更年期世代の薄毛は避けられないと思っていたけれど「ほぼ治療できる時代」がくる?再生医療分野の皮膚科専門医に最新知見を聞く

閉経の前後5年を指す更年期には、女性ホルモンの減少に伴い、これまでになかった変化が現れます。「体重が増えやすくなった」「睡眠の質が下がった」などは多くの人が経験しますが、同時に「髪が薄くなった」ことにも気づきます。

 

前髪周りの地肌が見えている、顔周りの毛量が減った、へにゃへにゃした毛がたくさん飛び出ている。個人差はありますが、毛髪もエストロゲン減少の影響を受けるのです。

 

やや減った程度ならばやがて慣れるのかもしれませんが、やがて地肌が大きく見えたり、髪が明らかに細く弱々しくなったりした結果、メンタルが深く落ち込んでしまうこともあります。

 

こうした髪の悩みに「早い段階で介入すればするほど、先々の光明が見える」手段が研究されています。日頃のスキンケアで鍛えたコツコツとしたケアが得意な私たち向き! 詳しく伺いました。

 

「薄毛の悩み」には男女の性差があり、女性のほうが「打つ手が少ない!」

まず、女性の髪悩みについての概要を。

 

毛髪の悩みの代表例は「円形脱毛症」と「壮年性脱毛症」ですが、加齢に従って薄くなる悩みは「壮年性脱毛症」に分類されます。壮年性脱毛には性差があり、男性型脱毛症が「AGA」です。女性型脱毛症が「FPHL」です。

 

女性型のFPHLは男性型のAGAに比べて「打つ手が少ない」のが特徴です。男性型のAGAはガイドラインの「強く推奨(Aランク)」にフィナステリド内服薬、デュタステリド内服薬、ミノキシジル外用薬の3つの選択肢がありますが、女性型のFPHLはミノキシジル外用薬のみ。

 

ここで期待されているのが、再生医療分野からの新しい治療法の登場です。中でもオトナサローネは「S-DSC治療」に注目しています。12月13日に東京で開催された第33回毛髪科学研究会に参加してきました。ここで聞くことができた最新の治療成果について簡単にご説明します。

 

再生医療領域の「最新有望株」。女性型脱毛症の「もう一手」、S-DSC治療とは何か?

この日の午後、東邦大学医療センター大橋病院 皮膚科 准教授 新山史朗先生と、東京医科大学病院皮膚科 講師・皮膚科専門医の入澤亮吉先生のセミナーが開催されました。お二人はS-DSCという再生医療分野での毛髪研究を進める第一人者。

 

これまでも脂肪組織や間葉系に由来する幹細胞の直接移植、またそれらの分泌物を含む培養上清液、あるいはPRP(自己多血小板血漿Platelet Rich Plasma)を薄毛部位に注入する治療は存在していましたが、このS-DSCは自分自身が持つ「DSC細胞」を採取し培養、注射で頭皮に注入するという方法です。

 

ちょっと難しい話ですが、S-DSCの研究は、2003年にマケルウィー(McElwee)らが、毛包を3つの部位に分けて検討したことに始まります。細胞を3つに分けて分離・培養し、マウスの無毛部位に注射したところ、毛球部より上方のDS細胞では毛は生えませんでした。毛乳頭(DP)細胞では毛は生えるものの、毛の生える向きが一定ではなく、あちこちに向いている状態でした。しかし、DSC細胞(以下、S-DSC)を注射したところ、毛の向きはほぼ一定であり、さらに毛乳頭よりも太い毛が生えてくることが確認されました。

 

メカニズムとして、注射されたS-DSC細胞が毛球部へと移動し、毛乳頭(DP)細胞へと分化することで、毛乳頭細胞の働きを活性化させ、毛包を太く成長させると推測されています。マウスの背中に人の細胞で構成された毛包を有する皮膚組織を作り、そこに緑色蛍光タンパク質(EGFP)でラベルしたDSC細胞を注射したところ、ラベルされた細胞が毛球部へと移動し、毛乳頭へと分化・浸潤していく様子が確認されました。これにより、毛が太くなることが裏付けられています。

 

S-DSC治療は「女性」「それほど進行していない早期での介入」ほど効果を得る。が、ハードルも見えてきた

さて、肝心の「それ効くの?」のお話から。

 

36名を対象とした臨床研究の結果、明らかに男性よりも女性の方に高い効果が見られました。また、「硬毛率(60μm以上の太い毛の割合)」が中央値(32.8%)以上の、つまり脱毛がそれほど進行していない被験者の方が、より高い効果を得られることが分かりました。

 

とっても乱暴に言い換えると「女性のほうが効く。早く治療するほうが効く」です。

 

これらを踏まえ、東邦大学医療センター大橋病院は25年6月にプレスリリースを行い、7月よりS-DSCを自費診療として提供開始しました。12月までの受診者64名のうち、実際に治療を開始したのは14名。大きく3つのハードルが見えてきました。

 

①費用面でのハードル。「顕著な改善」が見込める確率が約3割という見解に対し、費用は100万円以上です。

②効果の持続期間。現状では約15ヶ月程度で効果の減衰が始まる可能性があると説明せざるを得ないため、再生医療であるという期待値からは少し外れます。

③性差。もともと毛髪の悩みは 男性のほうが強く、治療希望者も男性が多いのですが、S-DSCは女性の方が有効性が高い傾向にある点。

 

これら3つに加えて、被験者によって効果が出る時期にはばらつきがあることが確認されています。注入から1年以上経過してから効果を示す症例もあり、個体差が大きいのが現状です。一例を挙げると……

 

35歳女性・ 毛髪密度・総断面積の推移を見ると、投与前から1年後にかけて数値的に明らかな改善が見られました。

21歳女性・ 6ヶ月後をピークに改善が見られましたが、1年経過後には治療前のレベルに戻る傾向が示されました。

44歳男性・ 9ヶ月後までは改善しましたが、1年後に一度低下し、その後15ヶ月から18ヶ月にかけて再び上昇するなど、波のある経過を辿るケースもありました。

 

これらのことから、現段階では「経済的に余裕のある人」「科学的知見から判断していろいろ試すことが嫌いではない知的好奇心の高い人」が選ぶ傾向が高い治療と言えます。

 

つづき>>>仮に毛髪量が明確に増えていなくても「満足度がものすごく高い」薄毛治療から見える「髪のために本当に必要だったケア」

 

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