「スポーツのような爽快感」63歳男性の仕事探し。早朝4時、宅配便仕分けに挑戦。ギャルや主婦に混じって汗を流す

2026.03.06 WORK

最大の弱点は老眼か?

最初は問題なくやれる作業だと思った。しかし、始めると、想定外の自分の弱点に気づかされた。老眼だ。流れてくる荷に貼られている住所やナンバリングがよく読めない。ベルトコンベアの動きに動体視力が追い付かない。瞬時に判断できないため、仕分けに手間取ってしまう。まいった。

住所が読めませんとは言えない。しかたがなく、流れてくる荷に顔を近づけたり遠ざけたりしてラベルの文字を読んだ。小さい文字は、目を見開いて〝ガン見〟した。ものすごく疲れる。それでも、人間の能力はすごい。徐々に目が慣れてきた。荷の住所を難なくとは言わないけれど、読めるようになっていく。目が慣れてしまえば、63歳でもてきぱきと作業できた。うれしくなって、ガンガン働いた。シャツの背中や胸が汗で濡れてきたけれど、そんなことは気にならない。

作業がスタートして2時間半ほど経ったころだろうか、ベルトコンベアで流れてくる荷は明らかに少なくなった。やがてベルが鳴り、作業終了。その時点で倉庫にあるすべての荷が仕分けされたらしい。そして荷を各配送トラックに積み込んでいく。

作業時間は4時間。15分だけ残業もした。追加されたのはクール便をトラックに積む仕事だった。倉庫から出ると、朝の光がまぶしい。単調な作業ではあったけれど、スポーツの後に近い爽快感を思い出した。スポーツのトレーニングも単調なものが多い。基礎練習が大切だ。

トラックへの荷積みでペアを組んだ30代の男性はWワークだった。これから会社へ行くそうだ。週に3回宅配会社で働いて、独立するための資金を貯めているそうだ。どんなビジネスを始めるのかは教えてもらえなかった。

スタート時に見かけた高校生のギャルグループは更衣室で制服に着替えて走っていった。学校へ行くらしい。朝授業の前に働くのだから、夜のバイトよりも健全だ。「行っていらっしゃい! 気を付けるんだよ! また手伝ってね!」宅配便会社の人が鼻の下をのばしてギャルグループを見送る。彼女たちは常連なのだろう。

まじめに働き、残業の依頼にも応じたからだろうか、それからは毎日仕事の依頼が来る。宅配便の仕事は昼夜問わずあるので、早朝、午前、午後、夜……すべての時間帯の仕事依頼が届く。同じ会社の別の営業所からも求人が届く。トータルすると、1日に100通を超えるのではないだろうか。その状況は倉庫で働いて半年近く経ってもまだ続いている。宅配物は今後も増えるはず。営業所も増えているようなので、まだしばらくは求人が減らない業種だろう。

 

著者略歴:神舘和典(こうだて・かずのり)
1962(昭和37)年、東京都生まれ。ライター。音楽、スポーツ、文化、政治・経済まで幅広い分野で取材・執筆。ミュージシャンのインタビューは国内外400人を超える。『不道徳ロック講座』『墓と葬式の見積りをとってみた』『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』、西川清史氏との共著『うんちの行方』(以上新潮新書)、『上原ひろみサマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

 

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