東京都唯一の「村」で古民家カフェ開業。移住6年、51歳で手に入れた“理想の暮らし”とは
「檜原産の野菜、ハーブとスパイスを使った料理を出したい」築200年近い文化財でカフェを開業

登録有形文化財に合うインテリアをコーディネート
「エコツアーガイド」として地域PRの活動もしていた智子さんは、以前から「村の魅力を発信できる拠点がほしい」と考えていました。200年近い文化財の建物なら、その拠点として申し分ありません。
「やらせていただけるなら、自分で育てたハーブとスパイスを使った、ハーブティーや料理を出したい」夢は一気にふくらみました。
村が公募していたのは、江戸末期に建てられた兜(かぶと)造りの古民家。もとは養蚕を営んでいましたが、7代目が漢方医となり、ここから村人の往診に出かけていたといいます。
茅葺き屋根を銅板屋根で覆った堂々たる佇まいで、建物の軒下には往診時に使っていた駕籠(かご)が今も吊るされています。国の登録有形文化財にも指定されている貴重な建物です。

家具類もすべて智子さんがセレクト
家具類はすべて智子さんがセレクトし、地元の作家さんの作品を展示・販売しています。
「リンパトリートメントサロンではハーブクリームを使っていましたし、移住後に借りた畑でもハーブを育てていました。漢方医の住宅と聞いた瞬間、『これはご縁だ!』と気持ちが高まりました」
地元団体や自治体のバックアップもあり、企画書は無事採択され、この建物を運営受託できることになりました。自治体が所有する文化財の施設をまるごとカフェにするのは初めての試みで、『古民家カフェ晴ノ舎(はれのや)』と名付けました。

月替わりの季節のランチセット
食べることが大好きで、おいしいものを求めて食べ歩くのが趣味だった智子さんですが、料理を習ったことはありません。飲食店での勤務経験もなく、「自分が料理を作るなんて考えたこともなかった」と笑います。ただ、飲食コンサルタント会社での勤務経験から、経営面の知識だけは持っていました。
「大好きな檜原村の村民が作る、滋味あふれる野菜の味を、もっと多くの人に知ってほしい」
その思いひとつで、「やるしかない」と腹をくくったといいます。

米粉シフォンケーキ
農家さんが届けてくれる新鮮な野菜を見ながら、「この素材にはあのハーブやスパイスが合う」とイメージを膨らませ、メニューを考案。
スタッフと力を合わせ、店を切り盛りしています。智子さんの毎日は、夕方4時に閉店すると、そのまま翌日の仕込みに取りかかる日々。そうして3年間、がむしゃらに走り続けてきました。
看板メニューは、キッシュとスープをメインにした野菜プレートの自然派ランチ。檜原村の恵みを活かした一皿を、訪れる人々に提供しています。
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