そう言って力なく笑った。
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