ダメンズを掴み続けてこのまま老いていく女【#婚外恋愛7】
みずから選んでしまう過去の悲劇
「元カレって……」
思わずマグカップを持つ手が止まった。ここ数年、実家で暮らし始めてからG子がまともに付き合った男性はいない。それだけ交際には慎重になったのかと思っていたが、G子からは「恋愛より遊んでいるほうがいい」とだけ聞いていた。
「元カレって、いつのよ?」
G子から聞いていたダメンズたちが一斉に頭をよぎった。
「えーと、もう3年くらい前かな?」
そわそわと肩を揺らしながらG子が答える。それは彼女が両親に頬をぶたれながら実家に連れ戻された時期と同じだった。
「ねぇ、まさか」「でもね!」
私の言葉にかぶせるようにして、G子が声を上げる。次に来る言葉を予想して、マグカップの取っ手を握る手にぐぅっと力を込めた。
「愛しているんだよ?」
あぁ。
また、繰り返すのか。
返す言葉は何もなかった。胸を埋めるのは苦い絶望。それは諦観を連れてきて、一気に体の力が抜けていくのがわかった。
「だから……」
G子は決して目を合わせない。あの頃と同じ。
「また話を聞いてくれる?」
どんなひどい扱いを男に受けようと、それが止まるのは男と離れたときではなく、女性みずからが自分を愛する気持ちを取り戻したときだけだ。
G子はいまだに自分を大切にする道を見つけられずに、過去の悲劇を繰り返そうとしていた。
自分さえ変われば幸せになれるはず。
その信念は、方向を間違えている限り、決して彼女が望むものを連れてはこない。
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